大鶴佐助が座長を務め、鄭義信が座付き作家・演出家を務める劇団・ヒトハダの番外公演「杏仁豆腐のココロ」が浅草九劇にて開幕。
クリスマスにとある夫婦が別れを前に想いを巡らせるという男女の2人芝居。
2000年の上演以来、韓国・中国・台湾・インドネシア他アジア各国でも上演され、数々の演出家や劇団が上演してきた名作で、鄭義信自身が演出を手掛けるのは約9年ぶり。ヒトハダとして初の番外公演、初の客演としてナイロン100℃・阿佐ヶ谷スパイダースの劇団員でもあり、様々な演劇・映像作品で活躍する村岡希美、鄭義信作・演出の舞台「鴨川ホルモー」で女優デビューをし、以降様々な舞台・映像作品に出演する高畑こと美を迎え、ヒトハダからは浅野雅博と尾上寛之が出演。
本作は2チーム制となっており、こたつを囲みながら繰り広げられる夫婦の会話劇で、村岡・浅野の「杏チーム」は落ち着いた大人の夫婦、高畑・尾上の「仁チーム」は一回り若くパワフルな夫婦、それぞれ違う夫婦の形を観ることができる。
演出もチームごとに異なっており、同じストーリでも二度楽しむことが出来る作品に。
また夫婦やパートナーの間で起こり得るデリケートな問題を取り扱い、悲しいストーリーでありながらも、髄所に笑いが散りばめており、最後には心温まる、笑って泣ける作品。
脚本・演出 鄭義信より
「杏仁豆腐のココロ」は佳梯かこのために書き下した作品でありました。
今を遡ることこと二十四年前、かこちゃんから、ある日突然、電話がありました。
「あのね、ウィシン、名古屋の劇場で、たった一日だけど、公演することになったの。その台本、書いてほしいの」
「え、なになに、どういうこと?」
「男と女の二人芝居でお願い。男優はもう見つけてあるの。あのね、お金ないから、セットとか立てられないわよ。あたりまえよね、一日だけだから、儲かるはずないもの。衣装も自前、小道具とかも買ったり、つくったりできない。お金かけられないの」
「ちょっと、ちょっと待って、かこちゃん」
「とにかく、条件は以上。よろしくね」
僕は、かこちゃんの勢いに負けて、思わず承諾してしまいました。
そして、たった一日の公演のために、クリスマスの日に別れを告げる男と女の話を書き下したのでした。
たった一日だけの公演で終わるはずの芝居が、何十ぺん、何百ぺんも再演され、あちこち地方公演を重ね、韓国にまで足を伸ばすとは、その時、思いもよりませんでした。ましてや、台湾では演劇大学の教科書になり、中国をはじめとするアジア各国で上演されるとは、夢にも思いませんでした。
今回、ヒトハダ番外公演として「杏仁豆腐のココロ」を九年ぶりに再演する運びとなりました。
僕がこの「杏仁豆腐のココロ」を演出するのは、これが最後になるかもしれません。
でも、「杏仁豆腐のココロ」は、これからも若い人たちが引き継いでくれるものと信じています。
小夜子と達郎という登場人物がいつまでも皆さまの心の中に生きつづけることを願っています。
そして、僕も、今は亡き佳梯かこと、この舞台を見守っていきたいと思います。
あらすじ
クリスマス・イブ。長年一緒に暮らした男と女が別れようとしている。女は父親から継いだちんどん屋を廃業しようとしていた。男は仕事につかず主夫をしていた。おどけたり、ふざけあったり、笑いあったりするうち、次第に悲しい過去の秘密が明らかになるとともに、伝えられなかった想いが溢れだしてくる……。
概要
ヒトハダ番外公演「杏仁豆腐のココロ」
日程・会場:2024年12月12日(木)~12月22日(日) 浅草九劇
脚本・演出:鄭義信
出演:杏チーム 村岡希美・浅野雅博/仁チーム 高畑こと美・尾上寛之
スタッフ
音楽:久米大作 舞台装置:池田ともゆき 照明:増田隆芳 音響:藤田赤目
演出部:山村涼子 舞台監督:丸山英彦
イラスト 高畑裕太 デザイン 土屋咲登子
制作:佐々木弘毅、藤本綾菜 企画・制作:ヒトハダ
公式サイト:https://asakusa-kokono.com/
公式X:@hitohada_jp