
好評だったZERO project ~ワイルド、サルドゥ、そしてミュシャ~朗読劇サラ・ベルナールの『サロメ』が7月30日より再び上演。
伝説の女優サラ・ベルナール×人気画家アルフォンス・ミュシャ×スター作家オスカー・ワイルド×巨匠作家ヴィクトリアン・サルドゥ。耽美的19世紀末文学を代表するワイルドは、『トスカ』でサルドゥと伝説を作った世界初の国際女優サラに、『サロメ』を捧げる。
当時のサラはアール・ヌーヴォーを代表する画家ミュシャと専属契約をしていた。
しかし、21世紀でも伝説として知られる3人が19世紀末に集結しても、サラの『サロメ』は上演させることはなかった。なぜ?
その“なぜ?”にまつわる物語。

作・演出:田尾下哲より

サラ・ベルナールの『サロメ』
このタイトルは、わりとすんなり受け入れることができるように思われます。西洋演劇の伝説、史上初の世界的大スター、サラが19世紀末デカダンスのスター作家オスカー・ワイルドの『サロメ』に主演したという情報ですから。ですが聖書の物語を舞台で演じることを禁じたイギリスの“劇場検閲法”によってサラとワイルドの1892年の共作は中止を余儀なくされました。しかしその直後、まずは1893年にパリでフランス語版、そして翌年には英語版も本としてロンドンで発表され、1896年にはパリで舞台版も初演されました。ただサロメ役はサラではありませんでした。それならば…サラは一生サロメを演じなかったのでしょうか。
事実として、サラはサロメを演じていません。少なくとも観客を前にしての記録はないのです。そしてサラのサロメに関する資料は驚くほど少ない。初演予定の劇場、相手役や美術・衣裳デザイナーは分かっていても、当時50歳に手が届こうとしたサラがサロメを演じるに際しどのように役作りをしたのか、ヴェールの踊りを踊ったか、リハーサルに立ち会ったワイルドの感想は、そして何よりサラはサロメの上演中止をどのように受け入れ、そしてまたどのように諦めたのか…それらは何も残っていません。特にサラは一切口をつぐんだのです。
一方のワイルドは1897年の手紙でこのように書いています。
“ドゥーゼが今、『サロメ』を読んでいる。彼女がサロメを演じるかも知れない。サラには比べようがないけれど、彼女もなかなかの女優だ”
ドゥーゼ、現代演劇の礎を築いたイタリアの伝説的な女優と比べても尚。どれほどのサロメだったのでしょうか…。
本作はサラの『サロメ』への取り組み、想いを描いた物語です。そして、その物語を語るのはサラの専属デザイナーを5年間務めたアフフォンス・ミュシャ。サラのポスターで名をなしたチェコの画家は、1890年にサラの『クレオパトラ』を描いて初めてサラと仕事をしました。『クレオパトラ』の作者は『トスカ』のヴィクトリアン・サロドゥ。2人もこの幻のサラ・サロメに深く関わり合いのある人物なのです。
世紀末を彩る天才たちが皆、サラ・ベルナールを描いたのです。その中で永遠に失われたのが、サラの演じるワイルドの『サロメ』であり、ミュシャの描くサラの『サロメ』なのです。ならば私たちは、物語という形でサラの『サロメ』を描きましょう。幻に終わるには、あまりにも魅力的すぎるのですから。
概要
日程・会場:2025年7月30日 (水) 〜 2025年8月2日 (土). 城西国際大学 紀尾井町キャンパス 1号館 地下ホール
出演:青木エマ、松風雅也、中澤まさとも、沢城千春、幸村恵理、山口智広、榊原優希、蒼井翔太、白井悠介、松風雅也、夏目響平、重松千晴、永塚拓馬、石川界人、駒田航 ※出演順作・演出:田尾下哲
演出補:家田淳
照明:稲葉直人
音響:松木優佳
衣装:株式会社dexi
衣装:石井玲子・河野瞳(dexi)
ヘアメイク:太田順子・石津智美
『サロメ』デザイン:Kenny
制作:進藤龍
協力:(株)アイムエンタープライズ、(株)青二プロダクション、(株)EARLY WING、(株)ヴィムス、(株)81プロデュース、(株)ステイラック、(株)二期会21、東京俳優生活協同組合(50音順)
プロデューサー:伊藤綾美
製作・主催:サラサロメ製作委員会