ハイバイ・岩井秀人はこれまで、ハイバイで公演した上演台本を外部に貸し出すということは例外を除きやってこなかった。それは、ご自身の家族に起こった出来事を扱った作品ゆえ、ご自身が演出しないと作品の質を保てないと判断されていたからである。
しかしながら、昨年maars inc.が旗揚げ公演として上演した『こどものじかん the Children’sHour』をご覧いただき、この演出ならば託していい!と、初めて外部での上演を許可。演劇界をリードする岩井氏の戯曲を元に、若手演出家が羽ばたくこの企画となる。公演は12月5日、王子小劇場にて。
廣川真菜美より
初めて『夫婦』を読んだとき、私は嗚咽を止めることができませんでした。ちょうど、母に乳がんが見つかったタイミングだったこともあり、また、父を病で亡くしたときの病院への不信感が拭えていない状態だったので、この作品への共感が高かったから、というのも一因だと思います。
でも読み進めていくうちに、これは病で家族を亡くした、という出来事の奥に【夫婦とは一体なんぞや?】という大きなテーマが根を張るように横たわっていることに気づきました。
その頃は丁度緊急事態宣言で家から一歩も出ていない時期でありました。
アフターコロナの今、私達は人との付き合い方に変化が出ているのでしょうか。
【夫婦】という形を借りていますが、人として生きていくとはどういうことか、という答えのない問いを、
創作しながら、上演しながら考えていきたいと思っています。
あらすじ
父が死んだ。
「死んでしまえ!」と何度も思ったあの父が医療ミスで死んだ。医者として最先端技術に邁進していた父。その死に対して、意外にも浮かぶ無念の思い。
父と母の出会いから別れまで、一つの夫婦の物語を岩井は見つめ直す。
父は何を信じ、母は何を信じていたのか。
生きる意味とは何か。なぜ、一緒に生き続けたのか。
人と人が共に生きるとはどういうことなのか。たくさんの記憶と出来事を辿るそのさきに、答えは見つかるのだろうか。
maars inc. とは
2022年9月立ち上げ。廣川真菜美の創作の際に公演制作、制作進行を行う団 体。演劇の他映像作品も制作する。 2023年に旗揚げ公演としてvol.0『こどものじかん the Childrenʼs Hour』 (作:リリアン・ヘルマン)を創作した。 「演劇がもっと身近にある。きっと人生が豊かになる」をミッションに掲げ、 通常の創作に縛られない創作手法を取り入れながらより多くの人に演劇に触れ てもらえる世の中になることを目指している。
概要
日程・会場:2024年12月5日〜8日 王子小劇場
作:岩井秀人(ハイバイ)
演出:廣川真菜美
出演:板橋廉平、菊池美里、山森信太郎、大河日氣、小林春世(演劇集団キャラメルボ ックス)、安楽信顕、片桐美穂、大竹周作(演劇集団 円)、南川泰規
制作:三國谷花
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京[スタートアッ プ助成]
主催/製作:maars inc.