
『NINETEEEEN GRRRLZ’ 99』が4月に六本木トリコロールシアターで上演。
グルメ、アート、音楽、ファッション…、世界中からあらゆるトレンドが集まる街“六本木”。海外からの旅行者はもとより、様々な人種、世代が行き交い、常に流行を生み出してきたエンターテインメントの中心地。2025年春、この刺激に満ちた“六本木”の劇場から、新たな音楽劇が誕生。この作品の脚本・演出を務める山崎彬さんと出演者の山口乃々華さんの対談が都内で行われた。
ーー90年代のメロデイということで、思い出などあればお願いいたします。
山崎:僕は演劇の「足を運んで、同じ場所でみんなで同じ時間を過ごす」という表現の尊さや面白さというものに取り憑かれて何年もやってきた人間です。なので、必ず自分が作る作品は、原作があっても2.5次元でも劇場に来た意味を感じてもらうものを作るように心がけています。今回のお話は、「90年代のメロディを使って女性キャスト12人で作ってください」というご依頼をいただきました。僕にとってちょうど青春時代というか、中学・高校生ぐらいの時に過ごした、音楽やテレビが、学生たちの中でとても影響を持った時代のどんよりはしてるんだけども、そこまで悲壮感はそれほど…みたいな終末感を今に蘇らせて、90年代のメロディに乗せて表現できたらいいな、というのが最初に出た着想でした。
ーー出演の経緯は。
山口:オーデションは6人ぐらいと一緒に…とても緊張感があったのですが、オーデションの会場に入ったら、すごく柔らかい雰囲気で、この中で一緒にお芝居をできたらいいな、と思っていたところ、合格のお話をいただけました。とても嬉しかったです。
ーーオーデションということでしたが、山口さんに期待されていることは。
山崎:俳優として、強い意志みたいなものを、言葉だとか、立ち姿に表現できる人だなというのが最初の印象でした。純粋に役の世界にちゃんと沿っていきつつ、大勢の一人でもないような…。今回山口さんには物語を引っ張っていくような役割、あるいは、物語に対してリアクションしていく役割をやっていただきたい、と思っています。多分、面白い役だと。
山口:楽しみです(笑)
ーー90年代のメロディに乗せた音楽劇という事で、この時代の楽曲に関する記憶、思い出を教えてください。
山崎:モーニング娘。さんの『LOVEマシーン』を、僕は『ASAYAN』(注1)っていうオーデション番組から見てまして。オーデションの頃から毎週見ていた、モーニング娘。さんと後藤真希さんが世に知れた時の、あのパワー。25、26年経った今でも、『LOVEマシーン』はいまだに歌いますし、カラオケでも、やっぱり『LOVEマシーン』は盛り上がりますね。
ーー山口さんは90年代の音楽についてイメージはありますか。
山口:98年生まれなので、ギリギリ触れています(笑)。『LOVEマシーン』は私も知ってます。モーニング娘。さんやミニモ二世代ですね。とても派手な、カラフルでキラキラしていたイメージです。カラオケでも昭和の曲や、平成の初期の曲が好きなんです。
ーー特に好きな曲はありますか?
山口:華原朋美さんの『I’m proud』が好きです。今井美樹さんの『プライド』は母がすごく好きで、母から覚えたんですけど。
山崎:アップテンポの曲もいいし、バラードみたいなのも、良かったりする。バンドサウンドは、90年代から活気がありました。
ーーこの作品で楽しみにしていることは?
山口:90年代のメロディを使った劇も経験したことがないので、お客様が一緒に盛り上がったり、気持ちがくっついたまま物語の中に進んでいける作品なんだ、と思っています。そういう一体感みたいなものを楽しみにしています。女の子が12人いるということで、一致団結して、積極的にコミュニケーションとって仲良くなれたらいいなと思ってます。団体、グループでいたので、人といるのは好きですし、一緒に何かをするとか、仲良しになるのは得意です、本当に楽しみです。
ーー「舞台と一体になったインタラクティブな手法」というあらすじを拝見しましたが、ノストラダムスの大予言(注)、当時すごく流行ったと思うのですが…。
山崎:そうですね、僕が17歳のときでした。
ーーそのインタラクティブな手法というのをネタバレにならない程度に教えていただけますか。
山崎:自分の劇団の芝居に『愛しのボカン大作戦』っていう、お客様を巻き込んで…お客様自身が劇場にいる意味のある作品を作りました。観劇ではなく”参劇”っていうのを押し出して、舞台上へ実際にお客様を乗せて、途中でお客様にセリフを渡してインタビューしたり、お客様とやり取りしたり、実際にお客様を歩かせたり、何も練習せずに、本番の30分前に来ていただいて、やるっていう(笑)。役者は特有の良さがあるんですけど、『やってみたかったけど、私なんか、僕なんて』っていう人が観劇してる人の中にもいると思うんです。舞台の上でも、その気持ちを後押ししていきたいなと思って作ってきました。コミュニケーションが取れるような、客席と舞台の垣根がないような作品にしていきたいと思っています。演劇、やるのも面白いですもんね。
山口:面白いですよね。客席と舞台がシームレスな作品に出たことがないので楽しみです。場当たりで自分のシーンでない時は客席で見てるんですが、そういうときに座ってる客席と、本番の客席が全然違うように感じます。朝、劇場入りして、ウォーミング・アップしてるときのステージと本番が始まったときのステージも違う気がして…そういう雰囲気の違いに飲み込まれそうになって、『何なんだ、この空間は!』ってたまに思っちゃうんですけど、舞台を経験していけばしていくほど(自分が)強くなってきてる気がして、物語に入っちゃえば大丈夫なんだと思うようになりました。
ーーありがとうございます。 90年代のメロディだけではなく、その当時に流行っていたものや何か90年代を感じさせる演出とかの仕掛けみたいなものをネタバレにならない程度に教えてください。
山崎:99年の7月に、ノストラダムスの大予言でアンゴルモアの大恐怖の大王が降ってくるっていうのを、あの頃は信じてたし、半ばちょっと面白がりながら、7月に死ぬなら何かやりたいことやろうとかって思いながらも、できなかったんですね。それが今、SNSで噂が広がってるという…25年前とは違うSNSの広がり方を見るとあのころとは違う終末感を今、感じています。平成の価値観がどんどん崩れていってる感じがありますね。その違いを感じつつ、二つが重なるような作品にしたいなと思ってます。 90年代、僕はゆずさんやaikoさんのラジオを聞いてたんです。「踊る大捜査線」の録画したビデオを何回も観て…すごいアナログだったあの頃の感覚を、劇中にも入れていきたいなと思っています。
ーー山口さんはミュージカルでも活躍されていますが、ミュージカルや舞台をやるときの意識を…ガールズグループ時代と違うことがあったらお願いいたします。
山口:ガールズグループ時代のときはHIROさんっていう一番大きい存在がいて、ずっと守ってくれていたから何があっても大丈夫という安心感が心強くさせていたんだなって思っていまして。何か間違えるとかいう次元ではなく、届けるものを届けてくださいっていうところにいれたことが、すごく幸せだったんだなって思っています。今は、一緒に演劇を作ったキャストが横にいて、音響さんや照明さんが一緒にいてお客さんも楽しみに来てくれている。その共有する時間は一種の村みたいな島みたいな、そういうものなんだって去年から思えてきました。変わったきっかけが、私の歌の先生が『届ける側なんだよ』っていうことをすごく言ってくださったことでした。『愛を伝える側、何か伝えるってそれは愛なんだよ』と…。言ってもらったときに、緊張や失敗とかを恐れるなんて、とてもレベルの低いことを思っていたんだなと。やるべきことは、もっと違うところにあったんだなって。届けるってことは「記憶に入れる」ということで、その瞬間を一緒に共有したってことは、『みんなの記憶の中の網にどっかに引っかかって、いつか思い出して、助けになるかもしれない。そういう素晴らしい仕事をしてるんだよ』と歌の先生が言ってくださり、それがすごく嬉しくて励みになってます。
ーーオリジナル作品はどんなものが出てくるんだろうっていう、見る側としてもすごくわくわくする楽しみがある。原作ものではない、オリジナル作品を作る面白さは?
山崎:演劇のオリジナル作品って、わかりやすいものだとか、いろんな人たちに伝わるものっていうのを求められているんですけど僕は何だかわかんないけれど、”すげえ!”みたいなものを作りたいし、それは演劇だからできると思ってるんですよね。オリジナル作品はいち作り手として、どんなことをどのように感じているか、そこをちゃんと出したいなって思っていつも書くようにしてます。今、感じてることを舞台にのせようと心がけるようにしてます。
ーー 山口さんはオリジナルの脚本で、なおかつ初演になる作品に出るときの 面白さを感じる部分と、難しいなっていう部分があると思うのですが、いかがでしょうか。
山口:みんなで理解していく工程も好きですし、セットとかもみんなで面白く作ってみようみたいな、みんなで考えるのがすごく好きで、どんな形にしようかみたいなところから始まるのがオリジナル作品初演ならではだなと思っています。
山崎:ちなみに僕は当て書きでしか書けないので。今回の12人のキャストは基本的には全部当て書きです。
山口:楽しみです(笑)。
ーー書くために、キャストの皆さんにインタビューしたりするのでしょうか?
山崎:するときもあります。 話してるところから感じるもので、書くようにはしています。直感で、”こんな人かな?”と思ったら”なんで知ってるんですか?”みたいなことはよくあります。
ーー最後にメッセージを。
山口: 幅広い世代の方に楽しんでいただける作品になるのではないかなと思っています。きっと来てよかった、参加できてよかった、あの瞬間に立ち会えてよかった、そう思えるような瞬間をお届けしたいと思っていますので、ぜひお友達を連れてきていただけたらなと思います。
ーー参加型ですね。
山崎:まさにその通りで、今おっしゃっていただいた通り、劇場に来ていただく以上そこでしかできない体験を必ず持って帰っていただきたいです。ありきたりな言葉になっちゃいますけど、”ちょっと行くか”と…足を向けてくださると嬉しいですね。ぜひ来てください。
ーー客席と舞台が近い劇場ですね。
山崎:そうですね。椅子とかも…ふかふか系です。
山口:楽しみ。
山崎:ふかふかですが、寝させません(笑)。
(注1)1992年にスタートした『浅草橋ヤング洋品店』(『浅ヤン』)。1995年10月1日に『ASAYAN』にリニューアル。2002年に最終回を迎えた。
(注2)※ノストラダムスの大予言
地球と人類の未来を恐るべき正確さで予見した16世紀、フランスの占星術師・ノストラダムスの究極の滅亡大予言。「1999年7月、空から降ってくる恐怖の大王によって、世界は滅亡する」という内容。
STORY
1999年7の月、オワルオワル詐欺のまま続いてしまった我々のセカイも、2025 年7月についにオワリを迎える!
幕が開き、舞台の上に現れた女はよく見る夢の話を語り出す。
それは 1999年7月に終わったセカイを生きる夢。
芝居のタイトルは「滅亡☆19QQ」。
演じる女を観ているのは、音を立てて崩れゆくヘイセイに嫌気がさす日々を送る女。
女は 2025年 7 月にセカイが終わることを夢見ている。
並行に存在するオワタセカイからやってきた女と、だらだら続いてしまったかつては羨まれたニッポンの未来を生きる女。
そんな女と女を、世紀末を彩った数々の楽曲を歌う別の女たちが取り囲み、やがてヘイセイとレイワがひとつになる。
これは、オワタ世界とオワラナカッタ世界を、ガルルと唸りながら生き抜くしかない女たちによる、世紀末デタラメ音楽劇。
概要
公演名:SAKURACROSS PROJECT
『NINETEEEEN GRRRLZ’ 99(ないんてぃーんがーるずきゅうじゅうきゅう)』
日程・会場:2025年4月3日(木)~13日(日)六本木トリコロールシアター
脚本・演出:山崎彬
出演:
山口乃々華 水湊美緒 小山内花凜 長月翠
北野瑠華 木村彩音 月山鈴音 杉浦しづき
窪真理チャカローズ 仲沢のあ 倉持聖菜 まりゑ
スタッフ:
音楽:益田トッシュ 美術:竹邊奈津子 照明:加藤直子 音響:佐藤こうじ 映像:森すみれ 衣裳:植田昇明 振付:浅野康之 歌唱指導:宗田梁市 演出助手:藤嶋恵 舞台監督:澤田大輔 宣伝美術:山下浩介 宣伝写真:山崎伸康 宣伝衣裳:植田昇明 宣伝ヘアメイク:大崎ココ
料金:S席 特典付(公演パンフレット・特製ポスター)・前方2列目以内確約13,000 円/A席9,900円 税込
問合:明治座チケットセンター 03-3666-6666(10:00~17:00)
桜十字グループ presents
制作:明治座プロモーション 主催:ミックス
公式サイト: http://www.mejiza.co.jp/others/2025_04_01/
取材・構成:高浩美