KAAT神奈川芸術劇場「2025年度ラインアップ発表会」レポ

KAAT神奈川芸術劇場の2025年度ラインアップが発表された。登壇したのは長塚圭史、公演を説明。

またVTRでそれぞれの演出家や作家らからの挨拶、説明も。そしてこの3月末には神奈川県民ホールが建て替えのため、閉館する。KAAT神奈川芸術劇場の果たす役割は大きくなる。


まず、同劇場支配人兼事業部長の堀内真人より挨拶。


「この2025年度は、2021年度から始まりました長塚圭史芸術監督任期5年間の最終年となります…財団理事会におきまして2026年度から5年間の再任が決議されておりますので、私どもが指定管理者として選定を受けましたら、引き続き芸術監督の任を担っていただくこととなっております。来たる2025年度はこの5年間の集大成であり、次の5年間に向けた“揺籃の1年”ということになるかと…公共劇場だからこそ生み出し、表現することができる価値を実現するため、長塚芸術監督が劇場各セクションのスタッフ一同と練り上げたこのラインナップの数々を」
それから長塚芸術監督より。
まず、映像を交えながら前シーズンの振り返りをしつつ、「劇場を開いてきたいという志は2025年度もまったく変わりません」と語る。劇場と観客の開かれた関係性を今後も探求していくとのこと。県内公演はもちろん、広報誌の充実など、継続。

◇ミュージカル『LAZARUS』
音楽・脚本:デヴィッド・ボウイ 脚本:エンダ・ウォルシュ
演出:白井晃
出演:松岡 充 / 豊原江理佳 鈴木瑛美子 小南満佑子 /
崎山つばさ 遠山裕介 / 栁沢明璃咲 渡来美友 小形さくら /
渡部豪太 上原理生
ダンサー:Nami Monroe ANRI KANNA
演奏:益田トッシュ [Bandmaster] フィリップ・ウー [Key.] 松原”マツキチ”
寛 [Dr.] Hank 西山 [Gt.] 三尾悠介 [Key.] フユミカワカミ(おふゆ) [Ba.]
スウィング:塩 顕治 加瀬友音
5 月 31 日(土)~6 月 14 日(土) <ホール>

白井晃より
ミュージカル『LAZARUS』の演出を担当します白井晃です。このミュージカル『LAZARUS』は稀代のロックスター デヴィッド・ボウイのプロデュースによります、彼の遺作とも言える作品です。この作品は、1976 年に彼が主演した『地球に落ちて来た男』の続編のイメージで描かれています。音楽はデヴィッド・ボウイの過去のヒット作と新しく書き下ろした楽曲で構成されています。そして、戯曲はイギリスの劇作家 エンダ・ウォルシュが担当しています。これはデヴィッド・ボウイが直接依頼したそうです。実は、このエンダ・ウォルシュの作品を過去に二度、私は KAAT の<大スタジオ>で上演しています。その魅力に魅せられて、その関係からこのミュージカル『LAZARUS』を創作させていただくことになりました。このミュージカル『LAZARUS』の主人公も地球で事業に成功して、やがて失敗して凋落します。そこから物語は始まり、現実とも幻想ともつかない世界で不思議な人々と出会って、果たして元いた自分の星に戻ることが出来るのか、そんな世界観が描かれています。ここにあるのは、地球とはいったいどんな星なのかということが提示されているように思います。このミュージカル『LAZARUS』というタイトルは、ニューヨークの自由の女神の台座に刻まれた、
移民を受け入れるための詩の作者であります、エマ・ラザラスの名前から取られています。魅力的な音楽と出演者の皆様とで、日本版の『LAZARUS』をお届けしたいと思います。よろしくお願いします。

◇KAAT アトリウムプロジェクト
空間デザイン:山本貴愛
4 月下旬~6 月中旬 <アトリウム>

KAAT の<アトリウム>を活用した、新しいプロジェクトを始動!
開館以降、劇場 1F エントランスホール・通称<アトリウム>では様々なイベントが行われてきました。長塚の芸術監督就任以降、より一層あらゆる人々に「ひらかれた」劇場を目指し、劇場の入口となる<アトリウム>を解放する取り組みにも力を注いでいる。
テーブルや椅子を新たに設置したほか、舞台上演、インスタレーション作品の展示、ダンスパフォーマンス、マルシェといった多岐にわたる企画を開催。2025 年度のプレシーズンでは、この<アトリウム>に、メインシーズンへの架け橋となるテーマを据えた空間デザインを施し、そしてこの空間を使用したパフォーマンスを実施。誰でも立ち寄ることのできる<アトリウム>を、舞台芸術には欠かせない舞台美術家の視点でデザインし、その空間でパフォーマンスを実施することで、公演を観に来た人々だけではなく、たまたま近くを通った人、休みの場として訪れた人——劇場に訪れた様々な方々のイマジネーションを掻き立て、誰でも気軽に劇場やアートに出会える機会を創出する。

山本貴愛より
KAAT アトリウムプロジェクトを担当させていただきます。KAAT アトリウムというお客様を最初にお迎えする場所で舞台美術家の視点からどのようにその場所を作ることができるのか試行錯誤しようと思っています。また、2023、2024 年度と続けて KAAT キッズプログラムの美術を担当させていただいた際に、思っていた以上に長年横浜在住の方でも KAAT にご来館されたことがないという事実を知り、劇場という場所が身近ではない方々にも気軽に入れるアトリウムという場所をきっかけに劇場に少しでも興味を持っていただける場所を作ることができればなあと思っています。

◇KAAT×TJP(ストラスブール・グランテスト国立演劇センター)
『ダンスマラソンエクスプレス(横浜⇔花巻)』
振付・演出:伊藤郁女
7 月 11 日(金)~13 日(日) <大スタジオ>

ストラスブール・グランテスト国立演劇センター(TJP)との国際共同制作ダンス作品を創作上演。
振付・演出は振付家・ダンサーの伊藤郁女。当劇場で上演したキッズ・プログラム 2023『さかさまの世界』は、伊藤自身初となる日本でのクリエイションであり、自由で型にはまらない構成が好評であった。伊藤郁女が芸術監督を務めるストラスブール・グランテスト国立演劇センター(TJP)と KAAT 神奈川芸術劇場、日仏の公共劇場の共同制作により新作を創作する企画、芸術監督・長塚圭史もドラマトゥルグとして参加。
『ダンスマラソンエクスプレス(横浜⇔花巻)』は、現代から戦後まで、時代のポップシーンにのせて日仏 9 人のダンサー達が踊りながら遡り、宮澤賢治の物語へと誘っていく作品。「銀河鉄道」の元になったとも言われる「ひかりの素足」を題材に、それぞれが個性をきらめかせながら、特急列車のようにダンスで紡いでいった時代の先には、物語の根底に流れる日本ならではの思想や文化をあぶり出し、宮澤賢治の繊細なオノマトペとともに、花巻の風景を浮かび上がらせていく。

伊藤郁女より
『ダンスマラソンエクスプレス(横浜⇔花巻)』は、J-POP から 90 年代、80 年代~戦後の POP まで、日仏の 9 人のダンサー達がマラソンのように踊りながら遡り、宮澤賢治の描く岩手県の雪景色までを新幹線のようにザーッと駆けていく感じの作品になっています。
宮沢賢治の「ひかりの素足」という素晴らしい兄弟の愛のことを描いたテキストをもとに、その状況や情景を音で表現する繊細なオノマトペを中心に、それがどうやって体につながっていくか、探っていきます。こういう作品を通してみると、やっぱり日本人の観念、心、愛情、兄弟愛だとかが描かれていて、それを日本人とフランス人で一緒にやる、というのはチャレンジで、私は日本に帰ったような感じもするしフランスに来たような感じもするし、すごく複雑な素晴らしい気持ちで毎日ダンスマラソンエクスプレスを考えております。見に来てください。よろしくお願いします。

◇KAAT キッズ・プログラム 2025
『わたしたちをつなぐたび』
作:イリーナ・ブリヌル 脚本・演出:大池容子
7 月下旬 <大スタジオ>
*7 月 26 日(土)・27 日(日)は『SPAC 新作』との 2 演目同日上演

“おとなもこどもも楽しめる”ことをテーマに、第一線で活躍するアーティストとともに企画性の高い新作に取り組み続けてきた
KAAT キッズ・プログラム。2025 年度の新作は、劇団「うさぎストライプ」を主宰し、近年はテレビドラマの脚本を手掛けるなど
その活動の幅を広げ、気鋭の劇作家・演出家として注目を集める大池容子が、少女が自らの出生をめぐる旅に出るすがたを情感豊かに描く、イギリス人作家イリーナ・ブリヌルの傑作絵本を舞台化。
また、今回のキッズ・プログラムでは、他地域の公立劇場と連携し、舞台作品の創造・発信をすることで、クリエイティビティの高
い舞台芸術作品の流通構造の構築を目指す試みを、SPAC-静岡県舞台芸術センターとともに取り組みます。その第一歩とし
て、KAAT と SPAC がそれぞれキッズ作品を創作し、両館で同日上演。

《あらすじ》
森でお母さんとしあわせな毎日をすごしていた女の子は、あるとき、自分にはなぜお父さんがいないのか、自分はいったいどこからきたのか知りたくなり、お母さんにたずねます。お母さんのこたえに納得がいかない女の子は、自分がどこからきたのか知るために、動物たちの助けをかりながら自分の物語の源流をたどります。

大池容子より
『わたしたちをつなぐたび』は、一人の少女が「自分はどこから来たのか」を探る物語です。少女は一緒に暮らしているお母さんのもとを離れて、森の動物たちと出会い、旅をして、やがてある少年に出会います。
イリーナ・ブリヌル氏とリチャード・ジョーンズ氏による原作では、一見可愛らしいファンタジーの世界の中で、今を生きる私たちの“さまざまな家族の姿”が温かくも現実的な眼差しで描かれています。今回舞台化するにあたって、そのバランスを保ちながら“旅”という要素にスポットを当てて作品を立ち上げたいと思っています。初めて演劇を観る子どもたちはもちろん、大人たちも楽しめる作品になるよう創作に臨みたいと考えています。

『SPAC 新作』
台本・演出:寺内亜矢子
7 月 26 日(土)・27 日(日) <大スタジオ>

演劇のプロフェッショナルとして海外への発信や地域での活動など、ユニークな活動を展開するSPAC が、長年 SPAC で俳優として活動し、近年は演出家としても活躍目覚ましい寺内亜矢子を演出に起用し、俳優達の鍛えぬかれた身体と音楽性豊かなセリフ術を存分に活かし、子どもたちの自由で豊かな発想力を用いて物語を進めていくインタラクティブな演劇作品を創る。

寺内亜矢子より
わたしたちはどこからきて、どこへいくのか。誰もが抱える、人生最大の謎です。
こどもたちは「わからないことをわかるようになりたい!」という知に対する強い欲望と、わからないまま遊びながらルールを発見したり発明したりする高い能力を持っています。
知への欲望に応えてくれるところはたくさんあります。でも、わからないことをわからないまま楽しむ力を育ててくれるところは多くありません。だから、いつの間にか、わからないことを楽しむことをあきらめてしまうのかもしれませんが、劇場はその力を伸ばし育んでくれる場所だと信じています。
地域の公共劇場が連携して作品を作り、発表の場を共有する、この素晴らしい機会に、わからないことをわかるようになりたいという欲望とわからないことをわからないまま楽しむ力を両翼にたずさえて、こどもたちと一緒に宝探しの旅に出ます。

<メインシーズン『虹~RAINBOW~』>
テーマは『虹~RAINBOW~』。「『にじ』と読むのではなく『レインボウー』と読んでください」と長塚監督。実はシーズンタイトルには、”ある音”がポイント、『冒』『忘』『貌』『某』「今年は『虹』と書いてレインボーの『ボー』です」と長塚監督。会場から笑いが。なぜ『虹』なのか、そもそも虹は大気中に浮遊する水滴の中を光が通過する際に、分散することで特徴的な模様が見られる大気光学現象。続けて「(虹は)欲望渦巻く人間界の空に、皮肉なほど美しく鮮やかに架かります。また『虹』は厳しい試練の後、夢のように現れて、人々の心を軽やかにし、時に勇気づけます。そして『虹』は多様な人々を繋ぎ、越境する七色の架け橋。急速な変化を続ける時代から目を背けず、世界の煌めきも綻びも捉えるシーズン『虹~RAINBOW~』にご期待ください」とコメント。

◇KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース
『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
9 月中旬~10 月上旬 <ホール>

ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が、約 6年ぶりに KAATで新作を上演!
2019年に上演した『ドクター・ホフマンのサナトリウム ~カフカ第 4の長編~』は、未発表のフランツ・カフカの長編小説の遺稿が見つかったという設定のもと、現代とカフカの居た時代、そしてカフカの小説世界が騙し絵のように交差していくという物語が好評を博しました。
今回は、現実と妄想の区別がつかなくなり荒唐無稽な行動を繰り広げる男の顛末を描いた、セルバンテスの小説「ドン・キホーテ」をもとに新たな冒険奇譚を書き下ろします。
自らを遍歴の騎士(ドン・キホーテ)と思い込み、世直しの旅に出る初老の郷士。彼のお供をするサンチョ・パンサや空想上のドルシネア姫といった原作から引き継がれるキャラクターたちと、新たに描かれるドン・キホーテを取り巻く登場人物たちによる群像劇が紡がれます。主役のドン・キホーテを演じるのは、KERAが信頼を寄せる大倉孝二。そして、大倉に引けを取らない個性と実力を兼ね備える俳優陣が、生演奏を交えて縦横無尽に舞台を駆け巡ります。夢と妄想と正義感に取りつかれた人間の狂気を、原作のエッセンスと KERA独自の不条理さを交えどのようにリメイクされるのかに注目。

ケラリーノ・サンドロヴィッチより
バレエに舞台に映画に、様々な取り上げ方をされているセルバンテスの原作ですが、『最後のドン・キホーテ』と称したからには、極め付けとなる「読みかえ」をしたいと思います。
とかく「夢や理想」は、効率、時間、お金といった価値観に囚われた価値観、世間という「フツー」にかき消されていきます。「健全な社会」を作ろうとするメカニズムに真っ向から抗う「狂気の老人」の活躍にご期待ください。「純粋な不謹慎さ」を堪能頂くべく、すんごく頑張ります。

◇KAAT EXHIBITION 2025
大小島真木展「あなたの胞衣はどこに埋まっていますか?」(仮)
作家:大小島真木
9 月 21 日(日)~10 月 19 日(日) <中スタジオ・アトリウム>

「KAAT EXHIBITION」は、KAAT 神奈川芸術劇場の劇場空間と現代美術の融合による新しい表現を展開する KAAT 独自の企画シリーズ。10 回目となる今回は、循環していく生命をテーマに作品を展開しているアートユニット大小島真木による劇場初の個展です。
大小島真木は、複雑に絡み合う自然界の姿や、生命が無限に循環してゆくさまを、絵画、立体、映像、インスタレーションなど多彩な表現方法で展開しています。その活動の場は、舞台芸術へも拡がり KAAT キッズ・プログラム 2021・2022『ククノチ テクテク マナツノ ボウケン』の舞台美術を手掛けました。
2024 年から 2025 年にかけて文化庁新進芸術家海外研修制度の研修員として独自の死生観が生活や文化に浸透しているメキシコに滞在し、第一子を出産。生命の誕生やそれを取り巻く伝統儀式を体験したことで、大きな影響を受けました。胎児を包んでいる膜を胞衣(えな)と言います。胞衣は命が生まれる源であり、自然に還り、そして循環していく世界すべてを包み込む森のような存在です。
本展では、劇場空間を一つの大きな胞衣と捉え、戦争や差別、環境問題などさまざまな課題を抱える社会においても、命が生まれ、繋がっていくことへ捧げる祈りの世界を創り出します。

大小島真木より
今回の展示で私たちが大きくテーマとしているのは「祈り」です。私たちにとって「祈り」とは、ある一つの世界との関わり方です。生きていくなかで人はさまざま不条理や矛盾に見舞われますが、「祈り」とはそうしたなかで感じる痛みに対し、単にその解決や克服を目指していくのではなく、そうした「痛み」を所与のものとして、その痛みと共に生きていこうとする、一つの姿勢です。特に本展では私たちはそうした「祈り」を「出産」という営みに関係づけています。現在、私たちの社会には戦争、差別、あるいは環境問題など、さまざまな問題がなおも存在し、そうした数多くの悲劇を前に人類史そのものが大きな自省を求められています。決して正当化することができない歴史の先端において、しかし、それでもなお私たちは命を縦に、そして横に、繋いでいく。私たちが今回試みたいことは、いかなる状況においても命が生成していくというプロセスそのものを、その先に種の絶滅さえも見据えながら肯定すること、そして、そこへと捧ぐ祈りを表現することです。

◇ダンス海外招聘作品
カルカサ
『CARCAÇA』
振付:マルコ・ダ・シルヴァ・フェレイラ
10 月 24 日(金)・25 日(土) <ホール>

「CARCAÇA-カルカサ」はポルトガル語で遙か昔に絶えた動物の骸骨のことを指します。振付・演出を担うマルコ・ダ・シルヴァ・フェレイラは、この言葉を歴史や記憶のメタファーとして捉え、創作に着手しました。ポルトガルの歴史を振り返りながら、ダンスを通じてコミュニティや集団の文化的アイデンティティを探求しています。
出演は、マルコ・ダ・シルヴァ・フェレイラを含む多彩なバックグラウンドを持つ 10 人のダンサーと 2 人のミュージシャン。
前半では、それぞれのダンサーがアフロ、ブレイキング、フラメンコ、クドゥーロなど、ポルトガルの今と切り離せない多種多様なステップが、まるでクラブで踊っているかのようにエネルギッシュに展開され、グルーヴ感溢れるダイナミックなダンスが繰り広げられます。後半では、セノグラフィー(舞台美術)が一変し、ダンサーたちの力強い歌と踊りを通して、独裁政権下や旧植民地時代の歴史が浮き彫りになっていきます。ヨーロッパの最西端に位置し、他のヨーロッパ諸国とは異なる独自の歴史と文化の流れを持つポルトガル。マルコ・ダ・シルヴァ・フェレイラとダンサーたちは、舞台上のコミュニティの 1 人1 人が身体の限界で表現するダンスや音楽を通じて、ポルトガルの「今」と「未来」、そしてさらには世界の姿を鮮やかに浮かび上がらせます。社会や歴史への批評も織り込みながら、圧倒的なエネルギーで魅せるフィジカルシアター作品を、皆さまにお届けします。

◇KAAT×城山羊の会
『アマンダ・K の甘い生活』(仮)
作・演出:山内ケンジ
11 月 <中スタジオ>

人間関係を鋭く軽妙に描ききる「大人の会話劇」で観客を魅了する演劇プロデュースユニット「城山羊の会」を率いる山内ケンジの新作を上演。
2022 年、山内が KAAT に初めて書き下ろした作品『温暖化の秋 -hot autumn-』では、人間の本能や欲望を絶妙なユーモアで描写し、第 74 回読売文学賞【戯曲・シナリオ賞】も受賞するなど大きな評判を呼びました。公演中から次回作の期待は高まっていて、今回熱烈なリクエストに応え、再び KAAT と城山羊の会がタッグを組んで新作に取り組みます。
今作では、城山羊の会のおなじみのメンバーも交え、かつて日本が欧米文化に憧れた頃の、デカダンな雰囲気の中、絶望的なコメディが展開されます。淡々とした会話の中に、生々しい感情が見え隠れする独自な世界を構築する山内ケンジ作品を。

山内ケンジより
城山羊の会 山内ケンジです。KAAT×城山羊の会として 2022 年に『温暖化の秋 -hot autumn-』を上演させていただき、あろうことか読売文学賞 戯曲・シナリオ部門をいただいてしまいました。この機会をいただいた KAAT 様には改めて御礼申し上げます。その後も『萎れた花の弁明』、昨年末には『平和によるうしろめたさの為の』を発表しました。誰からも言われていませんが、この数年は自分としては社会派になっていると思っております。そして今年は再びの KAAT です。社会派としては、まず世の中の情報を得ないといけないので、今、新聞を読み、ビデオニュース・ドットコムを見ています。そして、KAAT はいつもの三鷹や下北に比べると家から遠いです。この距離の感覚が確実に私に新しい意欲をもたらしてくれることが、前回の経験で分かりました。今年の新作も楽しみです。どうぞご期待くださいませ。

◇KAAT カナガワ・ツアー・プロジェクト 第三弾
『冒険者たち 〜JOURNEY TO THE WEST〜』
上演台本・演出:長塚圭史(原作:呉承恩「西遊記」) 共同演出:大澤遊 音楽・演奏:角銅真実
『冒険者たち』シリーズ新作
作:長塚圭史 演出:大澤遊 音楽・演奏:角銅真実
2026 年 2 月<中スタジオ>

長塚圭史より

KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト 第一弾で上演いたしました『冒険者たち〜JOURNEY TO THE WEST〜』が、なんと新作と共に帰ってきます。
そうなんです。県内に迷い込んで大騒動を巻き起こした、三蔵法師と孫悟空ら一向にもう一度再演で会えるだけではないのです。
彼らが再びやってきて、今度はなんと暗黒面(ダークサイド)に落ちかけている神奈川県を救おうという新作も上演するのです。まさか同じキャスト・スタッフで再演のみならず新作を上演できることになるとは全くもって嬉しい驚きなのですが、再演新作共に楽しいこと必至。角銅真実さんの素敵な音楽と共にお送りする、かなり自由で刺激たっぷりな三蔵法師一行の神奈川冒険譚が 2 作品同時上演でやってきます。お楽しみに!

大澤遊より
またあの一行と旅に出る機会をいただけるなんて、楽しみで仕方ありません。
KAAT カナガワ・ツアー・プロジェクト 第一弾で神奈川県内を巡り、神奈川県の広さや奥深さ、そして溢れる魅力を知り、次はどんな神奈川県と出会えるのかワクワクします。ただ、一行がまた神奈川県に現れるということは、まだ天竺に着いていない? 猪八戒とは合流できた? 気になる点がいくつかあります……。さらに今回の神奈川県は何か問題を抱えているようです。台本は上がっていないのでどのような展開になるのか実はまだ分かりませんが(笑)
前回を楽しんでくださった皆様の期待に応え、初めての皆様には 2 作品とも楽しんでもらえるように創作していきたいと思います。

◇KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース
『未練の幽霊と怪物』(新作)
作・演出:岡田利規
2026 年 2 月~3 月 <大スタジオ>

現代演劇における言葉と身体、空間がおりなす可能性を開拓し、国際的に活躍する演劇作家である岡田が、現存する世界最古の舞台芸術 「能」に触発された音楽劇です。2021 年には KAAT で『未練の幽霊と怪物―「挫波」「敦賀」』を上演。今回はその第 2 弾となる新作。

岡田利規より
「未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀」は、能というフォーマットをわたしなりに活用してわたしなりの演劇をつくる試みでした。この社会・世界に無数に存在している、浮かばれない魂、成仏できないでいる存在者へのエンパシーを上演空間において共有する。その企みには意義があるはずだし、続けたい、とわたしは思っていましたから、今回それを実現するチャンスを KAAT からいただけて、嬉しいです。クリエーションに関わる皆さんと楽しくつくり、観客の皆さんに濃密な体験となる上演を届けるつもりです。

◇YPAM – 横浜国際舞台芸術ミーティング 2025
12 月上旬〜中旬 <ホール>ほか
YPAM(ワイパム)は、舞台芸術に取り組む国内外の専門家が、公演プログラムやミーティングを通じて交流し、舞台芸術の創造・普及・活性化のための情報・インスピレーション・ネットワークを得るプラットフォームです。アジアで最も影響力のある国際的舞台芸術プラットフォームのひとつとして国際的に認知されています。1995 年に TPAM(東京芸術見本市)として東京で開始、2011 年に横浜に移転、2021 年に YPAM(横浜国際舞台芸術ミーティング)と改称し、より横浜にコミットし
た活動を展開。
会期中は国内外のアーティストによる公演プログラムや舞台芸術関係者の交流プログラムなどが企画されるほか、どなたでも参加のできる多様なプログラムが横浜各所で開催されます。
KAAT 神奈川芸術劇場は、そのメイン会場の一つとして、公演プログラムの上演などをいたします。
主催:横浜国際舞台芸術ミーティング実行委員会(公益財団法人神奈川芸術文化財団、公益財団法人横浜市芸術文化振興
財団、横浜市 にぎわいスポーツ文化局、特定非営利活動法人国際舞台芸術交流センター)

その他、主催プログラムとしては

▼つたえつなぐ
古来より伝承されてきた日本の芸能を未来につたえ、つないでいくKAAT の古典芸能シリーズ。今年度も国立劇場と連携し、実演やレ
クチャーを。

▼避難体験 in KAAT
KAAT 発、催し物を楽しみながらお客様にも避難を体験していただくイベント。#1《寄席》、#2《お笑いライブ》につづく第 3 弾は、初の初の有料公演となります。横浜に拠点をおくスタジオコンテナとの共同イベント、#3《スタジオコンテナ大感謝祭》を開催。

公演事業以外のプログラム
※通年で開催
劇場を常に考える場、豊かな発想を生み出す場へ
KAAT が長塚芸術監督のもと、2021 年度より取り組んでいるプロジェクトです。
劇場が常に考える場、豊かな発想を生み出す場となることを目指し、クリエーションのアイディアをカイハツしていきます。
新たな表現の実験、ジャンルを横断したアーティストの交流、様々な情報の収集など、以下のようなカイハツ活動を軸にして、劇場の創造活動の核を育てていくことを目指します。企画・人材カイハツでは、今年度は、初めての企画公募も実施し、100 本ほどの応募をいただきました。今後も継続的に取り組んでいきます。

(1)企画・人材カイハツ
アーティストがその構想を試み、新たな出会いをもつ場として、上演を最終目的としない自由かつ実験的なクリエーション活動を行うことができる機会と空間を設けます。アーティストにとってはアイディアの種を試し育てる機会となり、劇場にとっては、新しい才能と出会うきっかけとなります。

(2)戯曲カイハツ
国内外の戯曲発掘および情報収集、海外戯曲の翻訳等を行い、時にリーディング試演を交えながら、作品への理解・戯曲へのリテラシーを深め、発想の土壌を育んでいきます。

(3)創作プロセスカイハツ
じっくり時間をかけて作品をクリエーションしていく創造形態を模索します。戯曲を書くためのリサーチ、上演に必要なワークショップや交流、トライアウト公演などを実施。稽古場と上演会場を持つ劇場の強みを生かし、数年間かけて作品を熟成させる創作過程を充実させ、豊かな成果を生み出します。

<これまでの取り組み>
*創作カイハツ
・劇団ヴァニシング・ポイントとKAAT神奈川芸術劇場共同製作『品川猿の告白』創作のためのワークショップ
・兼島拓也作・田中麻衣子演出『ライカムで待っとく』制作のためのヒアリング、リサーチ、戯曲リーディング
・伊藤郁女×長塚圭史による、今後の新作公演(2025 年)に向けたワークショップ
・ジャン=バティスト・アンドレ×瀬戸内サーカスファクトリー「重力と戦う身体ー身体バランスを用いたアクロバット」
など
♢「カイハツ」プロジェクトのこれまでの活動報告は KAAT ホームページにて。
公式URL:https://www.kaat.jp/news_detail/2510

神奈川芸術劇場公式サイト:https://www.kaat.jp