
1993年に初演後、『星の王子さま』の世界で唯一のミュージカル化権を取得して上演を続けてきた音楽座ミュージカル「リトルプリンス」。 文化庁芸術祭賞をはじめ数多くの演劇賞を受賞し、2022年、ライセンス貸与により東宝株式会社製作で上演されるなど、長く愛されてきた作品。今回は振付KAORIaliveを迎え、相川タロー・ワームホールプロジェクトによる新演出で上演。なお、今年は原作のフランス語版出版から80年の記念の年にあたる。
ストーリーは基本的に変わらないのだが、特に振付、KAORIaliveのダイナミックで圧倒感のある動きが物語を一層際立たせる。また、出だし、飛行する前の飛行士の様子が描かれている。飛行士同士の会話「すごい霧だな」流れている楽曲、ジャージーな雰囲気、1943年4月6日にアメリカで出版、そんな時代の空気感。飛行士はスケッチブックに何かを描いている。「何描いてるの?」「遊びですよ」と笑う。それからいわゆるオープニング、飛行士は砂漠に不時着する。
ゲネプロでは王子役は入団5年目の山西菜音、とにかく元気いっぱい、初っ端、飛行士に絡むシーンではウザいくらい(笑)だが、そこに愛嬌があり、次はどのくらいの濃さで飛行士に絡むのか楽しみになるくらい、可愛らしい。対する飛行士は安中淳也、今回のバージョンは飛行士の弟の思い出がしっかり描かれており、その弟を想う姿、陰影のあるキャラクター作りで飛行士という人物像に深みを。元々、原作者は王子に自分の弟を重ねているのだが、今回はそれを色濃く打ち出しており、飛行士の哀しみをさらに感じさせる。
また、王子が出会う様々なキャラクター、特にうぬぼれ屋、王様、呑み助、点灯夫、実業家、地理学者、ここはさらにショーアップ、ゲネプロにも関わらず、客席から笑いが起こるほど、面白いシーンに仕上がっているが、シニカルさも。
また、お馴染みの花、キツネ、ヘビ、黄花、特に黄花が竜巻に巻き込まれるシーンは迫力、そして儚さも感じる、見せどころ。
ライトモチーフになっているメロディが効果的、飛行士の心がだんだん変化、そして王子もまた、少しずつ変わっていく。
深いテーマ、友情、愛、孤独、様々なものを内包、だから、どんな時代になっても色褪せない。それをミュージカルにしてショーアップさせる。原作に触れたことのない観客は原作を読んでみたくなるはず、そして原作を読んだことのある観客は、また紐解いてみたくなる。音楽座ミュージカル「リトルプリンス」も上演のたびに全く違う演出で話題になるが、それは原作の奥深さ、上演のたびに新たな発見がある、それは観る側も観せる側も同じ、だからまた、観たくなる。「大事なことは目に見えない」、そして出会いがあれば、別れがある、必然。
東京公演は15日まで、その後は大阪、7月20、21日。また、東京は追加公演が決まっている、IMM THEATERにて11月、秋は名古屋、広島でも上演が決まっている。東京は残席が残り少ないそうなので、チケットが取れなかったファンには追加公演は朗報。
▶STORY
ある霧の深い夜、夜間飛行に飛び立った飛行士は、エンジンの故障で砂漠の真ん中に不時着した。
その砂漠で、飛行士は星から来たという不思議な少年(星の王子)と出会う。「羊の絵を描いてほしい」としつこく迫る王子に辟易する飛行士だったが、スケッチブックに描いた「象を呑み込んだウワバミ」の絵を言い当てられたことをきっかけに、次第に心を開いていく。飛行士に、自分が住んでいた小さな星や、そこを飛び出すきっかけになった花のことなどを話す王子。飛行士は王子の体験を自分に重ね、深く受け止めていくのだったー。
概要
日程・会場
東京:2025年5月24日(土) 町田市民ホール
東京:2025年6月6日(金)~2025年6月15日(日) 草月ホール
大阪:2025年7月20日(日)・2025年7月21日(月・祝) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
スタッフ
原作:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ「星の王子さま」
脚本・演出:相川タロー / ワームホールプロジェクト
音楽:高田浩 / 金子浩介 / 山口琇也
振付:KAORIalive
公式サイト:https://ongakuza-musical.com
舞台撮影:二階堂健 ©️ヒューマンデザイン