
新国立劇場演劇研修所では、 夏恒例の朗読劇として、 井上ひさし作、栗山民也演出の名作『少年口伝隊一九四五』を 4 年ぶりに 7 月 31 日(木)から 8 月 3 日(日)まで、新国立劇場小劇場にて上演。昭和 20 年 8 月、広島は原爆によって壊滅的な打撃を受け、敗戦の後、9月、戦後最大級の枕崎台風の襲来によって更なる惨禍に見舞われたが、この『少年口伝隊一九四五』は、この悲劇を三人の少年の姿を通じて語る約1時間のドラマとなる。
この作品は、井上氏が演劇研修所で研鑽を積む若い俳優のために書き下ろし、当時芸術監督で初代演劇研修所長を兼任していた栗山氏が初演以来自ら演出を担い続ける作品です。2008 年に初演、これまでに研修所公演として 9 回上演してきたほか、 2010 年にはこまつ座公演として修了者によって上演されたが、この作品は、井上氏にとっては晩年の傑作であり、栗山氏にとってはライフワークの一つに位置づけられる作品と言える。
二人は、この作品を通じて「忘れてはならない歴史を学び、語り継ぐこと」を若い俳優に託しました。演劇研修所ではその意を汲みこの作品に加え、沖縄戦におけるひめゆり学徒隊の悲劇を語る『ひめゆり』等の上演を通じて「忘れてはならない歴史を学び、語り継ぐこと」を続けている。
<過去公演(2021年)より>
この作品は、広島を襲った大きな二つの悲劇を、徹底した作品作りに取り組んだ 12 人の俳優の「声」と 1 本のクラシックギターの生演奏だけで描いていく。
若い俳優は、皆この作品の上演準備に数か月の時間をかけ、稽古場での稽古には2か月近くをかけ、国内研修として広島に赴き、平和記念資料館見学、ドラマで描かれる場所巡りや様々な資料の読み込み等を通じて、作品作り、役作りを深めていった。
「声・語り」だけでドラマを描く朗読劇は、俳優にとっては身体的な演技を伴う表現ができない反面、「声・語り」の演技に集中して趣向を凝らすことにもなり、様々な「声・語り」と繰り出す俳優の「声」の演技を。
また、初演時から参加するクラシック・ギタリストの宮下祥子の生演奏も必聴。戦災で美しいギターの音色は、怒りや悲しみも描きながら、やがて無限の悲しみに寄り添い、忘れてはならない歴史を奏でる。
物語
昭和 20 年 8 月 6 日、一発の原子爆弾が広島の上空で炸裂した。 一瞬にして広島は壊滅。このときから、漢字の広島はカタカナのヒロシマになった。 かろうじて生き延びた英彦、正夫、勝利の三人の少年は、やはり運よく助かった花江の口利きで中國新聞社に口伝隊として雇われる。新聞社も原爆で何もかも失ったため、ニュースは口頭で伝えるほかなかったからだ。 三人の少年は、人々にニュースを伝えながら、大人たちの身勝手な論理とこの世界の矛盾に気づいていく。 やがて、敗戦……。そこへ戦後最大級の台風がヒロシマを襲う。
概要
日程:2025 年 7 月 31 日(木)19:00/ 8 月 1 日(金)19:00
8 月 2 日(土)14:00/ 8 月 3 日(日)14:00
*開場は開演の 30 分前 *8 月 2 日託児あり
会場:新国立劇場 小劇場
作:井上ひさし
演出: 栗山民也
演出補: 田中麻衣子
音楽監督: 後藤浩明
模型製作:尼川ゆら
照 明: 服部 基
音 響: 黒野 尚
衣 裳: 中村洋一
方言指導:大原穣子
ヘアメイク:前田節子
舞台監督: 米倉幸雄
宣伝美術: 荒巻まりの
出 演: 新国立劇場演劇研修所 第19期生
井神崚太 大田真喜乃 菊川斗希 﨑山新大 田村良葉 千田 碧
辻坂優宇 中島一茶 野仲咲智花 向井里穂子 森 唯人 和田壮礼
ギター演奏
宮下祥子
演劇研修所長: 宮田慶子
主催・制作: 新国立劇場
公式サイト:https://www.nntt.jac.go.jp
宣伝美術クレジット:荒巻まりの
舞台写真撮影:宮川舞子
<今後の研修公演>
第19期生公演
公演日程:2025 年 11 月 11 日(火)~11 月 16 日(日)
第19期生修了公演
公演日程:2026 年 2 月 10 日(火)~2 月 15 日(日)