
浦井健治,小池徹平、鹿賀丈史etc.出演の新作ミュージカル『ある男』が4日、池袋で開幕。『ある男』は、平野啓一郎による日本の長編小説。読売文学賞受賞。22年に石川慶が監督による妻夫木聡主演で実写映画化され日本アカデミー賞で最優秀作品賞に選出。そして満を持してのミュージカル化。音楽はジェイソン・ハウランド、脚本・演出は瀬戸山美咲、歌詞は高橋知伽江が手がける。考えられる最高の布陣、弁護士の城戸章良は浦井健治、Xが小池徹平。
浦井健治演じる弁護士の城戸章良が登場、世間的には、仕事も家庭も申し分ないくらい幸せ、だが、それは本当にそうなのだろうか?ある調査を依頼される城戸章良。なんと依頼人の谷口里枝(ソニン)の亡くなった夫・大祐、夫の兄・谷口恭一(上原理生)から衝撃の事実を…「弟じゃない」、それでは彼は誰?これが物語の発端。
楽曲が多彩、重くなりがちなテーマ、内容だが、時には軽快なメロディ、作品世界にすんなり入ることができる。少しずつ明らかにされる”X”。なぜ、谷口大祐を名乗ったのか、複雑な事情、そうせざるを得なかった理由が切なく悲しい。
また弁護士の城戸章良、仕事中心で妻・香織(知念里奈)との間には”隙間風”、”X”の謎解きと城戸章良のストーリーとが並行して進んでいく。スピーディーな展開、アートな抽象的なセット、ダンサー陣の象徴的なダンス、名前とはなんなのか、歌詞の中で「記号」というワードが出てくる。名前で優劣や物事は決まらない、その人自身のパーソナリティ、行動が重要。、谷口大祐を名乗ったX、1幕の最初の方でスクリーンに家族との幸せそうな写真が次々と映し出される。
少なくとも彼の谷口大祐としての人生は幸せだったのだろう。幸せを手にするために、”普通”でいるために、谷口大祐を名乗らなければならない事情。そんな彼のことがわかるにつれて城戸章良の中に変化が生じる。自分は?妻は自分とともにいることで果たして幸せなのか?人として存在することはどういうことなのか、根源的なテーマへと観客を誘う。謎へとのめり込んでいくに従い、妻との間に距離ができてしまう。妻は夫が遠ざかっていくことに苦しむ。また、Xの妻だった里枝、自分の夫が別人だったということに戸惑う。この2人のナンバーは切ない。もちろん2人は会ったこともない、舞台上ではそれぞれの立場を象徴的に見せる。
また、この物語のキーマンである戸籍ブローカーの小見浦憲男(鹿賀丈史)が歌う曲がPOP、鹿賀丈史がさすがの歌唱力。そして1幕ラストのビッグナンバー、城戸章良とXのそれぞれの想い、観客の心、考えを大いに揺さぶる。そしてこの物語の核心を描く2幕へと、連なっていく。
全ての登場人物に深い”物語”、その深さ、そして抱えている闇、光があれば影がある。「人は幸せになるために生まれてきた」という言葉があるが、それを追い求める姿、登場人物全てがそれを求めている。どうすればいいのか、それは永遠の問い。
その問いに立ち向かう。苦悩する城戸章良、浦井健治が陰影をつけて好演。小池徹平のX、幸福を求める姿が胸を打つ。芸達者なキャスト陣が表現。重いテーマ、題材だが、ミュージカルにすることによってエンターテイメント性を持たせ、観客に問いかけるのと同時に視覚的に聴覚的に楽しませてくれる。
公演は東京は17日まで。その後、ツアー公演、千秋楽は大阪、9月15日。
あらすじ
「私はいったい誰を愛したんでしょう…」
「仮に、彼を“X”と呼ぶことにします」
一見幸せな人生を送る弁護士の城戸章良(浦井健治)は、
とある奇妙な調査依頼をきっかけに深いうねりへとのめり込んでいく。
調査の依頼人は谷口里枝(ソニン)。
里枝は愛する夫の大祐を不慮の事故で突然失い、悲しみに打ちひしがれる中、
長年疎遠だった大祐の兄、谷口恭一(上原理生)から
衝撃の事実を突きつけられる。
“愛した人は、名前も過去もすべてが偽りだった”
温泉旅館の次男である谷口大祐(上川一哉)
と名乗っていた男、“X”(小池徹平)とは、いったい誰なのか。
城戸は、大祐の元恋人である後藤美涼(濱田めぐみ)と共に調査にのめり込んでいく一方、
家庭では妻の城戸香織(知念里奈)との溝が深まっていく。
ある過去の事件を知る収監中の戸籍ブローカー小見浦憲男(鹿賀丈史)に翻弄されながら、
Xの人生を通して、
“人間の存在の根源とは何か”
問いに導かれ、城戸は闇へと踏み込んでいく。
“普通”の幸せを求め続けた男
“普通”の幸せを生きているフリをしている男
二人の人生が交錯した先に待つ、この世界の真実とは―
公演概要
日程・会場
東京:2025年8月4日(月)~8月17日(日) 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
ツアー公演
広島:2025年8月23日(土)~24日(日) 広島文化学園HBGホール
愛知:2025年8月30日(土)~31日(日) 東海市芸術劇場 大ホール
福岡:2025年9月6日(土)~7日(日) 福岡市民ホール 大ホール
大阪:2025年9月12日(金)~15日(月祝) SkyシアターMBS
キャスト
浦井健治 小池徹平 / 濱田めぐみ ソニン
上原理生 上川一哉 ・ 知念里奈 / 鹿賀丈史
碓井菜央 宮河愛一郎 ・ 青山瑠里 上條駿 工藤広夢 小島亜莉沙 咲良 俵和也 増山航平 安福毅 ・ 植山愛結* 大村真佑* *スウィング
スタッフ
原作:平野啓一郎「ある男」(文春文庫/コルク)
音楽:ジェイソン・ハウランド
脚本・演出:瀬戸山美咲
歌詞:高橋知伽江
主催・企画制作:ホリプロ