「DIVE!!」The STAGE!! 夢に向かって、明日に向かって DIVE!「あなたにしか見えない景色がある!」

飛び込み競技を題材にした小説『DIVE!!』(原作:森絵都)、2000年から2002年にかけて、講談社より全4巻が刊行され、第52回小学館児童出版文化賞受賞。2006年に角川文庫より文庫版(上・下)が発売され、2003年にNHK-FMの「青春アドベンチャー」でラジオドラマ化、熊澤尚人監督で映画化、2008年6月公開。また、池野雅博作画で漫画化されたものが『週刊少年サンデー』2007年28号より2008年27号まで連載されていた。2017年より、紅柴るづる作画による新たな漫画版が『ヤングエース』2017年7月号から連載中。飛び込み競技を演劇にする、という無謀とも思える挑戦、しかし、稽古場では、ダイブする瞬間をリアル化するためにキャスト、スタッフ一丸となって懸命に取り組んでいた。垂直に飛び、“プール”にダイブ、コアと背筋を鍛えないとまっすぐには飛べない。何度も何度も繰り返し、マットに向かってダイブ、ひねりを加える、膝を抱えて回転する、といった技にも挑戦していたのが印象的であった。

開演5分前にはライバルチームの4人が楽しげに登場し、飛び込み競技の基本的な知識を伝授してくれる。ダイビングの競技のポイント、空中での演技と入水の仕方、そこで点数が決まる。そしていわゆる観劇の諸注意、それから物語が始まる。

主人公のモノローグ、なぜ、自分がダイビングに魅せられたかを語る。それはある夏のことであった。そして登場人物が次々に登場し、賑やかなオープニング。

主人公である坂井知季(納谷健)を中心にストーリーは進行しているが、このミズキダイビングクラブに所属している少年たちとそれを取り巻く大人たちやライバルたちの群像劇の要素もある。クラブ存続の危機、赤字経営に陥っていた。そこへ凄腕の新任コーチの麻木夏陽子(名塚佳織)がやってくる。彼女はクラブ存続の条件は「次のオリンピックにMDCから日本代表選手を送り出す」という。しかも彼女はMDCの創設者の孫、もう筋金入り。「私たちが目指すのはオリンピック!」しかも次のオリンピックは・・・・・東京だ。オリンピック候補の座を争うのは坂井知季、MDCのエース富士谷要一(牧島輝)、そして程なくしてやってきた幻の高校生ダイバー沖津飛沫(財木琢磨)そしてクラブの選手たち。沖津飛沫の祖父は昭和の始めの天才ダイバー、麻木夏陽子はその天性の才能を見抜き、連れてきたのだった。そしてイマイチパッとしなかった坂井知季(納谷健)のポテンシャルをも見抜く「あなたは確実に伸びる」と告げる。彼は優れた動体視力、『ダイヤモンドアイ』を持っていたのだった。

セットはシンプルでそれを動かしながら場面転換、よって暗転というのはない。セットが動くたびにストーリーはスピード感を持って動いていく。いきなりオリンピック、と言われても・・・・・・な状況、主人公の坂井知季は「オリンピックなんて一度も出たいと思ったこともない」と言う。何か遠い遠い夢物語にも聞こえるのも無理はない。しかし、この『オリンピック』がクラブ内でさざ波を起こす。クラブをやめてしまう大広陵(杉江大志)、しかし、やめてもクラブの仲間が気にかかる様子。練習をしなければならない、オリンピックを目指して、GFに去られて落ち込み、練習を休んでしまう主人公、誰にでもある弱さ、何かを得ようとすれば、失くすものもある。気持ちを奮い立たせる「僕は勝ちたいんだ」と。海外、北京への合宿、選ばれた者だけが行ける。みんながみんな行けるわけではない、厳しいかもしれないが、それは一つの通過点。富士谷要一は両親共に飛び込み競技の選手だった。それだけに自分にも厳しい。その真摯な態度と行動がまた波乱を呼ぶ。

飛び込み競技をやっている人口はまだまだ少ない。「600人」という数字も出てくる。過酷なスポーツで10メートルからの自然落下でも時速50キロ、よって高くジャンプして飛び込むとなると軽く時速50キロ超え、これをやるには恐怖心と戦う必要がある。しかも団体競技ではなく自己との戦い、精神的にもかなりきつい競技と言える。それでも少年たちはたった一つの景色を見るために、1秒にも満たない瞬間に全てを注ぎ込む。コーチは言う「あなたにしか見えない景色がある」と。その景色は何色なのか、何が見えるのか、その一瞬に知季たちは賭ける。物語はまだまだ続いていく気配。

 

ストーリー展開もさることながら、キャラクター一人一人にドラマがあり、葛藤がある。悩み迷い、それでもプールに飛び込むが、プールに飛び込むのと同時に人生の冒険にも飛び込む、それがシンクロし、観客の心をつかむ。注目の飛び込みのシーンだが、飛んでいる!のである。さすがに10メートルというわけにはいかないので、ジャンプしてからはワイヤーアクション、スローモーション的な動きで見せる。そしてプロジェクション・マッピングのような映像効果は一切使わない。つまり『マンパワー』あとは照明と飛び込むあの音。この飛び込みだが、繰り返し、繰り返し練習してきた俳優陣の努力の結晶、膝を抱えての回転、体を伸ばした状態でひねる、逆立ちからのダイブ、ほんの一瞬なので、ここはしっかりと観ておきたい。

またドラマ部分も充実、少年たちの成長と気づき、そして大人たちもまた、様々なことに気がついていく。主人公を演じる納谷健は最初はちょっとひ弱な少年、それがクラブ内の仲間たちとの葛藤やふれあいで人として成長していく様を好演、ダイブシーンもしっかりと膝を抱えて綺麗に回転。自分を律し、決して自分を甘やかさないエース・富士谷要一を演じている牧島輝、負けず嫌い、熱いパッションを持つキャラクターをしっかりと演じ、また沖津飛沫演じる財木琢磨は口はちょっと乱暴だが性根は優しいワイルドなキャラクター作りでアクセントに。飛び込み競技、日本人のメダル獲得はゼロ。この劇中に出てくるセリフはある意味、切実だ。東京オリンピックではリアルにメダルを獲って欲しいとついつい思ってしまう、そんな舞台であった。

初日に先駆けて囲み会見が行われた。登壇したのは、納谷健 、牧島輝 、財木琢磨、杉江大志、 高橋健介、 安達勇人、 宮城紘大、 瀬戸祐介、 西野太盛。納谷健は「根本の部分を表現したい。体当たりで挑んでいます」とコメントしたが、まさに全員体当たり演技。牧島輝は「登場人物みんなに課題や壁があって、それを乗り越えて飛び込む瞬間の緊迫感は、この舞台でしか味わえないもの。その空気を感じながら、みんなで素敵な舞台を!」と言い、財木琢磨は「飛び込む時に水しぶきをあげるキャラです。怪我は気をつけないと!」杉江大志は「見てくれた人が前を向いて・・・・元気をもらいたい人は是非!」とコメント。高橋健介は「裸の付き合い(確かに!)みんなでムダ毛を剃りあえる仲に!(ここでキャスト一同大笑い)このチームワークの良さを伝えたい」と語る。安達勇人は「ステージでしか観られない魅力を!」とコメントしたが、ピンクのパンツでしかも強烈キャラ、“お笑い”も担って、頼もしいライバルぶり。 宮城紘大は「ライバルにも注目して欲しい」と語る。瀬戸祐介は「飛び込みに全てをかけています。いろんな困難、苦しくって悩むんだけど、こんなに素晴らしいんだっていうメッセージを届けたい」と意気込む。西野太盛は「みんなの個性が!全力で!」と元気良く。稽古場でのエピソードについて納谷健は「飛び込みの表現・・・・高いところに登るので」とコメントしたが、もちろん実際の飛び込み競技の高さと比べると低いが、それでもかなりの高さ!見所はやはり「葛藤」と納谷健。設定年齢は14歳、それで「オリンピック」と言われる。ここの役作りは注目。そして衣装が・・・・・シンプル!納谷健は「おいしいご飯が食べられなかったのがつらかった・・・・・・ご飯に誘いづらかったですし、一緒にご飯に行ってもお酒も飲めなかったり・・・・・・」と衣装が衣装なだけに!!!!そんな隠れた苦労話も飛び出し、終始、和やかなムードで会見は終了し、ガッツポーズを決めてフォトセッション。

なお、ロビーには撮影記念ブースがあり、ハッシュタグ「#ダイ舞」をつけるとポスターがもらえる!SNSで是非、自慢の種に!

 

 

「DIVE!!」The STAGE!! 稽古快調!飛び込む!水しぶきが上がる!9月20日開幕!

《インタビュー》「DIVE!!」The STAGE!! 脚本・演出 伊勢直弘

「DIVE!!」The STAGE!! 記者会見 開幕まで2週間!初日は9月20日!

<「DIVE!!」とは>
「DIVE!!」とは森絵都による水泳の飛込み競技を題材とした
「スポ根」青春小説。
第52回小学館児童出版文化賞受賞作。
その後、ラジオドラマ、映画、コミック、そしてアニメ化と様々なメディアで展開され、中高生を物語の主軸に据えながらも幅広い世代に支持される作品。
オリンピックを2年後に控えた今年、ついに舞台化が決定。

<STORY>
坂井知季の通うミズキダイビングクラブ・通称MDCは赤字経営による存続の危機に陥っていた。そんなMDCのもとに突如現れた新任コーチの麻木夏陽子が提案したクラブ存続の条件。それは、「次の年のオリンピックにMDCから日本代表選手を送り出す」というものであった。
知季とその座を争うのは、MDCのエース富士谷要一、幻の高校生ダイバー沖津飛沫をはじめとした様々な個性豊かなダイバー達。身体一つを武器に、その一瞬にすべてを賭けた少年達の熱い闘いがいま幕を開ける!!

【公演概要】

<東京公演>
日程:2018年9月20日(木)~30日(日)
場所:シアター1010
<大阪公演>
日程:2018年10月6日(土)~7日(日)
場所:森ノ宮ピロティホール<キャスト>
納谷健 牧島輝 財木琢磨/杉江大志 高橋健介/名塚佳織 唐橋充
安達勇人 宮城紘大 瀬戸祐介 西野太盛/廣野凌大 大島涼花 藤岡沙也香 光宣
<スタッフ>原作:森絵都『DIVE!!』(角川文庫刊) 協力:アニメ「DIVE!!」製作委員会
脚本・演出:伊勢直弘
音楽:Yu(vague)
特別協力:ミズノ株式会社/
制作:Office ENDLESS/プロデューサー:下浦貴敬
主催:「DIVE!!」The STAGE!!製作委員会
Office ENDLESS/DMM pictures/サンライズプロモーション大阪
公式サイト:http://officeendless.com/sp/dive/
© 森絵都・角川文庫刊/アニメ「DIVE!!」製作委員会
©「DIVE!!」The STAGE!! 製作委員会

取材・文:Hiromi Koh