柄本明 渡辺えり 江口のりこ 佐藤B作 笹野高史 登壇 明治座『また本日も休診 ~山医者のうた~』製作発表会レポ

那須高原の山奥にある診療所で、医師・見川鯛山が村人たちと繰り広げる日常を描いた『田舎医者』シリーズ。作者である見川鯛山が実際に体験した出来事をもとに、豊かな自然と人間の営みを描いた本作が、2021年上演の『本日も休診』から装いも新たに、二度目の舞台化を果たす。舞台は、博多かrあ始まり、明治座、そして、作品の舞台、栃木、出演の渡辺えりの故郷、山形で幕を閉じる。えりさんは、山形での打ち上げの心配はもう、始まっている。
舞台は昭和50年代。那須高原のてっぺんに、ぽつんと佇む小さな診療所。無医村だった土地に「見川医院」を開業した見川鯛山(通称・山医者)は、その生涯を地域医療に捧げ、診察時間は気まぐれなため、「本日“も”休診」であることも多く、村人たちから「ヤブ医者」と揶揄されつつも、貧しい人にも分け隔てなく治療を行い、村の人々に寄り添い続けた。医療に従事する一方で、文筆業を開始し、1964年発刊の『田舎医者』を皮切りに、書籍を多数出版。地方特有の医療事情や、患者との人間関係、医師としての葛藤などを軽妙に書き出したエッセイは、「医療もの」の枠を越え、今なお多くの支持を集めている。
主演・見川鯛山役は柄本明。その鯛山を尻に敷きつつ明るく支える妻・テル子役には渡辺えり。さらに、他人とのコミュニケーションが苦手で山中に一人暮らしの村人・阿久津民代役に江口のりこ、鯛山の悪友・大工の六役は佐藤B作、口が悪く正義感が強い警官・茶畠巡査役に笹野高史。
都内で製作発表会が行われた。登壇したのは柄本明、渡辺えり、江口のりこ、佐藤B作、笹野高史。

挨拶から。
柄本明「たくさん来ていただき、ありがとうございます。『また本日も休診』をやらせていただきます柄本明です。よろしくお願いいたします」

渡辺えり「私、山形出身ですが、東京に上京して、それで影響を受けました諸先輩たちと一緒に同じ舞台に立てるということで本当に嬉しく思ってます。山形出身なので、この設定の山奥、鹿が出てきたりフクロウが出てきたりということを身近に感じながら育ってきた人間なので。芝居をとても楽しんで演じさせていただきたいというふうに思って今から楽しみです」

江口のりこ「たみよ役の江口のりこです。本日はお集まりいただきありがとうございます」

佐藤B作「すごい拍手、ありがとうございます(笑)。2度もやれるとは思ってなかったんですけども、前の芝居の評判が良かったんでしょうね。全然忘れてますけど(笑)、最近、忘れることが多くって(また、笑)えりさんや江口さんに参加していただいてまたどんな芝居になるのか、小劇団出身の我々が、大きい明治座に待たせていただくというだけで、もうね親父とお袋に見せたかったですね。私はえりさんが山形、私は福島でございますけれども、田舎の方からも大勢駆けつけて東京に来ると思います。いつまで芝居できるかわかりませんけど、精一杯頑張らせていただきます」

笹野高史「映画俳優の定岡という話があって、演劇青年、演劇少女がそのまま大きくなったような演劇界の方とのかわかりの中でやらせていただきます。とてもプレッシャーがかかっております。稽古もとても楽しいなと思って。素敵な話になると思いますのでよろしくお願いいたします」

それから質疑応答。新作、また新しく参加する渡辺えりと江口のりこに対しての期待など。

柄本明「あれから何年になるんでしょうか?(4年との声)4年ですか、それぞれ笹野さん…古いんですよ、なんていうか、同窓会と言うか…そういう集まりたいなみたいで嬉しいです。今回はまたえりさんですからね、この人も古いです(笑)。あとは江口さんですね。社内の劇団なんですよ。東京乾電池ってもうなくなってると思ってる方が多いんですよね、まだある(笑)。また、一緒に舞台が明治座、博多座でできるなんていうのは大変に光栄なことだと思って、まあとにかく一生懸命やりますんで!」

佐藤B作「その前のね、全然覚えてないんだよ(笑)。何か笑いを取るお笑いをとろう、いっぱいいろいろ考えてやってたので、演出も田村さんだったり、台本もそういう感じの色が強かったような気がします。今回田村くんなので、ちょっとより演劇的になってるかなという感じはしますね。稽古はどうなることでしょうか、暑いから…。台本通りやれと言われても覚えられない、戦いだなー。全員千秋楽まで生きてりゃいいんですけどね(笑)。その怖さもありますからね。1人欠け、2人欠け、この暑さもありますしね。なんか命をかけてやる演劇という感じでしょうかね、私としてはね(笑)…色々その辺は乗り越えて、すごい面白い芝居になると思います」

笹野高史「B作さんもおっしゃっていましたけど、ちょっとそんなようなきらいがありまして。僕は原作を読んでイメージして、お芝居とちょっと違う所で狙っちゃったなと思って。今回は正当な原作に近いような作品に…それはとりもなおさず、渡辺えりさんと江口のりこさんが入ってきまして、原作者さんもいらっしゃるもんですから、何か今回素敵な作品になる予感がするぞと思って、私は今とっても期待しているところでございます。柄本さん、俺が思ってたのとちょっと違う芝居なっちゃったなということだったんだよね、初演の時にね…でも長生きしててよかったね、ご褒美演劇とでも申しましょうか?まさかこの3人と一緒にできる。もうどんどんどんどんシリーズになったら面白いねって。どこって誰が先に死ぬかみたいな気がする(笑)、あいつは3作目で死んじゃったんだけど、(『もうやめなよそのすぐ死ぬ死ぬって』という声が)って話が(笑)」

新しく参加する渡辺えりと江口のりこにオファーが来た時の感想と役柄についての質問。

渡辺えり「お客様で見に行ったんですね。私は号泣しちゃったんですね。最後夫婦に抱き合うところ、止まらなくなっちゃって。そんな話を1時間ぐらい終わった後であって、それからなんかしばらくしてし下北沢の喫茶店でばったり会ったんです。そして『えりちゃんがやったら面白い役だよ』みたいなことを言うんですよ、それで次の話が本当に来ると思わなかったじゃないですか。もうすぐやろうと思っていいですってOKしたっていうそういう経緯があって。台本を読ませていただいて、それで周りにすごい個人的な皆さんがいっぱい。もう笑わせる方がたくさんいるんですよ。ちょっとあんまり何もせずに、美人妻をやるような役なのかなと…台本を読ませていただいて思いました。それで柄本さんのすごく色っぽいところも、いろいろ知ってるので、あの色気があるときとか、だからそういうきちっと見守って受け入れて、それでいうとこは言うっていうそういう奥さんでちょっと美人な感じで今回やってみようかなというふうに思ってます(笑)。笹野さんとは夫婦役はやったことがないんです。けど、私が孫でお爺さんって役、昔から変わらないんですよ。私のおじいさん役やっても普通だったっていう(笑)、今はどういうふうに見えるかわからないんですけど、だから夫婦役はやったことがないんですけど、そういう楽しみです。江口さんは養成所のときから見てるんです、養成所の発表会からで、一番最初に見たときは、秋吉久美子さんみたいな美形の2枚目の雰囲気なんですよ。それがだんだん何が面白い感じになってた、その歴史を見ている者の1人で、柄本さんがすごくかわいがっている、秘蔵っ子の1人で、メキメキと成長している姿を、若いときから見させていただいてるんで、今回やらせていただく、とても楽しみです」

江口のりこ「このお話をいただいたときに、まず明治座だったり博多座だったり、歴史のある劇場でとても嬉しいなと思いました。先輩方がすごくて、正直ちょっとしんどいなと思ったんですけど、絶対に勉強になることがたくさんあるし、日に日にに楽しみだという気持ちが大きくなっています。日々稽古の中で自分がやるべきことを見つけて、毎日を楽しんでやっていきたいと思っています」
江口のりこが言い終わったところで渡辺えりが「今回ふくろうや熊など動物がたくさん出るから、動物役で出たいと思わなかった?」と聞いたところ、「思わなかった」ときっぱり(笑)

また原作や現在の三河泰山さんを知ったきっかけや作品についての考えなど

柄本明「風(かぜ)ちゃんと呼ばせていただきます。あの風ちゃんにお友達がいまして、那須に住んでるんですよ。それでそこに行ったら別荘がありまして、そこに滝沢先生の本は、たくさんあった。それ読んで、そしたらお友達の泰山先生が、その方が面白いんで。那須の別荘に遊びに行ったときに、これ面白いな、そしたら前にはもう森繁先生がTBSラジオで対談、先生もいろんな朗読をされてるんですよね。それ僕たまたま聞いてたんですよ。毎回じゃなかったんですけど、そんなことがあって、なんか三河泰山さん本当に知る人ぞ知るっていうか、それで御本が素晴らしいんですよね、そんなことで何か広がってたんですね。それがどういうふうにここまで来たのかっていうのはよく覚えてないんですけど…でもやっぱり三河先生の本の大きさですね。これは自分たちがなくても、どなたかがやっぱりおやりになったんじゃないかって」

また役作りとしてゆかりの地を訪れたのかどうかを聞かれて。

柄本明「今回は行ってないんですけども、今日三河泰山先生の息子さんが…先ほどちょっとご挨拶、診療所もあるんですよ。残念ながら僕は泰山先生にお会いできなかったんですけども、泰山先生がやっていらした診療所は今使ってないんですけども、自分がやっぱりそこの診療所のお医者さんになれるのかなっていうのは、それは今回のもちろん前回もあったんですけども、泰山先生という人間の大きさ、はっきり言ってできないと思います。だから自分なりにやるしかない。皆さんと一緒に楽しくて、こうして、作品が泰山先生の言葉がお客様に伝わればいいんじゃないかな。ぜひ、皆様、足を運んでいただきたいと…ちょうど先生の没後20年でもありますので地元でも講演があります」

それからファンクラブ会員からあらかじめ募った質問、地方公演での楽しみなど。

柄本明「博多、福岡、ラーメン、あそこの喫茶店行こうとかねはい、あそこ歩こうとかね」

渡辺えり「私、明治座さんでやらせていただくことが生まれて初めてなんです。福岡の劇場の真ん前に焼き鳥屋さんがあるんですよ。そこにはジュリーの写真が貼ってあるんです。そこで焼き鳥を食べたい…また千秋楽が山形県民会館なんですよ。そこで、みんなで打ち上げで山形の郷土料理をみんなに食べてもらいながら、生ビールで乾杯。あとお蕎麦が名物、蕎麦をみんなで食べながら、山形で最後の打ち上げをするのは本当に楽しみです」

江口のりこ「えりさんがおっしゃってたように食べるのも楽しみですし、この先輩方一緒に過ごす日々、稽古が楽しみです」

佐藤B作「博多、ラーメンっていうよりもお寿司かな?寿司屋絶品ですからね。それに美味しい日本酒が本当にもう幸せですね、辛口の純米酒(一同、笑)。山形は、”山形ふくろ”というおでん屋さんがね、そこのお母さんが親切な方で、亡くなっちゃったんですけども。どこ行ってもね、もう芝居するよりも食べ物っていう感じで、芝居は二の次三の次みたいな(笑)。私も福島なので、いろんな人と新しい方と出会う。江口さんみたいな新しい方に出会うことも楽しみの一つですね」そのほか、「もつ鍋」「温泉」などの意見が。

最後にお客様へのメッセージ。

柄本明「本日はたくさん来ていただきましてありがとうございます。B作さん、笹野さんは、これはとにかく、同窓会でございます。昔からの仲間でこうやって話ができるのは僕としては大変嬉しいなという感じです。今、都会の喧騒の中で何かいろんなことがあって疲れてる人たちに安らぎを届けられればいいんじゃないかなと思っております。よろしくお願いいたします」


 

あらすじ
昭和50年代、那須高原のてっぺんに建つ見川医院。医師・見川鯛山(柄本明)は地域医療に尽力…するはずが、診療所にはまたもや「本日休診」の札が…。今日も悪友の大工・六さん(佐藤 B 作)と狩猟やパチンコ三昧で、仕事はそっちのけ。おかげで茶畠巡査(笹野高史)や村人たちには「ヤブ医者」と呼ばれる始末なのである。そんな鯛山を尻に敷きながら、明るく支えるのは、勝気で情に厚い妻・テル子(渡辺えり)。村には、山奥で一人暮らしをする阿久津民代(江口のりこ)、村一番の貧乏人である茂(林翔太)と妻・ナツ(市川美織)など、ひと癖もふた癖もある住民たちが暮らしている。
そんな中、村を揺るがす騒動が――。豊かな自然を誇る鷲ッ羽山に、リゾート開発の話が持ち上がったのだ。山の売却に反対する民代は、村人たちから疎まれるが、鯛山は彼女の自然への想いに心を動かされる。一方で、村の未来を考えれば開発も無視できず、葛藤の日々が続く。広大な高原に四季が移ろいゆく山村で、繰り広げられる笑いと涙の人間模様とは…。

音楽:パスカルズ
独特の開放感を持つサウンドを奏でる 13 人編成のアコースティック・オーケストラ。1995 年 1 月、ロケット・マツを中心に結成、歩き始める。1997年11月、1st アルバム 『こりすちゃん・でおーる』 を発表。2001年2月、フランスの前衛音楽家パスカル・コムラード presentsによるCD『Pascals』がヨーロッパ、アメリカ、アジアで発売される。フランスではル・モンド紙、カルチャー誌「テレラマ」「レザンロキュプティブル」の月間推薦盤シールをトリプル受賞。これまで 7 回の欧州ツアーと 1 回のオセアニアツアーを行う。 映画 『さかなのこ』 やテレビドラマ「凪のお暇」など映画・ドラマ作品の音楽を多数担当し、ホールコンサートも積極的に行う。今年30周年を迎え、言語や文化、世代を超えて注目を集めている。

概要
公演名:『また本日も休診~山医者のうた~』
原作:見川鯛山「田舎医者シリーズ」
脚本・演出: 田村孝裕
音楽:パスカルズ
出演:
柄本明 渡辺えり 江口のりこ 佐藤B作 笹野高史
林翔太 市川美織 松金よね子 花王おさむ 矢部太郎 星野園美 佐々木春香 大西多摩恵
西本竜樹 中田浄 春可直子 上原奈美 西村喜代子 小島久人
公演日程
福岡:2025年 10月 11日(土)~10月 15日(水) 博多座
東京:2025年 10月 23日(木)~11月 2日(日) 明治座
宇都宮:2025年 11月 6日(木) 栃木県総合文化センターメインホール
山形:2025年 11月 22日(土) やまぎん県民ホール大ホール
企画・製作:明治座
企画協力:ノックアウト
公演公式HP:https://www.meijiza.co.jp/info/2025/2025_10/
公式X:@meijiza_theater