
ニワトリに狐、細菌兵器、ロボット、儀式人形、害虫、海洋生物……。
世界の片隅の存在に目を凝らし、心を描き続けてきたおぼんろの新作は、なんと生体実験用の鼠たち。
海外公演も果たしたおぼんろ、近年大規模な公演を行ってきたが、第25回は、24ケ月ぶりの劇団員だけの本公演が新宿のど真ん中、シアター・モリエールで開幕。
会場いっぱいに設えられたセット。そのセットの中に客席がある、という趣向、没入感たっぷり。始まる前から俳優陣が会場に、観客の誘導を行ったり、談笑したり、なんだか、もう始まってる?という雰囲気、和やかでふわっとした空気が流れる。開演時間が近くなり、場を温めるためにじゃんけんをしたり(勝者にはちょっとしたお菓子を)、観客の一人に小道具を渡したり。それから始まる。
とある研究所、生体実験といえば、ネズミやハムスターなどの小動物を使うが、ここではネズミ。生と死、それが日常のネズミたち、それでも懸命に生きる、なぜなら、世界のために役に立ってるという自負があるから。ところが、その研究所が突然閉鎖になる、ということは…「!!」、ネズミたちも処分の憂き目に遭うことはほぼ間違いなし。それは嫌だ!とばかりに建物から脱出するネズミたち、もちろんずっと研究所にいたので外の世界は未知。街は戦争で大混乱。とにかく研究所の職員を探し出さなくては、と思うネズミたち。ここから物語が転がりだす。
細かいストーリーはさておき、4匹の個性的なネズミたち、会場を縦横無尽に動く。普通は客席にいて前だけ向いていれば良いのだが、俳優陣があちこち動き回るので、それを目で追いかける。舞台上にいたかと思えば、天井近くにいたり。ネズミたちの置かれている環境は過酷、かなりのアドベンチャー、歌唱する場面もあり、単純な演劇というより、ライブと演劇がミックスされたかのようなステージング。4人の息のあった芝居は観ていて、かなり楽しく、歌に合わせて自然にクラップも起こったり。会えるかどうかわからない研究所の人を探すネズミたちの、その必死感、始まった瞬間から、なんとなくオチはわかるかもしれないが、それでもついつい没入していくのは、会場と客席がほぼフラットな”位置”だから。いわゆる”芝居小屋”、演出も超がつくほどのアナログ。昨今は、特に2.5次元舞台などは最新技術を駆使するが、これはもう手作り、そこが現代の基準で考えるとむしろ斬新かもしれない。
さりげなく、昨今の社会情勢も盛り込んだ”寓話”、コロナ禍は落ち着きもみせてはいるが、なくなったわけではなく、ウクライナの紛争もいつ終わるのか、見通しもない、日本は比較的穏やかかもしれないが、それでも地震や災害、今も岩手県大船渡市で延焼が続いており、予断を許さない状況だ。上演時間は休憩なしの2時間弱、公演は9日まで。
物語
昔々、とある都会の片隅にある研究所で、ネズミたちが生体実験を受けておりました。注射が体に合わない者は次々に命を落としていきましたが、仲間たちの死を背負いながら、ネズミたちは懸命に鼓動を刻み続けておりました。だって生き残った1匹の命は、なんと世界のために役に立つのですから。
ところがある日、研究所が突然閉鎖されることになりました。
処分される運命に抗い、彼らは戦争の混乱が広がる都会の街へと逃げ出します。
果たして生き残るのは誰だろう。
研究所の職員をどうにか探さなくっちゃ。
小さな足音が響く夜の街──その先に待つのは希望か、絶望か。
あなたにきっと届いて欲しい、切なくも美しい小さな鼓動。
物語は続く、鼓動が止むまで
概要
日程・会場:2025年3月4日(火)~9日(日) シアターモリエール
脚本・演出:末原拓馬
出演:
語り部:末原拓馬/さひがしジュンペイ/わかばやしめぐみ/高橋倫平
チケット情報
・お金持ち(将来お金持ちになるだろう人含む) 時価(0円〜100万円くらい)
・普通の人 6,000円 ・貧乏な人 3,000円
・イイネチケット(3月7日公演のみ) 言い値
※全席自由席。開場時はチケットに記載の整理番号順にご入場いただきます。
※お金持ちチケット、イイネチケットをご購入のお客様は終演後に語り部に直接料金をお渡しください。
公演問合: おぼんろ制作部 obonro.info@gmail.com
主催:劇団おぼんろ
おぼんろ公式サイト: https://www.obonro-web.com