
大野和士芸術監督が注力する 20 世紀オペラから、ベルクの『ヴォツェック』を巨匠リチャード・ジョーンズの新演出で新制作。
アルバン・ベルクのオペラ『ヴォツェック』は、貧困にあえぐ兵士ヴォツェックの苦悩と破滅を前衛的に描き、社会の歪みを観る者に突き付ける衝撃的な作品で、100 年前、1925 年ベルリンでの初演後、20 世紀オペラの金字塔として今日まで世界中で上演が繰り返されている傑作。
原作はゲオルク・ビューヒナーの未完の戯曲『ヴォイツェック』。兵士ヴォツェックが妻の不倫を機に転落していく物語が、演劇的、音楽的緊張感の張りつめる中で一気に語られます。ベルクは緊張感漲る無調音楽をベースとしながら、叙情性にも富む音楽でヴォツェックと妻マリーの苦しみを描き、観る者の胸を揺さぶります。ファン待望、この秋随一の注目公演となる。
演出のリチャード・ジョーンズは英国が生んだ巨匠にしてカリスマ演出家。高度な演奏技術が要求される難役ヴォツェック役には、新国立劇場で 2009 年にも同役を歌った世界的スター歌手、トーマス・ヨハネス・マイヤーが登場。大尉役にはキャラクター・テノールの世界最高峰アーノルド・ベズイエン、鼓手長には同役を特に得意とするジョン・ダザック、マリー役にはドラマティックな表現で活躍するジェニファー・デイヴィスが新国立劇場初登場。指揮は大野和士芸術監督が自らあたる。
大野和士芸術監督より
新制作でお届けするベルクの『ヴォツェック』は、1925年に初演され、今年は初演からちょうど100年の区切りの年です。音楽、物語共に、私たちの内面に深く強く入ってくるもので、今こそ聴きたい作品です。夭折した作家ビューヒナーが、1830年代に実際に起きた殺人事件を題材に、社会の底
辺で精神を病み、内縁の妻を殺して破滅していく男を描いた原作を、1世紀近く経ってベルクが無調音楽で作曲したオペラです。
新演出に臨むのは、巨匠リチャード・ジョーンズ。私は音楽監督を務めていたモネ劇場での『炎の天使』、スカラ座の『ムツェンスク郡のマクベス夫人』で一緒に仕事する機会に恵まれましたが、緻密でありながら、それをはるかに超越したエネルギーによって観る者を劇場空間の心理劇に引きずり込む手腕は、本当に圧巻でした。今回も狂気をテーマにした心理劇をリチャードがどう描いていくのか、私自身も大変楽しみです。ヴォツェック役はトーマス・ヨハネス・マイヤー、マリーにジェニファー・デイヴィス、鼓手長にジョン・ダザック、大尉はアーノルド・ベズイエンと当代随一と言える歌手が集まります。
あらすじ
理髪師から兵士になった実直な男、ヴォツェックは内縁の妻マリーとの間に生まれた一人息子と貧しい暮らしを送っている。上官の大尉や誇大妄想気味の医者にへつらって生活をつないでいる彼の精神状態は不安定で、妄想に苛まれていた。夫との生活に疲れたマリーは、鼓手長との不倫という泥沼に嵌っていく。妻に不審を抱きながらも鼓手長に敵わず、自暴自棄に陥るヴォツェック。自らの罪を悔いて神に祈るマリーをヴォツェックの凶刃が襲うー。
概要
日程:2025年11月15日(土)14:00/18日(火)14:00/20日(木)19:00/22日(土)14:00/24日(月・休)14:00
会場:新国立劇場 オペラパレス
指揮:大野和士
演出:リチャード・ジョーンズ
出演
ヴォツェック:トーマス・ヨハネス・マイヤー
鼓手長:ジョン・ダザック
アンドレス:伊藤達人
大尉:アーノルド・ベズイエン
医者:妻屋秀和
第一の徒弟職人:大塚博章
第二の徒弟職人:萩原 潤
白痴:青地英幸
マリー:ジェニファー・デイヴィス
マルグレート:郷家暁子
芸術監督:大野和士
公演情報 WEB サイト https://www.nntt.jac.go.jp/opera/wozzeck/