
わらび座とヘラルボニーによる、境界を越えた”劇場体験”の創造を目指す新企画『イーハトーブシアター』、イーハトーブとは、すべての命が平等につながっている宮沢賢治の童話世界。宮沢賢治が現実の岩手の風土に根差しながら、心のなかにまざまざと思いえがいていた、無限に広がる夢の世界(ドリームランド)を表す宮沢賢治の造語。
イ-ハト-ブシアタ-の第1作となる「真昼の星めぐり」the Musical、都内にて製作発表会が行われた。
まず、わらび座代表理事の今村晋介より挨拶および企画概要の説明があった。
「民事再生後の全国公演作品においての新作となります。わらび座の名前の由来は山菜のわらびから来ております…東北の危機のときに、わらびの根っこを食べて生きながらえたこと、また山が焼けた後、一番先に向くのがわらびといういうことから黄色い花や赤い花は咲かないけれど、私達は本当に人の命の役に立つ存在でありたいと。芸術や文化はもっと人々の生活や、人生に寄り添って生きる命の助けとなるようなそういう仕事をしたいという願いと思いを込めた言葉でございます。今、私達は地球規模的な自然災害や世界的な感染症戦争等のリスクにひんしております。
日本においては物価の高騰による生活面の問題、昨年は児童生徒、子供の自殺者数が過去最多となりました。 それぞれの不安を抱えながら生きております。このような時代に、私達は本当に人の命の助けとなる仕事をするためにどのようなことができるのか考えました。 残念ながら日本では文化芸術は時代とともに、かなり特別な存在になってきてしまっていると感じています。 一部のお好きな人たちだけの世界になってしまっているのではないかと感じています。 今この瞬間で劇場やミュージカルに行ったことがない人は、よほどのきっかけがないと劇場へ足を運ぶことはないというのが現状であります。この特別な感覚を変えていきたいと思います。その先には芸術や文化が人々の生活や人生をより豊かに、より楽しく、生きるための助けとなる存在となることがあります。 そこには文化的物理的経済的な問題、協会があり、それを超えていかなくてはいけません。 私達だけではできないと思い今回は、ヘラルボニーさんと一緒に取り組んでまいりたいと企画いたしました。
今回の作品の特長ですが、まず、ヘラルボニーさんの異彩を放つ作家さんのアートを舞台美術や衣装に取り入れることでファンタジックな世界を表現いたします。二つ目はテクノロジーとアートによる体験型であること、光るボールを一つ一つの座席に置いて舞台の感情に合わせて色が変わる工夫をします例えば川の底の場合、舞台上だけが水色になるのではなく、観客席全体が一杯の水色に変化し、会場全体がデジタルアートになります1人1人の存在が舞台の大切な人になります。 これまで舞台に興味のない人でも見てみたいと思う世界を作りたいと思います。三つ目、ミュージカルの中で、わらび座にしかできない民俗芸能で表現をいたします祭りや民俗芸能を舞台上で初めて表現をした団体がわらび座と言われております。四つ目、アクセシビリティの充実です。株式会社precog様に協力していただき、劇場周辺のバリアフリーマップ、字幕タブレットの貸し出し、舞台の事前解説、鑑賞マナー夢の仮などの設定によって誰もが安心して楽しめる場を提供します。五つ目は本事業趣旨にご賛同いただきますパートナーを募集いたします。 各地域での子供の招待鑑賞サポートの経費として活用させていただきます。 経済的境界に挑戦をいたします」と説明。
光るボール、会見場でもデモンストレーション。

「年間90回、6万5000人の鑑賞を予定しております。札幌、主に盛岡秋田、仙台郡山東京大阪を拠点校として学校の芸術鑑賞会北海道から九州まで全国ツアー巡回公演を行います。 最後に感動することは人生を変えてしまうほどのエネルギーを持っております嬉しいときに歌ったり踊ったり、悲しいときに泣いたり、これは人間本来の姿であります。今の社会では、これをやると変な目で見られてしまうのが現実であります。 人間本来の姿が少しでも許容できる社会を目指します。 そして魂が震えるほどの感動体験は人の命を救えると思っております。全ての人に劇場体験を全ての人に感動体験をお届けしたいと思います」と熱く語った。
それからヘラルボニ-のCEOの松田崇弥の挨拶。
「わらび座さんとご一緒できること、心から嬉しいことだなと思ってます。ヘラルボニーは本当に全国各地の作家さんとともに、新たに価値観を変えるものを作っておりまして、本人がこう生きてていいんだとか、その本人がありのままが本当に肯定されていくんだとか、このアートというフィルターを通じて多様な人たちの作品…より多くの形で生まれていくことによって、今まで劇場になかなか来れなかった人たちも、ここにいていいんだっていう安心感が生まれていったりだとか、多分ハードは変えることは何とでもなると思うんですけれども、私達は本当にソフトが変わっていける、そういう会社だと思っています」とコメント。そして「今のこの時代だからこそ、本当に宮沢賢治さんの思想は残り続けていくもの、より伝え続けていくべき物語だなと思ってます。 だからこそ、本当に芸術っていうそのものは人を豊かにする、社会を便利にすることではないかもしれないですけれども、間違いなく社会をより豊かにする行為だと思っています。何かを便利にする以上に、本人たちの幸せとかいろんなものを肯定していけることがより大切になってくるんだろうと思っています。全国いろんな方々に見ていただく、今まで芸術鑑賞やってこなかった人たちも含めて、いろんな人たちの幸せを作っていけたら嬉しいなっていうことを思ってます」と語った。それから、この公演に携わる作家についての紹介があった。
「工藤みどりさんと佐々木早苗さん、どちらも岩手の作家さんです。工藤みどりさんは個展が非常に大好きで、おちゃめな愛のある方、明るい作家さんです。佐々木早苗さんは彼女の中の宇宙がここに存在しています。私達の作家さんの特徴って、どういう評価を受けたいとか、どういう社会と繋がりを持ったいうよりも、本当にこれをやり続けたいという欲求そのものが存在していて、私欲を超えているからこその豊かさの定義みたいなものがあるんじゃないかと思っています。 今回この作品を通じていろんな人たちの多様な価値観や、そこが肯定されていくそんな未来を作れたら嬉しいなと思ってます」と語った。
脚本の徳野優美から挨拶
「このお話をいただいたときに学校公演もあるということで、多くの10代の学生さんたちがこの舞台を鑑賞されると伺いました。今を生きる10代の子たちにどんなメッセージを伝えることがいいのかをわらび座の皆さんと話し合っていくところから物語作りをスタートしました。 今は何かわからないことはスマホで調べればすぐにわかることがほとんど。難しい世界情勢や、事件についてもYouTubeを見れば…パシッと一言でキャッチーな言葉で解説してくれるものがたくさん増えていると思います。10代の子たちはそういうものを見て育っているなと…。ばしっと決められたキャッチーな一言から漏れてたものの中の方に結構、本質的な大事なもの含まれているんじゃないかなと個人的には思います、宮沢賢治作品も決められた言葉から生まれたものや世間の価値観、良しとされている価値観とは別の価値観だったりとか、言葉では言い表せないものみたいなものがすごく多く含まれていてそこがとっても面白い作品だなと感じています。 今回この物語の主人公2人が巡る…16歳の女の子2人、彼女たちがわからないもので満ち溢れたイーハトーブという世界を旅することで、何かわからないものを簡単にジャッジするのではなく、わからないものを恐れたり面白かったり、真剣に向き合うことを描いていけたらいいなと思ってこの作品を書きました。そういうものが10代の子たちに伝えるとすごく嬉しいなと思っております」
脚本・演出の鈴木ひがしから挨拶
「主人公の高校生の女の子がイーハトーブという世界に行っての体験・体感する物語を描いてます。その中で彼女たちの普段の生活の中では、例えば私は学年で成績優秀トップになって、いい大学に行って、その先いい会社という規定路線の道の人生、あるいは友達同士でも自分の居場所を確保するために自分はあえていじられキャラというキャラクターを演じたりする。モヤモヤとしたものを抱えた2人がイーハトーブの世界に飛んだときに色々なものに遭遇し、この主人公たちは生き生きする。 モヤモヤしたこの現実、主人公たちが何が正しくて何がいけないのかといろいろ悩みます。徳野さんがおっしゃった、すぐ携帯を見て、そのスマホを見て調べて答えがわかる世界の中に生きている我々は、立ち止まって何かをゆっくり物事を考えられたとか、その謎の中に自分を映し込むだとかあるいはそこで答えが出なくても時間を置いて、ときが解決してくれることもあるかもしれないっていうこともある。
そういういろいろな尺度の中で、主人公たちは生きるってなんだということを学んでもらうのがこの作品です。処世術の話ではなく、生きるそのものそれがここに登場する宮沢賢治さんのキャラクターたちは生きることに対して真摯に貪欲に、その中で命を最後まで燃え尽きるまで生きている…それを2人がどう感じるのか、その中に一番大切なのはあなたと自分の仲、これはいいなと思う感覚、これが好きだなと思う感覚でも、それを大事にして表現したい…今立ち止まって何かをしっかり考えて見つめてみる時間がなければと…よろしくお願いします」
また岩手県知事の達増拓也よりメッセージも。

「イーハトーブシアター真昼の星巡りザミュージカルの制作発表にあたり、応援と期待の言葉を申し上げます。 今回、一般社団法人わらび座と株式会社ヘラルボニーが岩手を代表する作家である宮沢賢治の世界を表現する舞台作品を制作されることを心から歓迎するとともに、2025年7月から約2年間にわたる全国公演では、多くの方々に足を運んでいただけるものと期待しております。 来年は作家宮沢賢治生誕130周年の節目の年となります。 わらび座による民俗芸能など、地域の風土を生かした演出とヘラルボニーのアートを盛り込んだ舞台美術の融合により、宮沢賢治の世界観がこれまでにない形で創造され、公開されることを非常に楽しみにしております。 本県においても、花巻市、盛岡市、釜石市の3ヶ所で公演が予定されていると聞いておりますので、県民一同、公演を心待ちにしております。 また、県といたしましても、宮沢賢治の世界や民俗芸能など本県の幅広い魅力が県内外の方に伝わり本公演の周知に協力をさせていただきます。 結びに、本公演の開催に向けてご尽力いただく関係の皆様に感謝と敬意を表しますとともに、本公演の成功をお祈り申し上げ、挨拶といたします」
それからクラウドファウンディングについての説明。「全ての人に劇場体験を」という理念のもと、特別支援学校を含む地域の子供たち約6000名を無料で招待する予定があり、また、アクセシビリティ対応やアート作品を舞台美術や衣装に取り入れたり、光るボールによるデジタルアートによる演出にも経費がかかり、そのための費用が主たる目的。5月11日まで実施。
物語
優等生の冴島あおいと、派手なグループの中で本音を隠して生きる青木めぐるは、同じ高校に通う幼なじみ。
ある日、二人の前におしゃべりで大きなドラネコが現れた!
「イーハトーブへいらっしゃい!」と、ドラネコは不思議なワンダーランド「イーハトーブ」へいざないます。「失くしてしまった大切なもの」を探すべく、二人は旅をすることに。
川底に生きるカニの兄弟、黙々と杉の世話をする青年、裁判で争うどんぐり達、まるで山の神のような鹿達。
イーハトーブに住む動物や人々の生きざまに触れ、あおいとめぐるが見つけたものとは……?
概要
イーハトーブシアター「真昼の星めぐり」the Musical
脚本:徳野有美(ミュージカル『リトル・ゾンビガール』脚本)
脚本・演出:鈴木ひがし(東宝株式会社演劇部所属)
音楽:竹内聡(ミュージカル「ジョジョの奇妙な冒険」音楽監督)
振付:江上万絢(現代舞踊協会令和3年度新人賞)
民俗芸能構成:栗城宏(祭シアター「HANA」演出)
美術:平山正太郎(「伊藤熹朔記念賞」新人賞受賞)
公演アドバイザー:板垣崇志(るんびにい美術館アートディレクター)
アクセシビリティ監修:株式会社precog
後援:2025年国際協同組合年全国実行委員会
企画制作:一般社団法人わらび座、株式会社ヘラルボニー
開催概要
全国8地域で「拠点公演」を開催します。
同公演では、地域の子どもたち(特別支援学校を含む)の招待事業のほか、ヘラルボニ―との共創事業、precog監修による各種鑑賞サポートが行われます。そのほかは「巡回公演」として、2025年度で約60回の上演を見込んでいます。
2025年は国連の指定する「国際協同組合年」※1、2026年は「宮沢賢治生誕130年」の記念もあわせて全国ツアーを開催します。
※1 国連は「一年間を通じて、平和と安全、開発、人権/人道の問題など、ひとつの特定のテーマを設定し、国際社会の関心を喚起し、取り組みを促すため」に「国際年」を制定しています。国連はその一環として昨年12月の「社会開発における協同組合」と題する総会決議のなかで、来年2025年を2012年に続き2回目の国際協同組合年(International Year of Cooperatives=IYC)とすると定めました。イーハトーブシアターは「2025国際協同組合年事業」として認定を受けています。
日程・会場
東京
10月18日~26日 計13回|会場:スペース・ゼロ
※こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ提携公演
郡山
7月23日 計2回|会場:けんしん郡山文化センター中ホール
秋田
8月9日~10日 計4回|会場:あきた芸術劇場ミルハス中ホール
盛岡
8月30日~31日 計4回|会場:盛岡市民文化ホール
青森
9月3日 計2回|会場:リンクモア平安閣市民ホール
仙台
9月28日 計2回|会場:仙台電力ホール
札幌
10月4日 計1回|会場:札幌市教育文化会館
大阪
12月(予定)|会場:調整中
わらび座公式サイト:https://www.warabi.jp/
ヘラルボニー公式サイト:https://www.heralbony.jp