浅野ゆう子×中村梅雀 インタビュー 朗読劇『たとへば君』歌人夫婦の物語 9月17日~ 新国立劇場 小劇場

朗読劇「たとへば君 四十年の恋歌」が9月17日~9月20日に新国立劇場小劇場にて上演される。歌人の夫婦・河野裕子と永田和宏が紡いだ、短歌と随筆で綴られた感動の記録、『たとへば君 四十年の恋歌』(文春文庫)を、男女二人の俳優が演じ、ピアノとチェロの生演奏をバックに、心情描写を表現する。

その夫婦役を務める浅野ゆう子と中村梅雀への公式インタビューが届いた。

≪みんなの気迫に乗っかっていけば絶対にすごい作品になる≫

――過日に行われた稽古の手応えについてお聞かせください。

浅野「稽古初日に原作の永田先生がいらっしゃって緊張しましたが、とてもお優しい素敵な先生で、細かに言い回しや歌の詠み方をご指導くださいました。最後はとてもいいっておっしゃってくださったのが嬉しかった。得るものが多かった印象です」

中村「情報量が凄かったよね、読み方とか、ここで区切るとか、そうなると意味が違うなとか色々発見があって。しかも先生の佇まいがすごく穏やかで寛容な感じがあって、どうしたらいいかっていうのをご本人から感じ取ろうと思って。稽古初日にいらしていただいて良かったとすごく思いました」

――原作の印象はいかがでしょうか。

浅野「本当に素敵なご夫妻で、積み上げていらした40年間がとても心に響きました。この関係性や温かさ、愛を演じさせていただけるのは、一俳優としてすごく嬉しく、ありがたいことと思います」

中村「とても愛し合っていることが支えになっていたんだろうなと。心の葛藤とか、それを乗り越えたかと思った時に来る苦しさとか、もう読んでて泣いちゃうんですよね。朗読は泣いてはいけないって思ってるのに、やっぱり初日の読み合わせで先生の前でも泣いちゃって」

――数々の名作ドラマや映画を手掛けてきた星田良子さんの台本も心を揺さぶられます。

浅野「星田監督は、自信ありますとおっしゃっていらして、そのとおりの素晴らしい台本です。原作をそのまま忠実に、大きいポイントを全部台本にあげていらっしゃる。監督もすごく力の入った作品なんだなと、ひしひしと感じます。その力が入っている作品を演じるのは非常にハードルが高く(笑)まだまだ手探り状態なんですけれども、これから監督、梅雀さんと作りあげていければ・・・と思っています」

中村「星田さんの気迫が溢れていると思いました。初日の読み合わせで永田先生がいち観客としても聞いてらっしゃって、あそこの時系列、こういう風に入れ替えた方が、ここに歌が入った方がっておっしゃってくださって。それを星田さんはすぐに取り入れて、そのフレキシブルさも、さすが星田さん!という感じで。その気迫に同じようにこっちも乗っかっていけば絶対にすごい作品になると安心しています」

≪大学生から60代までを演じます!≫

――河野裕子さんと永田和宏さんお二人を、どのような人物だと受け止めていらっしゃるのでしょうか。

浅野「河野先生は、とても可愛い女性だったんだと思います。きっと永田先生は河野さんのことが可愛くて可愛くて仕方がなかったんだろうなっていう愛を、原作、台本を通じてすごく感じます。私も梅雀さんにとって、可愛い裕子さんにならないといけないなと、大きな課題だと思っています。ただ、そこに死というものと向き合わければいけない。
河野さんは病になられて、本当の自分っていうものを全部永田先生にぶつけられた方ですよね。それは不安で仕方がないことだし、当然のことだと思うんですが、それを全て永田先生が受け止めて、大きく包み込んでいらした。
もちろん私はまだ存命しておりますので、そこに向かっていく気持ちは想像するしかないんですけれども、そこを嘘にならないものとしてお届けすることが、非常に大きな私の課題だと思います」

中村「永田先生は非常に穏やかに見えますけど、科学者として一直線のとんでもないパワーの持ち主。その自由さ奔放さと同時に、繊細さといじらしさとか、そういう人間臭い感じが出ると説得力はとても高くなると思うんで、観ている方がそのものだと思ってくださるように演じたいなと思います」

――本作は短歌とともに物語が進んでいきます。短歌についていかがでしょうか。

浅野「短歌自体に関わらせていただくのは初めてで、どういう読み方をすればいいかと、まず戸惑いがあったんですが、一番大きなテーマは、一語一句間違えないように!です(笑)」

中村「うん、全く同じ(笑)星田さんから、日常の会話として聞こえる、単なる朗読じゃない感じにしていただきたいと。いわゆる本人として言ってる部分と、歌になった部分と、あと状況説明のところとか、リアルさと聞きやすさ、そのバランスをどこに持っていくかはとても大切なコントロールの部分で、すごい高度なことを要求されるなって思って(笑)なんとか本番までに自然に流れるようにしたいなと」

浅野「あと今回一つの扮装で大学生から64歳までを演じるというのは、これは大きな挑戦です!」

――そしてピアノとチェロの生演奏の音楽も見どころの一つです。

浅野「私は、ほぼミュージカルも(経験が)ないんですよ。生演奏の入った舞台に立つことがほんとに数えるくらいの少なさなので、生演奏は私が一番楽しみにしているかもしれません」

中村「実は私はいろんな生演奏を経験してましてね、長唄を主体にして源氏物語を朗読して、自分で長唄も唄い最後はベースも演奏する、そういう舞台を何度かやってるんですけど、これほどナチュラルな受け渡しがあり、こんなに感情移入する作品は初めてなので、とても楽しみですね。ただ今回は音楽にも感情を持っていかれそうで、ちょっと危ないよね、泣かないようにしないと」

浅野「本当にそうですね。私は梅雀さんを前々から本当に素敵な俳優さんだと思っていて、かなりのファンです。今回梅雀さんとご一緒させていただけるのはとても嬉しい。そして私がどんな芝居をしても、梅雀さんなら全部受け止めてくださるだろうという安心感があります」

中村「共演はこれで3回目ぐらいです。夫婦役で共演できるなんて、ほんとすごいこと。ゆう子さんは昔からキラキラした魅力と勢いがあって、とても息を合わせやすいので、この夫婦のリアル感が出せるんじゃないかなと思ってすごく嬉しいです」

――最後にあらためて楽しみにしいていることをお聞かせください。

浅野「星田監督から一緒にやろうとご連絡いただいて、監督の作品ならやりますと二つ返事してしまい、後からこんなにもすごい作品だったと知り、びっくり(笑)とても大きな勉強をさせていただく場所を頂戴したと思っております。私自身、仕上がりが一番楽しみです」

中村「僕も星田さんからこのお話が来た時、ただならぬ熱量がすごくて。僕は星田さんとは1作品しかやってないですけど、僕の結婚のきっかけにもなるような、ほんとに人生をつぎ込んだ作品でした。こんなすごい現場があるんだって、星田さんの現場は熱量がすごいんです。それを経験してるので、その星田さんから久しぶりにやってもらいたいと、キターーーーーーッて!(笑)はい、やります!と。
これはすごいことになるなって、まさにそれが楽しみです」

introduction
たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか
タイトルとなった河野裕子の歌は、二人の出会いの頃に詠んだ歌。
歌人 河野裕子・永田和宏 二人の出会いは、1967年頃、河野裕子21歳・永田和宏20歳、京都の大学生たちが集まって作った短歌の同人雑誌創刊の歌会だった。やがて結婚、河野裕子が64歳で亡くなるまで、四十年にわたりお互いを恋の対象として詠み合った相聞歌、妻を看取った夫が詠んだ挽歌だけでなく、日常の暮らしの中で普段の言葉を交わしながら、歌で心を通わす夫婦の姿、その葛藤などが赤裸々に綴られた夫婦の物語。
亡くなる直前まで歌を詠み続けた歌人・河野裕子と、看取った歌人・永田和宏 二人の絶唱が、心揺さぶられる感動の朗読劇。


概要
朗読劇「たとへば君 四十年の恋歌」
日程:2025年9月17日(水)~9月20日(土)新国立劇場 小劇場
原作:『たとへば君 四十年の恋歌』(河野裕子・永田和宏 著(文春文庫)
上演台本・演出:星田良子
出演:浅野ゆう子、中村梅雀
演奏:ピアノ・西尾周祐、チェロ・中西哲人
音楽:中村匡宏
料金:S席8,000円 A席7,000円(税込・全席指定)
チケット:ぴあ、イープラス、ローソンチケット、アーティストジャパンチケットセンター
問合:03-6820-3500 https://artistjapan.co.jp/
企画協力:文藝春秋
製作:アーティストジャパン

WEB:https://artistjapan.co.jp/performance/ajrt_tatoebakimi2025/