ーー唐十郎の傑作舞台を金守珍演出で上演決定!
約 6 年ぶりの舞台となる窪田正孝と真っ向からアングラ演劇に初めて挑む柚希礼音がダブル主演!! 甘美で切ない、恍惚と戦慄の幻想恋愛劇 金守珍演出で贈る、ロマンティシズム溢れる唐十郎の民衆の「神話」ーー
2016 年 5 月、思い入れのキャスティングをしたまま逝去したシアターコクーン芸術監督・蜷川幸雄の遺志を継ぎ、 Bunkamura は同年 8 月に追悼公演『ビニールの城』(作・唐十郎)を上演たが、その演出を担当したのは唐十郎、蜷川幸 雄、両虎を師とし、アンダーグラウンド演劇に真正面から取り組んできた劇団・新宿梁山泊主宰の金守珍。森田剛、宮沢りえ、 荒川良々という布陣で上演された『ビニールの城』は、熱く美しく、悲しい愛の物語として昇華し、絶賛されたが、 その熱が続く中、2019 年の『唐版 風の又三郎』上演が企画。シアターコクーンは演出・金守珍とともに、再び唐十 郎の美しい世界に挑むことに。
『唐版 風の又三郎』は 1974 年に状況劇場公演として初演。根津甚八、李礼仙、小林薫という今やアングラのレジェンドとも いえる俳優たちが出演し、陶酔的な美しさと感動にあふれた舞台と評された。宮沢賢治の「風の又三郎」にギリシャ神話、 シェイクスピアの「ヴェニスの商人」、さらに初演の前年となる 1973 年に起った自衛隊員による隊機乗り逃げ事件などをつき まぜながら誕生した民衆の「神話」ともいえる作品。不忍池の水上音楽堂や夢の島に張られたテントなどでの上演では、 当日券を求め 5 時間並ぶことも厭わない観客の熱狂ぶりも話題に。
そして 2019 年、世界情勢は変わり、日本のカルチャーも変わり、漠然と進歩したかのようでありながら 45 年前よりどこか生命 力を失いつつあるような今日。この渋谷・シアターコクーンから庶民的卑俗さと唐独特のロマンティシズムに満ちた高揚感で 人々の心を揺さぶる公演を!
2013 年に出演した「唐版 滝の白糸」で唐作品に初参加し、蜷川演出で骨の髄までアングラに浸かった窪田正孝。「滝の白 糸」以降、数多くの映画やドラマで主演を務め、6 年ぶりとなる舞台で再び唐作品に出演する。そして宝塚歌 劇団星組トップスターとして不動の地位を確立し、退団後はミュージカルのみならずストレートプレイやソロコンサートなど多方 面で活躍してきた柚希礼音が、芸歴 20 周年という節目の年にアングラという異ジャンルに挑戦。 更に、舞台・映像作品と出演作では強烈な存在感を放つ北村有起哉、丸山智己、江口のりこ、意外にも唐作品には初参 加となるベテラン・風間杜夫、山崎銀之丞、蜷川作品には欠かせない存在であった石井愃一、そして唐イムズを継承する 六平直政、大鶴美仁音と、金守珍率いる劇団新宿梁山泊の面々など、若手からベテランまで豪華な顔合わせが実現。公演は東京、大阪、東京公演のチケット発売は2018年11月25日(日) AM10:00~、大阪公演は2019年1月下旬の予定。
<物語>
死の花嫁を捜しにどこへ行く、オルフェ。死の魔窟は…死の耳はどこにある。分かっているよ。僕たちは分かっているんだ。 そして、わざとこんな風な言いぶりで、何かを計っていることも。さあ、行こう、代々木のテイタンへ。死んだ恋の人を尋ねて。 東京の下町で二人の男女が出会う。精神病院から逃げてきた青年「織部」と宇都宮から流れてきたホステスの「エリカ」。二 人はこの物語の中では恋人同士ですらなく、ただ、『風の又三郎』のイメージを介して結びつくもろい関係。
汚濁した世間で生きていくことができずに病院に収容され、それでも、自分を連れ去る風の少年に憧れる織部は、その面 影をエリカの中に見い出す。エリカは自衛隊の練習機を乗り逃げした恋人を探す道連れとして、この純真な青年を利用する。 探し当てた恋人はすでにこの世の人ではなく・・・・。
ガラスのような精神を抱え、傷つきながらもひたすらに、自らの「風」である女を守ろうとする青年と、いまわしい血の記憶に 翻弄させる女との、恋よりも切ないものがたり。
<おもな登場人物 >
織部/窪田正孝、エリカ/柚希礼音、夜の男/北村有起哉、死の青年/丸山智己、桃子/江口のりこ 死の少年/大鶴美仁音、梅子/えびねひさよ、珍腐/石井愃一、風の商人/山崎銀之丞、淫腐/金守珍、 乱腐/六平直政、教授/風間杜夫 他
<作・演出家プロフィール>
[作] 唐十郎 (から・じゅうろう)
63年に劇団「シチュエーションの会」(翌年「状況劇場」に改名)を旗揚げ。翌64年に処女戯曲「24時53分 『塔の下』行きは竹早町の駄菓子屋の前で待っている」を執筆。67年、新宿花園神社境内にて紅テントの 公演を開始。国外での活動も積極的に行っており、72年に韓国、73年にはバングラデシュ、74年にはレバ ノン、シリアの難民キャンプにていずれも現地語での公演を行っている。88年に状況劇場を解散、劇団 「唐組」を旗揚げし作・演出・出演を務める。以降、70年に第15回岸田國士戯曲賞受賞、03年に第7回鶴 屋南北戯曲賞受賞、04年に第55回読売文学賞受賞、06年に第13回読売演劇大賞芸術栄誉賞といった 日本での賞のほか、10年には韓国の文学賞、第3回李炳注(イ・ビョンジュ)国際文学賞受賞するなど、海 外でも高い評価を得ている。また、97年から05年まで横浜国立大学教育人間科学部マルチメディア文化 課程教授に就任し、劇団「唐ゼミ★」を指導。05年から10年には近畿大学文芸学部客員教授を務め、12 年4月より、母校である明治大学文学部の客員教授に就任している。脚本家としてだけではなく小説家と しても数多くの作品を発表しており、83年には「佐川君からの手紙」で芥川賞を受賞、13年にはこれまで の独創的な舞台制作の功績が評価され、2012年度朝日賞を受賞している。
[演出] 金守珍 (きむ・すじん)
東海大学電子工学部を卒業後、演出家・蜷川幸雄に師事し蜷川スタジオに所属。「近松心中物語」等に 出演し、演劇の基礎を学んだ。78年より唐十郎の状況劇場に参加し、蜷川と唐という「アングラ小劇場」の 代表とも言うべき演出家から直接に指導を受けた。独自の表現スタイルであるテント演劇のノウハウを獲 得し、その後、87年に新宿梁山泊を創立。旗揚げより新宿梁山泊公演の演出を手掛け、テント空間、劇場 空間を存分に使うダイナミックな演出力が認められている。89年には小劇場として初めて韓国都市公演を 行い、第17回『テアトロ演劇賞』を受賞。その後も、ドイツ、中国、韓国などに招聘され、高い評価を受け た。日本はもとより、オーストラリア国立演劇学校で特別講師として招かれ、世界に通用する演出家と評判 を呼んだ。99年にはニューヨークで公演を行い、また01年には日韓合作映画「夜を賭けて」で監督を務 め、第57回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人監督賞、第43回日本映画監督協会新人賞を受 賞。エネルギッシュ且つ強烈なビジュアルを印象付ける演出力に高い評価が集まっている。また演劇公 演以外にもロックコンサート、韓国伝統音楽会各種イベント、デザイン博覧会などの演出をはじめとして 様々な芸術活動を行っている。
<近年の主な演出作品> 「腰巻おぼろ~怪鯨篇」「オセロ―」(17)、「ビニールの城」(16)、「少女仮面」「二都物語」「丹下左膳~百 万両の夢枕~」「ハムレット」(15)、「ジャガーの眼」(14)、「月の家」「百年~風の仲間たち」「道玄哀歌」 (13)
<演出家コメント>
唐ワールドの魅力は何といっても異次元の世界にワープし、物語の飛躍を楽しめることだ。渦巻き状の パワーを秘めたタイムトンネルをくぐり抜けることで、限りなく自由な想像力を我々に与えてくれる。 この渦巻き状のパワーは荒々しい北風にも似て東北から生まれた宮沢賢治の世界とあいまってロマン 溢れるファンタジーの世界を醸し出している。
この度、素晴らしいキャスト・スタッフと共に「唐版 風の又三郎」をシアターコクーンで上演できることはこの上ない喜びである。 ぜひとも劇場に足を運び、唐ワールドのダイナミックで美しい飛翔のイメージとノスタルジックな叙情を たっぷりあじわって頂きたい。
<出演者コメント>
⭐︎窪田正孝 (くぼた・まさたか)
蜷川幸雄氏演出「唐版 滝の白糸」でアリダを演じたのが昨日のことのように感じます。 あれから5年も経っているとは。
再び唐版に携われることが光栄です。
風のようにやわらかく
風のように凶暴に
風のように自由に
風のようにカタチにとらわれず
唐版の戯曲を、言葉遊びに酔いしれたい。
⭐︎柚希礼音 (ゆずき・れおん)
この度「唐版 風の又三郎」に出演させていただくことになり身の引き締まる思いでございます。 今まで出演させていただいた作品とは全然違う世界で、そして私ごとですが、来年芸歴20周年を迎え、 その幕開けがこの作品になり、新人のつもりで体当たりで全てをかけて学ばせていただきたいと思ってお ります。 演出の金さんを始め、ご一緒させていただく窪田正孝さん、素晴らしい共演者の皆様からもたくさんのこと を吸収させていただき、おもいっきり挑みたいと思います。 このような素晴らしい体験ができることに感謝しながら、今までの自分からもまた一つ殻を破ることができ たら・・・、そして憧れのシアターコクーンで演じることができるのも楽しみです。 是非とも楽しみにお待ちください。宜しくおねがいいたします。
【公演概要】
Bunkamura30 周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019『唐版 風の又三郎』
<東京公演>
2019 年 2 月 8 日(金)~3 月 3 日(日) Bunkamuraシアターコクーン
<大阪公演>
2019 年 3 月 8 日(金)~13日(木) 森ノ宮ピロティホール
作:唐十郎
演出:金守珍
出演:窪田正孝、柚希礼音、北村有起哉、丸山智己、江口のりこ、 大鶴美仁音、えびねひさよ、広島光、申大樹、染野弘考、小林由尚、加藤亮介、 三浦伸子、渡会久美子、傳田圭菜、佐藤梟、日和佐美香、清水美帆子 石井愃一、山崎銀之丞、金守珍、六平直政、風間杜夫
企画・製作:Bunkamura