三谷文楽『人形ぎらい』会見レポ 三谷幸喜 吉⽥一輔 ⟪人間にできることで人形にできないことはない⟫

PARCO PRODUCE 2025 三谷文楽『人形ぎらい』が開幕。
2012年に誕生した三谷文楽『其礼成心中』。文楽の伝統と技芸に敬意を評しながら、三谷幸喜の新しい視点と演出で創作した古典エンタテインメントは、文楽ファンはもとより、文楽ビギナーズへも文楽の魅力を伝え、2012年以降も各地で上演を続け好評。
そしてこの夏、待望の新作、タイトルは『人形ぎらい』。時は現代、文楽の劇場を舞台に、主人公は人形たち、役を演じている人形自身のお話。文楽の人形は、俳優と同じように出し物によってさまざまな役を演じる。主役の人形もいれば、脇役専門も。そして人形たちにも、人間と同じようにそれぞれ名前があり、今回の主人公は、脇役の名優、嫌みな小悪党を演じさせたら天下一品の“陀羅助”という人形。
近松門左衛門作『鑓の権三重帷子』(槍の名人で色男の権三&人妻おさゐが、不義密通の濡れ衣にを着せられる物語)。それを演じる権三役の源太&おさゐ役の姐さん&万年引き立て役の陀羅助。陀羅助は憎まれ役ばかりを演じさせられることに不満が爆発し、ついには人形たちが劇場を飛び出し・・・。
再び文楽へ挑む三谷の元に、監修・出演(人形遣い)に、13年前の『其礼成心中』公演の仕掛け人で、その活動を賞して2023 年関西元気文化圏賞 ニューパワー賞を受賞した吉田一輔、作曲・出演(三味線)に、『其礼成心中』でも音楽を担当した鶴澤清介、出演(太夫)に、『其礼成心中』にも出演、2022 年には太夫に与えられる最高の資格である「切語り」に昇格した竹本千歳太夫と、三谷文楽には欠かせない豪華メンバーが揃った。
初日前に取材会が行われた。登壇したのは三谷幸喜と吉⽥一輔。

_明日初日を迎える、今のお気持ち見込みをと聞かれ__

三谷幸喜:前回が13年前、新作の文楽を作ることができました。改めて文楽の世界に入って思ったんですけどね。やっぱりめちゃくちゃ面白いんですよ。こんなに面白いものが世の中にあるのかと、本当に思います。普段は舞台をやっていて演劇の面白さを十分知ってるつもりなんですけれども、それとは全く違う、全然次元が違う。こんなに素敵なドリミーな世界があったんだと改めて感じて、とにかく見たことない人はぜひ見てもらいたいし、とにかく文楽を知ってほしい、良いきっかけになればいいなと思っています。吉田一輔:今、三谷さんがおっしゃっていたように、文楽がこんなに面白いものがあったのかって言っていただける。これは伝統芸能の力だと思います。今、これだけ褒めていただくと、すごいプレッシャーを感じて、、(三谷:本当に面白いんですよ!)期待に応えられるように頑張って努めたいと思っています。

_13年ぶり、待望の新作ということで、本作にかける思いを。__

三谷:本当に面白いですよ。なんでこんな面白いんだろうって思っています。一つあるのは、人形がやっぱり小さいじゃないですか。初めは、お客さんとして初めて見ると、舞台に出てきたときに、人間のやる芝居を見なれてるので、なんて小さい人たちが出てきたんだろう、その後ろにいる3人の黒い人たちは何なんだろうと思うんだけれども、その違和感は最初の30秒ぐらいでなくなって、あとはもう本当に引き込まれるんですよね。小ささにいいなと思って、これが例えば、逆に人形が8メートルぐらいあると絶対この面白さはでないと思うんですよね。小さいながらに必死に生きてる人間みたいなものを感じて、より凝縮された世界観の中に僕らが普段感じている、感情みたいなものがすごく丁寧に表現されている世界なんです。やっぱり文楽を知らないで、生きている人は生きる価値がないんじゃないかっていう程、すごいものだと思いますので、とにかく、文楽を大勢の人に知ってほしいと思い、何か力になればと思っております。

吉田:本当にこれだけ三谷さんに言っていただけると嬉しいです。私たちは300年以上上文楽が続けてきて、私たちが今、受け継いでやっていて、先に伝えていく責任を持って芸の世界でやっています。今回、三谷文楽という新たなジャンルを作っていただいて、非常に楽しい爆笑文楽を切り開いていただきました。そして、我々の古典芸能の世界にいますと、作者と演出が同じで稽古することが本当にないので、三谷さんとやらせていただいているのはいい勉強になっています。この会見の直前まで稽古をしていましたけれども、普段は一つの演目の前に1回しか僕らは稽古をしないんですが、今回はたっぷりと1日9時間10時間と稽古をやって、楽しくやらせていただいて、感動してます。文楽は、ふだん喜劇がなく大体悲しい物語なのですが、全編、笑いに包まれるんですね。

_稽古中のエピソードなど教えていただけますか?__

三谷:(吉田)一輔さんから、人間にできることで人形にできないことはないという話を聞いて、今回の公演のセリフの中に活かしています。でも前回は、本当にそうなのかなって思ったんですが、例えば、水中遊泳とか出来るのかとしてみたら、出来たんですね。だから挑戦みたいな感じで、これはできないだろうと思ってお願いをすると、出来るんですよ。帰ってくるんですよね。今回は、通天閣に登るとか、スケートボード無理だろうと思ったら、全然、一発でやれてました。
稽古は、前回よりも遥かにやりやすかったです。僕がやってほしいことを、人形遣いさんも、太夫さんも、三味線の方も、すごく的確に表現してくださるので、本当にやりやすかったです。

吉田:文楽の新作を作る際にも演出家いないことが多く、自分たちでそれぞれの役の人が、役になりきって役を作っていくのです。俳優さん、太夫さん、三味線さんが、それぞれが作ってきたものを、ぶつけ合って一つの作品にする形なので、三谷さんに教えていただきながら今回も作品を作れることが非常に楽しいです。

三谷:あと僕は2回目なんで、文楽とはどういうものだろう。どういうことをしてもらうと、面白いかを、日頃僕は俳優さんに当て書きをするのと同じように、文楽に当て書きをすることができました。前回は本当に何も知らないで入ったので、例えば、登場人物を10人ぐらい出したんですね。やってみたら、1人の人形に3人の人形使いさんがいるから、舞台上が30人ぐらいになって、もう満員電車みたいな感じなってしまい、これは人数を減らさなくてはいけないなと思って、今回は全部で4人と少なめでやっております。その分それぞれの人間模様や気持ちが細かく作っていくことができたので、そこもまた見どころだと思います。

概要
PARCO PRODUCE 2025 三谷文楽『人形ぎらい』
会期会場:2025年8月16日(土) ~ 2025年8月28日(木) PARCO劇場
作・演出:三谷幸喜
監修・出演:吉⽥一輔
作曲・出演:鶴澤清介
出演:⽵本千歳太夫 他
公演問合:03-3477-5858 https://stage.parco.jp/
企画・製作・主催:パルコ
共催サンライズプロモーション東京
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】

公式HP:https://stage.parco.jp/program/ningyogirai