10月27日、1日限りの一人芝居、場所は赤坂サカス広場に設営された紫のテント。開演前30分、テントに行列。席は決められていない。ただ、椅子かもしくはそうでない席(座布団・最も舞台に近い)をチョイスする。テントなのでもちろん狭い。10月、といってもテントなので窓はない。入り口で団扇を配る(蒸し暑いため)。開演前にも関わらず、末原拓馬本人が舞台上にすでにいる。時折、席を案内したり、観客の求めに応じて写真を撮ったり。原点が路上での芝居、パフォーマンスだったというわけで、そこはごく自然に。順番に席が埋まっていく。そして時間になる。「さあ、始めましょう!!」大きな拍手。この紫のテントは新宿梁山泊のものだそう。朝、9時にきて準備したという末原拓馬。「想像力を活用して物語を」と呼びかける。そして「目を閉じて想像してみてください。あなたは森の中にいます」、森、木の葉、土の匂いなどを連想する。「客席を歩き回りながら語りかけます」という。観客がいてそこで初めて成立する、観客は見たいものを見て、感じたいことを感じる。舞台、パフォーマンスの原点。
物語の主人公は悪党・ドブロク。末原拓馬が、様々な役割を一人で担う。演じる役は1つではない。貧しい生まれのドブロク、誰でも生まれる時は”悪党”ではなかった。彼の口から語られる彼自身のこと、その半生は壮絶、盗人になってしまう、言葉の端々に感じられる彼の絶望感、世界に復讐したいと思う。
そして捕まる、数々の悪行、死罪。だが、彼の”野望”はまだ、彼の心の中で燃えたぎっている。花瓶に”悪い言葉”を吹き込んでそれを兵器にすることを提案、それを遂行すべく行っていたが、そんな折にカスタネットという名の孤児の少女に出会う。ドブロクは孤独から悪の道に。彼の心にほのかな変化が。
様々な登場人物を一人で演じ分けるだけでなく、舞台セットも手がける。セットとは言っても、テーブル、天井に花をイメージしたモチーフ、床にも花の絵。末原自身が身に纏って衣装も自作デザイン、つまり空間全体をデザインし、物語世界を作り上げる。
ストーリー自体はシンプルだが、テーマは深い。言葉を瓶に吹き込んで武器にする、吹き込む言葉はもちろんネガティブな言葉、人の心に突き刺さる、持続性があり、人々の心を蝕んでいく。
その瓶を敵の陣地に投げ込み、瓶が割れると…味方同士で諍いが起きる。寓話だが、観る人の心に深く刻まれる、言葉の力。末原拓馬が描く世界、彼自身が主宰する劇団おぼんろの作品もそうだが、最後には愛がある。戦いの中でも愛が生まれる、その奇跡を信じる心が尊いと観客は思う。テントなので上演時間は短めだが、その分、濃密に。
あらすじ
世界に復讐を誓う盗人ドブロクは、花瓶に言葉を吹き込み兵器とする作戦を王に持ちかけ死罪を免れようとする。国中に66の花瓶を配り歩く中で最後に出会ったのは、孤児の少女カスタネットだった… ーー憎しみから生まれた兵器、愛から生まれた奇跡。戦火の中で生まれた愛と祈りの物語。
<末原拓馬インタビュー>
概要 ※公演終了。
末原拓馬ひとり芝居 『カスタネット』
10月27日(日)13:00 赤坂サカス広場 特設紫テント
WEB:https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/025rqjxksi041.html#detail