竹中直人×生瀬勝×倉持裕 竹生企画第四弾 『マイクロバスと安定』取材会レポ

竹中直人×生瀬勝久。強烈な個性を持つふたりは、確かな実力と印象深い風貌を併せ持つ、それぞれが唯一無二の俳優。
その二人が「劇場」という場所で互いに火花を散らし、ガッチリとタッグを組む。
2025年11月、演劇の聖地・下北沢の本多劇場で新作公演を上演する。
竹中直人と生瀬勝久の演劇ユニット・竹生企画は、「一緒に芝居づくりを」と熱望した倉持裕 を劇作・演出に迎え、2011年に始動。共演者には毎回、二人がぜひ舞台で共演してみたい俳優たちを迎えるという趣向である。
今回、その呼び掛けに集結したのは飯豊まりえ、戸塚純貴、サリngROCK、松浦りょう、浜野謙太。
都内で取材会が行われた。登壇したのは、竹中直人と生瀬勝久、そして作・演出の倉持裕。

まずはこの公演が決まった経緯。
生瀬勝久は「竹生企画は大体4年おきくらいに上演していたのですが、コロナ禍もあって今回は7年ぶりです。2年ほど前に、また竹生企画をやりたいねと動き出しました。
竹生企画は私が言い出しっぺですが、竹中さんと2人芝居をやりたいと直談判したところ断られまして。他の役者も出るんだったらいいよと言うことで始まった企画です。私はその時“竹中さんとお芝居ができるだけで、幸せなので”と伝えました。1回で終わるかなと思ったら、もう4回目になり、今回7年空きましたけども、もっと続けていければ、こんな幸せなことはないと思っております」とコメント。

続いて倉持裕は「経緯は今、生瀬さんがおっしゃった通りです。(今回の公演)始まったのはコロナ前ですが、会は盛り上がりましたよね。竹生企画以外にもコロナ禍でいろんなものがなくなりました。それも本番直前に、ということもあって。なくなることに慣れたって言うんでしょうか、それが当たり前になって。だから竹生企画、3回ってキリがいいし、このままなくなるかな?と思ったら、2年ぐらい前に『やりましょう』と…すごく嬉しかったのと、一回諦めたので、また続けられるんだと喜んだ記憶がありますね」とコメント。
竹中直人は「『火星の二人』が7年前…7年経った感じがしないな、コロナの影響もあるのか…。長い時が経ってしまったけれど再びこの時間が設けられたことは本当に嬉しいです。来年はとうとうぼくも70歳のおじいさん。「老たる者は去れ!」の中、倉持さん、生瀬さん、そして新鮮なゲストを迎え、とんでもない舞台になるだろうとわくわくしています!そして、ステージ数もこんなに回数ができるんなんてとても嬉しいです。何度も何度も繰り返し出来る舞台は最高です。」と嬉しそう。

見所としては生瀬勝久は「毎回ゲストにいろんな方が出演してくださるのですが、このユニットに出た後は『売れる』というジンクスがあるみたいです。きっと皆さん私と竹中さんの企画に参加するのは結構勇気がいると思うんですけど、私も竹中さんも演劇に対してとても真摯です。お芝居ってこんなに楽しいんだという実感を味わってもらえるユニットだと思うので、ゲストの方々と私たちのコラボが見所になると思います」と語る。
倉持裕は「生瀬勝久と竹中直人が長時間ぶつかり合う、2時間ぐらいの芝居で、劇中2人でいる時間の割合は過去3作も高いです。この2人が揃う機会は映像でも舞台でもなかなかない。2人が舞台の上でやり合う、セリフを掛け合う様は、ここでしか見られない。僕自身はずっとそこが魅力だと思っています。稽古でこの2人の掛け合いをずっと見ているだけでも楽しいんです。しかも竹生企画初めての本多劇場で今までより客席との距離が近い。そのおふたりの芝居がダイレクトに客席に届く、あふれる、響くんだろうなと思ってるので、そこは今回の見どころだと思います」とコメント。
確かにこの2人が同じ舞台に立つ、さらに豪華で実力のあるゲストが出演、というのも見どころポイント。
竹中直人は「あと3年で小惑星が地球に衝突して地球が滅亡するという物語です。もう将来というものがない。その現実を目の当たりにしてどう生きてゆくのか…それでも今まで通り生きていこうとする人間たちの日々を描いていきます。かなりの緊張感が強いられる。それを倉持さんがどう描くのか…。それでも笑いがあり、コメディー要素は満載。そして倉持さんの描く物語にこの顔ぶれが集まった。チラシの写真を見ると、なんて独特なキャスティングだと改めて思いました。役者1人1人の【顔】から目を離せない、どくとくな舞台となるでしょう」とコメント。

さらに「サリngROCKさんがポスターの撮影をした時、倉持さんにそっとつぶやいたそうです。『私はお芝居が下手なんです』と。『ブロッケンの妖怪』(竹生企画/2015年)で佐々木希さんに参加ていただいたとき、希さんも下手で素晴らしかった。ただそこにいる。演じようとしない豊かさ。その佇まいがとても素敵でした。芝居なんて上手くなったらつまらないと思います。ぼくもSNSで「下手!死ね!」と言う書き込みをよく見ます。それでも生きてゆくのがお芝居です。演劇をやらない役者は信じないですね。戸塚くんには昔、ぼくの若い頃を演じて頂いた事があります。戸塚くんは今めちゃくちゃ旬でましょう!!どんなお芝居をするのか、とても楽しみです。飯豊まりえさんには、高橋一生くんが観に来たら絶対に嫉妬するような舞台をやってやろうぜ!と日々伝えています」
共演は飯豊まりえ、戸塚純貴、サリngROCK、松浦りょう、浜野謙太、どういう科学反応が出るのか、そこはお楽しみ。

作品のテーマや物語については倉持裕は「2年ぐらい前に3人とプロデューサーとで会って『次はどんな話、やりましょうかね』という打ち合わせがあり、竹中さんと生瀬さんが、すごい口喧嘩する芝居がやりたいって案が上がって。ずっとちっちゃいことで口喧嘩するみたいな芝居がやりたいっていうふうに…生瀬さんはそのとき宇宙船とおっしゃってましたね。帰りの燃料がない行くことしかできないっていうシチュエーションはどうだろうというような…雑談というか、ざっくばらんに話した内容から何となく発想していったんです。本多劇場でやることが決まって、あの劇場は日常的な芝居が合う…抽象的なセットよりも、具象的なセットを建てた方が合う…その日常的なセットの上でおふたりが喧嘩する…まあ大体今までの3回も喧嘩してるんですけど(笑)。もっと根が深い、二、三十年前のことでずっと恨んでいる、許さないからなって言ってる2人の関係を描きたいなって思ってまして。でもちょっとそれだけじゃ要素が足りない…何かないかな?と考えている時に竹中さんから「世界の終わり」というアイディアをいただいたんです。小惑星の衝突によって世界が滅亡するというストーリーはすでにジャンルとして確立されていますよね。以前から竹中さんにはそのジャンルの映画をいくつも紹介していただいていたんです。小惑星衝突までというリミットが設けられていれば、一見日常的なドラマに大きな負荷がかかる。もう世界が終わるというのに口論を続ける2人の様はコメディにもなる、とそんな風に構想を膨らませて行きました」とコメント。

そこに生瀬勝久が「やっぱりシチュエーションと人間関係がかけ離れすぎている、4作通じて言えることだと思います、それをよく一緒にやろうとするなという…例えば男同士の因縁がテーマだったら、多分ものすごく緻密な作品を書かれると思うんですけど、そこにとんでもないシチュエーションを持ってくる。竹生企画の場合はそれが顕著で、そういう発想って、本当に独特な感性、倉持さんって一体どういう人なんだろうって。とても常識のある穏やかな方なのに、なんでそれ持ってくるんだろうっていう…その辺はあんまり深掘りしないでおこうかなと思うんですけど(笑)。竹生企画はそれが売りにもなってきていますね」と言えば竹中直人が「ぼくは倉持さんの演出する佇まいが好きです。倉持演出の稽古場のムードがたまらないですね。繰り返し繰り返し稽古しながら、心の中にあるリズムが生まれてくる。役作りと言う言葉は大嫌いです。稽古を繰り返しても答えはどこにもない。答えを出すための稽古ではないですからね。感情のリズム、そしてスピード感です。倉持さんが描く世界をどう稽古場で掴んでゆくか…。稽古の日々は毎日胸が締めつけられます。とても苦しくつらい。でもそれが演劇の魅力なんでしょうね」と語る。
また、初めて竹生企画を観劇する方に向けて生瀬勝久は「私は生まれて初めて観た演劇がきっかけでこの世界に憧れて、ずっとそこから続いています。私にとって人生の転機となった瞬間がその演劇との出会いだったんですね。今回初めて竹生企画を観て、私のように演劇にハマるのかハマらないのかはわかりません。その人のそのときの気持ちや体調にも左右されるので。でも、自分がそうだったように誰かにとってのそういうものになりたいっていう気持ちはあります。そのために一ヶ月稽古をして、いろんなことを考えて、劇場に一つの世界を作り上げる作業を一生懸命やります。駅に降りて歩いて、劇場で観て、帰る。その一連の行動を楽しんでいただきたいです。ぜひ何も勉強しないで来てください。」と言えば、倉持裕も「僕も同感です」と言い、「何も勉強しないで来る。いや本当にそうすべきだと思って。初観劇なら、もう何にも考えないで見た方がいいですよ、どんな話なんだろうとか、今言ったセリフはどんな意味なんだろうとか、絶対考えない方がいいです(笑)。目の前で起きてることをそのまま感じるだけでいいんです。竹生企画はもちろんお客さんに話しかけたりなんてしませんし(笑)俳優たちは舞台上で勝手にやっている。その、大勢に見られていながらも客席とは無関係に立っている人間たちを観る、というのは劇場でしか得られない感動的な体験だと思います」竹中直人も「人生のためになることは一言も言わないかな(笑)。」と語り、さらに「出演者の【顔】そして【姿、形】を本多劇場という空間で見届けると言うのがたまらないですね。生瀬勝久の【顔】の凄さを改めて知る事になる。とにかく、とんでもない人たちが集まったと思います。それが全てです。この作品に集まった7人をぜひ観に来て欲しいです」

作品の設定が3年後に地球滅亡、もし、その状況になったとしたら?の「IF」。
生瀬勝久は「私はまず3年後に地球が滅亡するということを信じないです。この世に『絶対』はないと思っています。明日、急になくなるかもしれない。それが日常なんです。今も続くとは思っていないですね。」倉持裕は「僕は理想としては今まで通り生きたいなとは思ってるんですけど(笑)。今だって全員何十年後かに死ぬのは確実じゃないですか。だから、どうなんだろう…僕があと30年生きるとしたら、あと3年だと老化のスピードが早まって一年で10歳ずつ老けてくみたいな感じの変化が起こるのかな?とか」とコメント、それに対して竹中直人は「昔の映画や、ドキュメンタリーを今改めて観ると、昔の大学生はみんな老け顔ですよね(笑)。今は全然若いです。倉持さんがおっしゃる通り、3年後ってなったら一気に老けていくような気がします。人間性がむき出しになっちゃいそうでとても怖いです。変わった形のホチキスを沢山集めて川に流すような行動をしちゃいそうで恐ろしいです」と語る。
最後にPR。
生瀬勝久「今まで3回やってきましてものすごく楽しい作品です。新しいお客様もお待ちしております。下北沢はとってもいいところなので、ぜひ演劇に触れてみてください」
倉持裕「重複しちゃいますけど、本多劇場という客席と舞台が近い劇場で、竹中さんと生瀬さんの2人が芝居を…長時間ガッツリぶつかる芝居が観られるのは、この竹生企画だけなので、貴重だと思っていますし、それを楽しんで欲しいなと思います」
竹中直人「竹生企画、第四弾まで続けられたことは本当に皆さんのおかげです。感謝していますぜひ、ぼくたちのお芝居を生で体感して頂きたいです!」

あらすじ
「終わり」がちらつく
小惑星の衝突によって世界が滅亡すると発表されてからしばらく経って、
だったらこれまでしてこなかったことをして生きようという者と、
これまでと変わらず生きようとする者とに分かれ、それぞれ別々のブロックで暮らすことになる。
舞台は後者のブロックにある一軒家。
滅亡までは約三年。
「終わり」が目の前をちらつくたびにそれまで自分でも聞いたことのない唸り声を漏らしてしまうけれど、それでも「いつもどおりいつもどおり」と今までにない星がひとつ増えた空の下で生きる人々の物語。

概要
竹生企画第四弾 『マイクロバスと安定』
作・演出:倉持 裕
出演:竹中直人 生瀬勝久 飯豊まりえ 戸塚純貴 サリ ngROCK 松浦りょう 浜野謙太
公演期間・劇場
2025 年 11 月 8 日(土)〜30 日(日) 東京 下北沢 本多劇場
2025 年 12 月 5 日(金)〜7 日(日) 兵庫 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
2025 年 12 月 10 日(水) 広島 JMSアステールプラザ 大ホール
2025 年 12 月 13 日(土) 熊本 市民会館シアーズホーム夢ホール
2025 年 12 月 19 日(金) 盛岡 トーサイクラシックホール岩手 大ホール
2025 年 12 月 21 日(日) 久慈 久慈市文化会館アンバーホール 大ホール
2025 年 12 月 23 日(火) 青森 リンクステーションホール青森 大ホール
2025 年 12 月 27 日(土) 長岡 長岡市立劇場 大ホール

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撮影(主催者提供):石阪大輔