
大野和士芸術監督による日本人作曲家委嘱作品シリーズ第 3 弾として、現代を代表する作曲家として世界的に評価される細川俊夫の新作オペラを上演。
人と自然の関わりを見つめ、祈りと鎮魂としての音楽を書いてきた細川俊夫は、近年は特に、自然への畏怖を忘れた人間の傲慢さを念頭に、破壊の歴史を繰り返す人間の姿を問い続けており、その細川の地球環境をテーマとした新作オペラ『ナターシャ』の台本を手掛けるのは、ドイツを拠点に日本語とドイツ語で小説や詩や戯曲を発表し、世界的な評価と人気を博す作家、多和田葉子。ドイツで作曲を学び活動していた細川とも親交が深く、日本発の多言語オペラを創ろうという誘いに、「脳に電光が走った」といいます。
故郷を追われ彷徨う移民ナターシャと青年アラトの邂逅、人間の様々な地獄絵図を見せ二人を導いてゆくメフィスト的存在。彼らの前には森林破壊、洪水、干ばつといった様々な“現代の地獄”が現出し、日本語、ドイツ語、ウクライナ語などの多言語によって、現代文明と人間の始原の姿が対比されていく。危機に瀕した地球のうめきが根底に響き、多文化を鍵に、破滅と希望が描かれるオペラの誕生。
タイトルロールのナターシャを演じるのは、現代音楽のスペシャリストとして細川の信頼も厚いソプラノ、イルゼ・エーレンス。新国立劇場でも 2018 年『松風』タイトルロールで類まれな超絶技巧と妖艶な狂乱の場、そして幽玄の世界に誘う身体表現で圧倒した名ソプラノ。ナターシャと共に地獄を旅するアラトには、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進中のメゾソプラノ山下裕賀が新国立劇場初登場。

艶やかな声とテクニックが共感を誘うことでしょう。地獄への案内人メフィストの孫には、近年特に現代作品で評価を高め、世界の主要な歌劇場での活躍が著しいバリトン、クリスティアン・ミードル。
日本から世界へ放つ多言語オペラ『ナターシャ』に最高の歌い手が集結し、大野和士の指揮のもと、観客を異世界へ誘います。
演出は舞台美術も手掛けるドイツのオペラ演出家クリスティアン・レート。
次々展開する『ナターシャ』の内的な世界をオペラパレスの大空間に照射する演出は、大きな見どころ。
公演に先駆けて、台本・多和田葉子のトークイベントが開催される。
公演関連イベント
新作オペラ『ナターシャ』創作の現場から~多和田葉子に聞く~
『ナターシャ』の台本を手掛ける多和田葉子氏を迎え、どのようなことを考えて“多言語オペラ”『ナターシャ』を書いたのか、その創作過程を多和田葉子氏自身による朗読も交えてお聞きするトークイベントを開催。 司会は多和田葉子作品の解説も手がける、翻訳家・ドイツ文学研究者の松永美穂氏。
日時:5 月 15 日(木)19 時~(開場:18 時 30 分) ※所要時間は約 1 時間 30 分を予定
会場:新国立劇場 中劇場
登壇者:多和田葉子(『ナターシャ』台本)
司会:松永美穂(翻訳家・早稲田大学文学学術院文化構想学部教授)
料金:無料・自由席(要事前申込)
詳細・お申込み:下記サイトのお申込みフォームよりお申込みください。
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/news/detail/6
*やむを得ない事情により、イベントの内容・登壇者等が変更になる場合がございます。
*定員に達し次第、締め切ります(先着順)。
*1回のお申込みにつき2名様まで申し込み可能です。
公演概要
日程・会場:2025年8月11日〜17日 新国立劇場 オペラパレス
台本:多和田葉子
作曲:細川俊夫
指揮:大野和士
演出:クリスティアン・レート
出演:
ナターシャ:イルゼ・エーレンス
アラト:山下裕賀
メフィストの孫:クリスティアン・ミードル
公演情報 WEB サイト https://www.nntt.jac.go.jp/opera/natasha/