
シェイクスピアと能の融合『デズデモーナ』、そして平維茂の鬼退治を描く『紅葉狩』の二本立て、7月12、13日、銕仙会能楽研修所にて開幕。
『デズデモーナ』はマレーシアのシェイクスピア劇団と能楽のコラボレーション、タイトルにもなっているデズデモーナはシェイクスピアの戯曲『オセロ』の登場人物。ヴェニスの軍人であるオセロが、旗手イアーゴーの策略にかかり、妻デズデモーナの貞操を疑い殺すが、のち真実を知ったオセロは自殺する、という物語。
これに有名な能『羽衣』を掛け合わせ夢幻能形式の作品。マレーシアのシェイクスピア劇団と能楽のコラボレーションというジャンルの垣根を超えた新しい作品でもある。能の所作といわゆる”演劇”、そしてコンテンポラリーなダンス、フォーメーション、それらを自由に融合、掛け合わせた本作『デズデモーナ』は、俳優から発せられる言葉は英語だったり、日本語だったり、中国語だったりと、そこをあえて統一しない。
基本的に能は600年を越える歴史の中で独自の様式を磨き上げてきた日本の代表的な古典芸能、故に様式美が確立されており、歌舞劇として人間の哀しみや怒り、懐旧の情や恋慕の想いを描いている。
シェイクスピアの戯曲『オセロ』、シェイクスピアの四大悲劇の一つ、故に能とは親和性が高く、登場人物の心理状態や行動はわかりやすく、構造もシンプル。そして『羽衣』、元になっている羽衣伝説は実は世界各地に同じような伝説が伝えられている。衣装は基本、着物がベース、煌びやかでカラフル、キャラクターがわかりやすくデザインされており、能面だけでなく、西洋のクラウンなどが着用しそうな仮面もつけている。ビジュアル的に寓話性を強調させているようにも感じる。後半はドラマチック、悲劇性を強く感じる。音楽も独創的で現代的かつ伝統的。革新的かつ、ある意味”国際的”、また、今回コラボレーションしている KL Shakespeare Players(KLSP)は、マレーシアで唯一シェイクスピアの作品のみを専門に上演している劇団。なかなか観る機会のない公演となっている。
もう一つの演目『紅葉狩』、出演者が多岐にわたっているのが特長。演出と殺陣を務める兼田玲菜(尋玲能楽)は映画・舞台などの殺陣師やアクションコーディネートを数多く担当し、映画のテーマソングやアイドルのダンス振付、ゲームのモーションアクターなども務めている。ここでの『紅葉狩』は、よく知られているものとは趣を異にする。”本家”の『紅葉狩』は美女に変身した鬼が武将を誘惑し、隙を見て襲う。だが、ここでは、原作である鬼(前シテ)が何故鬼となったのか、武将の平維茂との過去とその関係、維茂の心変わり、桔梗という別の女性に心移り、子まで成した紅葉を袖にしてしまう。嫉妬、怒り、やるせない想いが渦を巻き、悲劇へと突入する、新しい解釈、見方。
能の表現と現代劇の表現を融合させ、シンプルに見やすい作品になっているので、予備知識は不要、2チーム用意。俳優が変われば、雰囲気も変わる。時間があれば両方観るのも一興。
『デズデモーナ』あらすじ
サイプロス島(キプロス:ギリシャ)で一夏を送る僧は海岸で羽衣を見つけると、それを探しに来た愛の女神アフロディーテに出会う。羽衣は愛の物語を奏で、かつてこの島に流れ着いた夫婦(オセロ・デズデモーナ)の悲劇を語り始める。デズデモーナは偽りの愛の濡れ衣を着せられた挙句殺され、成仏できずに彷徨っている。僧は祈るが……。デズデモーナは時空を超え、過去に起こったことを修復しようとする。愛の行方や如何に。
概要
日程・会場:
7月12日(土)15:00開演(A)/19:00開演(B)
7月13日(日)13:00開演(B)/17:00開演(A)
受付は開演の60分前・開場は30分前
会場: 銕仙会能楽研修所
7月13日(日)13時の回にアフタートークあり
ゲスト 大岡淳(演出家・脚本家、SPAC所属)
デズデモーナ:
吉松章・SARAI・川野誠一・葛たか喜代・Soon Heng・Lee Swee Keong ・Kien Lee・Abdul Min Muhaimin・Santosh Logandran
紅葉狩:
紅 : 絃ユリナ/小川代護 / 暁矢薫
葉 :美澄明里 /佐伯大地 / 三﨑結加
※ W キャスト
紅 = 12 日15時/ 13 日17時
葉= 12 日19時/ 13 日13時
紅葉共通:村尾敦史/近藤大稀/小松大介/蔵松星凪/Yoshi/翔
楽隊 :Ash(琵琶) 今井尋也(小鼓・能管)葉月朝子(大鼓・太鼓)
配役
紅葉 : (葉)美澄明里 /(紅)絃ユリナ
維茂 : (葉)佐伯大地 / (紅)小川代護
桔梗 : (葉)三﨑結加 / (紅)暁矢薫
(紅)(葉)共通
村尾敦史
近藤大稀
小松大介
蔵松星凪
Yoshi
翔
Ash
葉月朝子
今井尋也
スタッフ
作・演出:今井尋也(デスデモーナ) 兼田玲菜(紅葉狩)
題字:七澤菜波
舞台監督:憩居かなみ
照明:小泉献子
振付 / 殺陣師:兼田玲菜(紅葉狩)
衣装:毛利麗華
写真:Gan極楽商会、小笠原勝
宣伝美術:小笠原幸介
制作:Kazan offi ce.
主催:ライフアートユニオン
共催:KL Shakespeare Players(KLSP)、尋玲能楽
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】
協力:株式会社 style offi ce 偉伝或〜 IDEAL 〜 刀 ct-KatanAct- NAIA ENTERTAINMENT スタークコーポレーション
サン • オフィス 立花プロダクション 長者スタジオ 株式会社 CLEO OG-3works
制作協力 : 小高慶子、足立卓、栁澤梨夏、上野愛実、岩田恵(THaNATOS6 /アトリエサード)
公演URL(アトリエサード):https://atelierthird.themedia.jp/posts/57057962