ゴツプロ!『たかが十年の祭り』開幕 十年の祭りは永遠の祭り、神輿を担ぎ続ける男たち

ゴツプロ!の記念すべき第十回公演が12月に下北沢のザ・スズナリで開幕。六年ぶりのメンバーだけでの公演。四年ぶりの台湾公演も行う。本公演は東京公演のほか、 【台湾・台北】北投アートフェスティバル (2024年12月27日~29日/ 2025年1月3日~5日台湾戯曲センター)への参加も決まっている。本作は、十回公演を迎えるゴツプロ!の軌跡や、北投アートフェスティバルの地である温泉街のことなど、等身大の思いを戦中の温泉街に織り交ぜながら、荒波に立ち向かい、海を渡ろうとガムシャラに生きる男6人の物語を描く。
東京夜光主宰の川名幸宏が脚本・演出を務め、ゴツプロ!メンバーの塚原大助、浜谷康幸、佐藤正和、泉知束、渡邊聡、そして44北川が出演。
開演前から祭りを彷彿とさせる音楽が流れる。それから諸注意があり、始まる。
法被を着た男が登場、彼の名は佐竹星之介(塚原大助)、龍月湯旅館の支配人。字幕が出る「1934」、昭和9年、この時代の主な出来事、満州国が帝国になり、溥儀が皇帝に即位、傀儡政権。ナチスの血の粛清事件、中国では東北人民革命軍が成立、日本がワシントン条約、ロンドン条約の軍縮協定を一方的に破棄、きな臭くなっていく時代だが、ここは昭和初期の旅行ブームに乗って開発された温泉街。星之介が語る、「御伽話じゃないんだ…獣の鳴き声が…巨大な龍が空に向かって…この街は龍に守られている」そこから、この物語の登場人物たちが舞台上に。この物語を担うのは6人、しかも結構いい歳の男たち、子供からは絶対に「おじさん」と言われる年齢。「この街に神社を建てる」「来年は龍神祭りをやる」「街の歴史を作る」それからタイトルロール。

酒が好きなおじさんたち。

そこから時は過ぎ、1945の文字。戦時下、敗戦の色濃くなった日本、若者は兵隊に取られていき、初老の男たちは兵役を免れており、疎開児童を受け入れた温泉旅館で目まぐるしく働いている。新聞は戦況を伝えるも、そこに書かれていることは真実ではない。だが、ここは温泉街、そんなことに気がつくはずもない。前年はようやく開催、今年も祭りを開催したいと思う彼らの想いと奮闘、これを細かい笑いを交えながら綴っていく。

まっすぐでとにかく熱い男・星之介、執筆のためにやってきた小説家・河崎十一郎(浜谷康幸)、自由に振る舞う神主・田村弥彦(佐藤正和)、息子が戦地に行ってる調理場担当の山本伊織(泉知束)、規律を重んじる番頭の二宮銀次(渡邊聡)、旅館の帳場を任されている森将吉(44北川)、祭りを開催するにはハードルが高い。とにかく神輿を担ぐ若い男性がいない、三社祭のような伝統もない、たったの十年だ。

だが、その十年は彼らにとっては貴重で重みのある十年。つなぎたい、未来のために、星之介は言う「たかが十年の祭り、されど永遠の祭り」と。彼らを取り巻く状況、戦時下、何があっても祭りを行いたい、という気持ちが大きなうねりとなって舞台上にエネルギーが満ちる。

おじさんたちの入浴シーン。ドッキリな場面も(笑)

しかし、ただただ熱いだけではなく、笑い、風呂のシーンはほのぼのするし、弥彦の祝詞がでたらめだった(弥彦は字が読めない、という設定)など、そういったシーンは客席から笑いが起こる。そして、今回の舞台、英語と中国語の字幕が出る。戦争に抗う姿は日本人だけでなく、海外のゲストも共感できるところ、田舎の温泉街の話だが、描かれていることはグローバル、反戦的な要素も含む。ラストシーンは6人のシーン、胸熱。

下北沢のスズナリで22日まで公演のあと、台湾で27日から29日まで上演する。下北沢から海外へ発信、十年から次の十年へ、さらにその先を見据えるゴツプロ!の姿勢と祭りをなんとしてもやりたい男たちと重なる。アイドルもイケメンもいない舞台だが、それを超越した志と想いがここにある。

コメント
ゴツプロ!主宰 塚原大助より
ゴツプロ!第十回目の公演がいよいよ始まります。
今作品『たかが十年の祭り』をこの年末に下北沢で、そして年始にかけて台北・北投にて開催できるとこを心より嬉しく思います。実に6年ぶりのメンバーだけの公演、オジサン達が大奮闘しております。ご来場心よりお待ちしております。

脚本・演出 川名幸宏より
「あんたたち、無謀だよ」
チラシのコメントを求められて、ゴツプロ!の皆さんへ殴り書いた言葉です。
演劇人として大先輩の、むさ苦しい50前後の男6人と、本当に苦しく、そして幸せな創作の日々を過ごさせていただきました。
2024年の最後に、無謀な祭りに突き進む男たちを、目撃して欲しいです。

配役
佐竹星乃介(塚原大助) 龍月湯旅館の支配人
田村弥彦(佐藤正和) 神主
二宮銀次(渡邊聡) 番頭
山本伊織(泉知束) 調理場
森将吉(44北川) 帳場
河崎十一郎(浜谷康幸) 小説家

イントロダクション
1945年春、戦中の温泉街 ”北丿沢温泉”。
出兵を免れた初老の男たちは、疎開児童を受け入れた温泉旅館で目まぐるしく働いている。
昭和初期の旅行ブームに乗って開発された温泉街。街を盛り上げようとつくられた祭りは今年で十回目を迎えるはずだった。しかし、戦局はあまりにも悪化の一途を辿っており、この街の誰もが今年はやらないと思っている。
そんな中、旅館の支配人、佐竹星乃介は頑なに叫ぶ。
“今だからこそ、祭りを、やるべきなんです。”
歴史も伝統もない、担い手も賛同者もいない、なにより、理由も理屈も見当たらない、
たかが、十年の祭り。その祭り、無謀。

ゴツプロ!記念すべき第十回公演は、劇団員6名のみでお送りする、見えもしない光に向かって濁流を突き進む男たちの物語。

塚原大助インタビュー記事

ゴツプロ!主宰 塚原大助インタビュー

概要
東京
日程・会場:2024年12月18日〜12月22日 ザ・スズナリ
作・演出:川名幸宏
出演:塚原大助 浜谷康幸 佐藤正和 泉知束 渡邊聡 44北川
台湾・台北公演
北投アートフェスティバル参加作品
日程・会場:2024年12月27日(金)~29日(日) / 2025年1月3日(金)~5日(日) 台湾戯曲センター(台北市士林区文林路751号)
台湾公演主催:北投小戲節(北投アートフェスティバル)
脚本開発スポンサー|山峸製作設計
翻訳:張克柔 / 国際コーディネーター: 呂孟恂 / プロデューサー: 王政中 沈琬婷 / プロジェクトマネージャー : 袁浩程
お問い合わせ:staff@52pro.info


公式サイト: https://52pro.info/


協賛:株式会社ニューロードグループ ヘアークリアー / 株式会社イベント・レンジャーズ / make me me / BARBER-BAR
後援:SPC GLOBAL
企画・製作:ゴツプロ合同会社
主催:主催:ゴツプロ合同会社 / ⼭峸製作設計

舞台撮影:渡邉和弘