本作品 著者 畠中恵 、シリーズ累計発行 800 万部を超える「しゃばけ」シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞。今回舞台化する「若様とロマン」は戦争が近づいてきた明治の世 、戦争を避けるべく「お見合い」に奮闘する元幕臣 警官たち“若様組” 面々を描いた「若様組シリーズ」3作目。 「若様組シリーズ」 舞台化1作目となる「若様組まいる」 、全編ライトでポップな演出で、2作目となる 「若様組まいる〜アイスクリン強し〜」 “スイーツ”の 香りを使った新しい演出でどちらも好評であった。 出演者に 若手実力派 入江甚儀、宮﨑香蓮、原嶋元久等に加え、女優としても活躍する市川美織、栞 奈、高柳明音(SKE48)、そしてキャラメルボックス 岡田達也等 ベテラン俳優を迎え、過去最多豪華 な出演者。脚本・演出 、前作に引き続き、「拙者ムニエル」主宰として劇団公演や外 部公演など多くの 作品(「けものフレンズ」「私の ホストちゃん」「ママと僕たち」など)を手掛ける村上大樹。
また、2018 年は明治元年(1868 年)から起算して満 150 年にあたる節目の年。会場となる三越劇場 、文化 遺産にも登録されており、歴史を感じる豪華な内装が特徴。舞台を観て楽しむ だけでなく、明治の世に入り込んで楽しんでいただけるよう、全公演を通してドレスコード特典や、イベント としてアフターティーパーティーなども用意されている。
三越劇場の装飾、まるでこの作品のためのようで、舞台後方には色とりどりの傘が華やか、雑踏の音、汽笛、列車の音、馬のひずめの音など明治時代の街の音で開幕。いきなりワッフルが登場、「こんにちは!ワッフルです!時は明治24年」という。明治維新が過ぎ、日本がちょっと落ち着いたタイミングだ。真次郎(原嶋元久)の店も開店して1年ほど経過。若様たちの日常は交通整理に道案内、旗本の出身とはいえ、働かないと生きていけないので、巡査の仕事をこなしている。皆、お腹がすくようでついつい真次郎の店に行き、つまみ食い。つましくも楽しい毎日。そんな折、戦争が始まるかもしれないという知らせが入る。若様たちに試練が!それは・・・・・・なんと「お見合い」!開戦へと突き進む一派の意向を止めようと大成金の小泉琢磨(岡田達也)が画策したのだ。ところが女性には奥手の若様たち、果たして?真次郎、若様たちの頭、長瀬健吾(入江甚儀)、おきゃんなマドンナ・小泉沙羅(宮﨑香蓮)の淡い恋の行方は何処に?というのがだいたいの流れ。
今時の『婚活』と違い、いわゆる『大人の事情』が優先されるのがこの時代。自由な恋愛に憧れても・・・・・なのだが、園山 薫(宇野結也)はいきなり小泉沙羅の同級生が見合い相手となったりして慌てふためく。心の底で思う「幸せになりたい!」でも、ささやかなその願いはなかなか難しい。それをどじょうすくいに例えたり(笑・捕まえようと思っても「するり」と・・・・・・)、そんなドタバタをコミカルにスピーディに魅せる。
内藤大希演じる富士村秀麿は「LOVE」を説く。内藤大希は得意の歌で朗々と聴かせるので、もうショーストッパー!このお見合い、恋愛すったもんだにちょっとしたミステリアスな事件も絡む、軍に納品されていた小麦粉の品質が落ちたことが発覚、そこには・・・・・・。また小ネタも多く、小沼(伊崎龍次郎)と小山(安川純平)の取り違え(身長も近いのでなおさら!)、そんなドタバタをスマートに、どんどん展開。全てのキャラクターに見せ場もあり、そして人生と生き様がある。真次郎のビスケットで一発当てた牧 忠行(和合真一)、次の一手は???気になるその後もしっかり。そして、その顛末は?
見所も多く、もうスイーツのフルコースのようで、甘い話にちょっと酸っぱい話、ほろ苦い話にとろけそうな話、通路も使ってのエンターテイメント、細かい掛け合いも楽しく、笑って笑って、最後にちょっぴりジーンと・・・・・・・帰りには思わず・・・・・・スイーツが食べたくなる1幕物!上演時間は約2時間、 アフターティーパーティーのある公演もあるので!
なお、ゲネプロ前に囲み会見が行われた。登壇したのは、入江甚儀、宮﨑香蓮、原嶋元久、宇野結也、井澤巧麻、安川純平、伊崎龍次郎、森田桐矢、岡田達也。
入江甚儀は「若様組』第3弾、今回でラストになります!」約2年、同じ役と向き合い、感慨深い様子。「この作品は、同じ役を違うキャストが演じたりと特殊な3部作ではあると思いますが、でも第1弾、第2弾と約2年間、皆が全力でやってきて、こうして第3弾を迎えることができたことをうれしく思います」と挨拶。大抵はキャストが固定されていることが多いが、この作品は同じキャラクターをシリーズであるのに違う俳優が演じることがあるので、それもまた楽しみの一つ。さらに「お客様に明治という戦争が起きる前の平和な時代を、『こういう時代もあったんだ』と堪能してもらえたら」と語るが、この作品で描かれる明治時代は動乱の明治維新が過ぎ、日清戦争が起こる前のほんのちょっとの平和な時。若様たちは維新の動乱を知らない、いわば『戦後生まれ』の若者たち。そして「僕たちは、この完結する物語を最後まで演じきりたいと思います」とコメント。「6人の若様のまったく違う恋愛模様が描かれているので、『この子の気持ち、わかるな』と(共感できる登場人物を)見付ける楽しみ方もあります。そういった面でも楽しんでいただけたら」と語るが、この6人の恋愛の捉え方も異なるので、ここは注意してみたいポイント。そして「戦争が起きる前の平和な時代を堪能していただいて!」とPR。
全てのシリーズで小泉沙羅役を務めた宮崎香蓮は、「この役が大好きでした」と言い切る。「女性の地位が低かった時代に、自分の意見をはっきり言って前に進む沙羅の姿が、今の時代にも通じるところがあると思う」と分析。ラスト近く、沙羅は思い切った決断をする。続けて「今回、女性キャストも増えて華やかなシーンもあるので、そこにも注目していただけたら」と見どころを挙げたが、乙女が寄り集まってワイワイするシーン、女学生姿で踊るところもあるので、ここは文句なく楽しい。
そして、初出演、皆川真次郎役を演じる原嶋元久は、「3作目から参加の僕たちは、プレッシャーと真正面からぶつかって、はね返して……。とてもいいものに仕上がったなという・・・・・このメンバーじゃなかったらできないところまで完成したという自信・・・・・・もう自信しかないので!劇場で確かめてもらいたいです」と意気込むが、真次郎役が板についており『あれ?ずっといた?』ぐらいの仕上がり。お菓子作りの手つきもなかなか。
続いて宇野結也が「僕が演じる園山薫は、一番恋愛から遠く見えるんですけど……その男がいざ女性を前にして、どのように変わっていくかが見どころになります」と語るが、その慌てふためく様子はちょっと笑える。
福田春之助役の井澤巧麻は「盛りだくさんの楽しく、ミステリーもあり、泣けちゃうところもあり・・・・・・・今回、若様皆がお見合いをする中で、僕はひとり既婚者として皆を見守る役。その役割を果たしたいなと思います。」と語る。見合いにあたふたする若様たちの中で一人落ち着いた感じを漂わせる。
小山孝役の安川純平は「稽古でやったことを全部出せるようにがんばっていきたい」、小沼武一役の伊崎龍次郎は「この作品は時代は変われど恋と愛という普遍的なものを描いていますので、しっかりと恋愛を楽しんでいきたい」とコメントしたが『小山、小沼』の掛け合いはもう笑いっぱなしのシーンに。
今回初登場するキャラクター・加賀三太郎役の森田桐矢は「1、2作目にはないキャラクターなので、先輩たちの胸を借りて、今まで稽古したことをのびのびとできればいいなと」と少し緊張気味。
そして小泉琢磨役の岡田達也は、何かアドバイスとかしましたか?の問いかけに対して「いや〜特にはしてないです」といい「お芝居だけでなく、舞台セット、そして衣装も素敵なので、その辺も楽しんでいただけたら」と語った。また「この時代に生きた若者たちの群像劇です。どう生きてきたんだろうということを描いています」とコメント、長瀬健吾、小泉沙羅、メイン・キャラクターはいるが、全てのキャラクターのバックボーンや思いも丁寧に描いており、感情移入もしやすい。
撮影タイムでは和気藹々で座組の良さも感じさせる。若様シリーズのラスト!、江戸時代から粋な街として栄えていた日本橋、超老舗のデパート、三越の中にある三越劇場で、とびきりのスイーツな物語を!
【概要】
舞台「若様組まいる~若様とロマン~」
原作:畠中恵「若様組まいる」(講談社文庫)「若様とロマン」(講談社刊)
日程:2018年10月6日(土)~10月21日(日)
劇場:三越劇場
出演者:入江甚儀 /宮﨑香蓮 原嶋元久 宇野結也 井澤巧麻 伊崎龍次郎 安川純平 森田桐矢 /
市川美織 栞菜 高柳明音(SKE48)(Wキャスト) 小槙まこ(Wキャスト)/
和合真一 山口大地 小多田直樹 角島美緒 斎藤直紀 綾乃彩 /内藤大希 鎌苅健太 岡田達也 他
*チケット価格:全席指定8,500円(税込)、 アフターティーパーティーのある公演10,000円(税込・洋菓子付き)
*主催:株式会社メディアミックス・ジャパン
公式サイト: http://www.mmj-pro.co.jp/wakasamagumi/
公式ツイッターアカウント:@wakasamagumi
※宮崎香蓮の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記。
取材・文:Hiromi Koh