矢島舞美主演 映像宇宙アクション「LADY OUT LAW!」愛はエネルギー、真のユートピアは?自由とは?さすらいの果てにあるものは?

数少ない円形劇場である品川プリンスホテル クラブeXにて、最新映像技術を駆使し、ステージを宇宙船に見立て、ハードなアクションを繰り広げる「LADY OUT LAW!」、ヒロインは、アイドルグループ『℃-ute』(キュート)の元メンバーで、現在女優として活躍する矢島舞美。

開演5分前にいわゆる“前説”、これを味方良介と久保田創が担当するのだが、この2人の掛け合いがなかなか楽しい。いわゆる観劇の諸注意の他に、拍手の練習なども行う。実はところどころが“観客参加型”になっており、ここで合図出しもやるので、しっかりと。それから始まる。

出だしはいわゆる設定の説明になる。未来、戦争により地球は住めなくなり、宇宙ステーションを築き、そこに人類は住むことになった。しかし、地球がこんなことになっても人類は争いを止めなかった。独立国家であるステーション・ユートピアだけは別だった。ここの総裁である大司教(神尾佑)は高らかに叫ぶ「自由に生きる!」「求めよ、さらば与えられん!」と。彼に忠実な修道長(小野健斗)は「全ては大司教様のおかげ」と・・・・・職務に忠実だが、顔色一つ変えない、かなり冷徹な雰囲気。シスター・ルナ(日比美思)、頼もしい側近。大司教の権力は絶大だ。そこへ「当たり前の幸せ?」鋭い目つきの少女(矢島舞美)がやってくる、ステーションからステーションへ・・・・・・生き別れた兄を探してさすらう。客席も含めて会場は“宇宙船”となる。時には観客は大司教を崇拝する民衆にもなる(合図がある)。キャラクターの関係性やバックボーンがその中で明かされる。

いつも3人でつるんでいるボロ(鈴木勝吾)、クズ(松井勇歩)、チリ(増子敦貴)、明るいトリオだが、彼らの生い立ちはかなり不幸。保安官(味方良介)は大司教に感謝の言葉を述べる。シスター・ルナは彼の可愛い妹であった。2人の両親はこの世にいない、2人ぼっちだ。アクション、殺陣、芝居、怒涛のごとくなストーリー展開に意外な人間関係、どんでん返し、めっぽう強い少女の正体は?兄は見つかるのか?大司教は言う「真のユートピア」、それは一体何なのか、本当の幸せとは?大司教の真実は?

負のエネルギーと愛のエネルギー、負からは負の感情しか出てこない。「全ての怒りは憎しみから生まれる」というセリフもある。幼い頃、少女の兄は妹に誓った「幸せなユートピアを!」動機は愛、彼のエネルギー、そして信念、正義、各々が考えるそれはちょっとずつ違っていたり、いや、大きく違っていることもある。それが時には辛い何かを孕んでいることもある。宇宙を舞台に人間の生き方や愛を問いかける。そして未来は、自由とは?「自由は選択できること、自分の未来を選べること」という言葉も出てくる。ところどころで笑いを挟みながら、極めてシリアスなテーマを観客に突きつける。そして「OUT LAW」、何かそうなのか、解釈は様々であるが、一つだけ言えるのは、自分の心と良心に耳を傾けること。どんな状況になっても耳を澄ませば、何かが見える。ラスト・・・・・・戦いの果てにあるものは・・・・・かすかな光と希望。壮大な宇宙を舞台にした普遍性のあるテーマ、観終わった後は、心に何かが刻まれる。それは多分、きっとみんな違っていいはずだ。

矢島舞美は難しい役柄だが情熱を持って熱演、皆、大汗かいての大立ち回り、そして発せられる熱いセリフ、映像効果、細長いスクリーンが3方向にあり、時には宇宙だったり、状況だったり。凝った照明、どこからも見られる円形の舞台、それが渾然一体となって迫力のある空間を創る。最近、めっきり涼しくなったが、ここは熱い、熱い舞台が繰り広げられている。

なお、公開ゲネプロに先駆けて囲み会見があった。登壇したのは、矢島舞美、味方良介、鈴木勝吾、小野健斗、松井勇歩、増子敦貴、日比美思、神尾 佑、そして池田純矢、演出の岡村俊一。

まずは「稽古でやってきたことを自信を持って!」(矢島舞美)「みっちり稽古して僕らだけの新しい演劇ができた気がします。明日が楽しみ!」(味方良介)「新しい現場で、しかも円形劇場で、皆様が楽しんでいただけるように、メッセージはたくさんありますけれど、本当に僕らと一緒に楽しんで!」(鈴木勝吾)「全力で!楽しんでください!」(松井勇歩)「円形で映像を使った最新技術を使ったすごい舞台です。楽しみです、頑張ります!」(増子敦貴)「熱い物語になっています!」(小野健斗)「本番が楽しみです!頑張ります!」(日比美思)「暑い中、みんなで稽古してきました。矢島舞美は汗だくで頑張っております。怪我のないようにカンパニー一同、頑張ります」(神尾 佑)「最近、アイドルの方を女優に、とかの仕事をよくやっております(笑)。まあ、アイドルっていうのは、見られる人種で、恥っていうのは見られたくないのに見せつけちゃうようなものでして、ちょっとどこが違うか難しいんですが、いろんな自分の壁みたいなのをとっぱらって、ぶち壊さなきゃいけない。一ヶ月、矢島舞美をぶっ壊してきました!」(岡村俊一)「僕は単純に今日は半分、お客さんのつもりで楽しみたいなと」(池田純矢)と一通りの挨拶が終わった。
脚本の魅力について岡村俊一は「池田君はぶっ飛んでいます!」と言い「作家っていうのは基本的なエネルギーがないとできない。作家って長生きできないんですよ・・・・・・僕は60近いんで僕が死んだ後は池田純矢が席巻すると思うんですよ。パワーがある作家だと思っています」と語る。そしてキャストについては「稽古当初より矢島もちゃんと壊れてくれて(笑)、アナーキーな世界を・・・・・」とコメント。また矢島舞美に質問、SFの世界について聞かれ「想像できない世界っていうか宇宙空間って行ったことがないので、もうSFは未知の世界、今回も映像を使って、本当にここが宇宙空間になるので、観に来てくださる皆さんも宇宙空間にいるような感じで楽しんでもらえたら」と語る。また池田純矢は設定については「SFが好きなんですけど、小学校の頃にずっと宇宙モノの本を読み漁っておりました」と語る。ベースがあったからこそ、である。また矢島舞美に役についてなどの質問が出た。「目的を果たすために宇宙をさすらっているんですが、すごく精神的にも肉体的にも強くなっていく女なので、弱いところを見せない、私の中では課題でもあった。発している言葉の裏側、ちゃんと見てくださっている方に届くように今回は葛藤しながら日々、稽古してきました。後はお芝居を見ている方が心地よく、変な間を与えないように(笑)、注意して・・・・・」とコメント。しかし、その甲斐あって戦いながらも悩み、まっすぐに向かっていくヒロイン像は共感できる。また矢島舞美の“汗”に関する質問が出た。キャストから笑いが起こり、味方良介が「汗で衣装がびちょびちょになってる(笑)」と・・・・さらに「スケスケで(笑)」と・・・・・・当の本人は「もともとが汗かきなので〜最初、ノースリーブだったんです。そしたら・・・・・見栄え良くないねって言って〜長袖になって・・・・・」とコメント。

笑いのコメントで会見は終わり、それからフォトセッション、ちょっとリラックスした雰囲気になり、会見&撮影は無事に終了した。

<ストーリー>
第三次世界大戦により荒地と化した地球を捨てた人類は、
皮肉にもその危機から脱する為に
条約のもと共同で宇宙開発を行う国連を立ち上げ、
広大な宇宙ステーションを築き上げた。
しかし、時は流れ時代は繰り返す…
束の間の平和は終わりを告げ、
国境という名のステーションをいくつも乱立させた各国は、
また争う様に宇宙事業を拡大していく。
しかし、ここ【ステーション・ユートピア】は
戦争、紛争、飢餓、差別とは無縁の近隣諸国からは隔絶された独立国家。
誰もが幸せに笑い合い、慎ましく淑やかな生活を営んでいる。
そこへ突如現れたのはステーションからステーションへ、
とある人物を探しさすらう半身が機械仕掛けの少女。
彼女の目的はこの世界を破滅へと導くこと。
正義か?悪か?本当のOUTLAWは誰だー。

【映像宇宙アクション「LADY OUT LAW!」 概要】
タイトル:「LADY OUT LAW!」
出演:矢島舞美 / 味方良介 鈴木勝吾 小野健斗 松井勇歩 増子敦貴 日比美思 / 神尾 佑  他
作:池田純矢
演出:岡村俊一
日時・会場: 2018年9月14日(金)~9月24日(月・祝) ・全14ステージ / 品川プリンスホテル クラブeX
公式HP: http://lady-out-law.com/
問い合わせ:イベントインフォメーション:0570-550-890 (平日13:00~17:00)

文:Hiromi Koh