ワタナベエンターテインメントDiverse Theater 第二弾 舞台 『Too Young』が紀伊國屋ホールにて開幕した。
「Diverse Theater」は、その名の通り「多様さ」をコンセプトに、様々なクリエイターやプロデューサーとのコラボレーションを通じて、既存の演劇の枠に囚われない表現を探求するプロジェクト。
今作「Too Young」では、独特の世界観で注目を集める劇団チョコレートケーキの古川健が脚本を手がけ、演出は同劇団の日澤雄介が担う。
物語の舞台となるのは、現代の若者文化を象徴する場所として知られる新宿歌舞伎町の“トー横”。このリアルな舞台設定が、物語にさらなる深みと現代性をもたらす。
主演を務めるのは数々の舞台に出演し、実力派俳優として活躍の場を広げている宮﨑秋人、また、現在人気急上昇中の綱啓永、そして確かな存在感を放つ朝海ひかるらが顔を揃えた。
トー横キッズ、トー横、名前は聞いことがあるという観客も多いことだろう。トー横キッズとは、東京都新宿区歌舞伎町の新宿東宝ビル周辺の路地裏に集まる若者たちのコミュニティ。
舞台の始まり、駅のアナウンス「新宿、新宿、ご乗車ありがとうございます」電車の音、場面は喫茶店、椅子が少々レトロ感あり、「亀山さん?」「初めまして」と挨拶。

興信所の調査員である本郷(宮崎秋人)は依頼人(朝海ひかる)に会う。依頼というのは死んだ娘の生きた痕跡を辿って欲しいというもの。「母親は娘のことを何も知らない」と泣く、無理もない。「そういう親はたくさんいますよ」と本郷。そして調査に乗り出す。

壁の落書き、いかにも、な風景、若者たちがたむろしている、笑い合ったり、スマホを見たり。繁華街なら見られる光景。そこへ本郷がやってくる。聞いてみても「何にも知らない」と若者が答える。

彼はジャック(綱啓永)、この界隈の顔役。色々と調査するうちに最初はわからなかったことがだんだん見えてくる。だが、調査はスピーディーというわけではない。若者たちと接触し、また依頼人の元夫(玉置孝匡)にも会う。「家庭を顧みない仕事人間」といい、「自分を責めている間はあの子の父親でいられる」ともいう。


家庭での人間関係、親子、自分の居場所、自分らしくいられる場所を求める若者たち、寂しさを紛らわすためなのか、一見楽しそうな若者たちの心の奥底の寂しさ、寂寥感。それは若者たちだけに限ったことではないことが徐々にわかってくる。そしてタイトルの意味するところも見えてくる。

落ち込む要素は多いが、人間それでもどこかに光を見出す、見出したい。休憩なしのおよそ1時間55分。ベテランの宮崎秋人、朝海ひかる、玉置孝匡が流石な演技を見せて舞台を引き締める。


そして若手の綱啓永、伊礼姫奈、岡島遼太郎、大石愛陽が瑞々しさを発揮。綱啓永は映像や舞台経験があり、落ち着いた演技を見せる。

また、伊礼姫奈、岡島遼太郎、大石愛陽はこれが初舞台。トー横に集まる若者たちの闊達さと危うさを表現、物語にリアリティを感じさせる。将来が楽しみな若手俳優陣。公演は24日、トー横がほど近い、新宿の紀伊國屋ホールにて。
公開ゲネプロに先駆けて会見が行われた。登壇したのは宮崎秋人、綱啓永、朝海ひかる、そして演出の日澤雄介。
今回、共演者とは”初めまして”の宮崎秋人、「綱啓永とは事務所が一緒で、久しぶりに会って、当たり前ですが、大人になったなと…本当にただの少年が、いろんな経験を重ねて大人になったんだなと。普段でもそうですしお芝居見ててもすごい。稽古が終わった後に、焼肉食べに行ったりもして。そこでは『僕、タンがあればいいです』って大ライスにタンをひたすら食べてそこはもう本当に若いなっていうんでしょうか、そこは少年のままだなと思ってなんかちょっとほっとしました。朝海ひかるさんとは完全に”初めまして”、このビジュアル撮影のときに、初めてお会いしてご挨拶して本当に凛とされた方で、ちょっと緊張したんです。稽古してると、とても柔和な方で接しやすくて。稽古が始まってからスケジュール的に途中から。うん。朝海さんが入られることが多くて、そのときにいつもあまりにもすっと入ってきて稽古場に入ってきたのは気づかないという…稽古中、日澤さんがいつ朝海さんが入ってくるのかソワソワしながら…こんなにオーラ消せるんだなとは」とコメント。
日澤雄介は「本当に毎日見つけるのが僕の仕事みたいなふうにはなっておりまして」とコメント。朝海ひかるは「そもそも日澤さんが他の方と話してるときに私がその後ろ、背後を稽古場に入ってたっていうだけで」とコメントし、場が和んだ。
また、作品に込めた思いについて日澤雄介は「今回、トー横を舞台にした作品ですが、この作品に出会って、トー横キッズ、もちろん存在はもちろん知ってたんですけども、改めていろいろ考えていく中で、別の存在のように感じていたものが、稽古重ねていき、皆さんのお芝居を見て、古川の台本を読んでやっていくと、どんどんどんどん共通部分というんでしょうか、社会の中で、自分たちの居場所がなかったり。それは僕らも子供の頃に少なからず経験していることで、それがこの時代、このこういう社会で表出してきたのがこのトー横なんだなっていうのを改めて感じました。人間の生きづらさだとか、コミュニケーションの難しさみたいなものは、我々の大人でも、年齢重ねた我々の中でもやっぱり同じようなものがあって、やっぱりこの世の中生きづらいな、みんないろいろ抱えてるんだなっていうことを改めて感じました。今回トー横キッズの話なんですけれども、それをもう少し広げてここにいる宮崎秋人さん、朝海ひかるさん、玉置孝匡さん演じる大人、20歳を超えている人間にも、心にあるつらさ生きづらさみたいなもの、人間1人1人の持っているその難しさみたいなものに焦点を当てて、そこを見ていただければいいなと思って演出をしました」

また、役柄と似ているところや違うところなど。
綱啓永は「演じる前は全然違うなっていう印象でした。稽古を重ねていくうちに、不思議と僕自身が重なっていく瞬間っていうのがたくさんあって、彼は曲げられない信念を持ってて、そういう部分は僕も通じる部分があって大事にしてるものだったりとか。ちなみに僕の中にもあるので、何かそういう部分は似てるのかなと思いました」とコメント。
朝海ひかるは「ちょっと誰にでも合わせてしまいがちなところとかやはり処世術みたいなもの…表の部分と裏の部分はあると思うんですけれども、表の部分のその感じは何か。わかるなとは思うんですけれども、やはり裏になったときに、一体本当の自分とどうやって向き合うか、とか。人に対してどう本当の気持ちに向き合えるのかとか、そういうところはすごくなかなか人間弱い部分があるので、人それぞれそういうところが亀山さん、今回お話のストーリーの中で描かれてるところなのかなと。自分ではちゃんとしっかり人と向き合えるような人間になりたいなと…勉強させてもらいました」
宮崎秋人は「初めてこの本を読んだときは特別正直、好きじゃないなこんな男っていうふうに思ってまして。初めましての人にズケズケ結構土足で入り込むし。そんなにいきなり距離が縮めなかったりとか、関係性がもっと希薄だったりする中で、どんどんどんどん何か他人にとって入り込んで欲しくない部分に土足で入っていく印象が最初はあって。演じるにあたり、正直自分の中で何かどんな役を演じても絶対に好かれる自信っていうのが自分の中に…どんなにクセ者だろうが、見た人に絶対に好かれるっていう自信を持ってお芝居をやってきたんですけど、今回ばかりは嫌われ役が…それも面白くて、楽しみだなと思ってたんですけど、その部分と、自分をどんどんどんどん頑張って近づけていったら、なんか最初、初めて読んだ台本の中での本郷とまた違った本郷っていう人物ができてきたので…距離を感じなくなりました」
注目ポイントについて、日澤雄介は「全部ですね。先ほどお伝えして生きづらさみたいのが、随所に…僕はそこを表現したいなと思っていて、そういった中でやっぱりその本郷役の宮崎秋人さんがいろんな方と接して接してトー横の人たちとも接するし、朝海ひかるさん演じる亀山さんにも接するし玉置さん演じる田原さんにも接していって接しっていったときの、誰かと会うときにどういうふうに人間ってお互いその距離とか、表の顔と裏の顔とかっていうのを使い分けるのかみたいなところっていうのはとても注目していただけるとすごく面白い。秋人さんと朝海さんのお2人のシーンって何回か出てくるんですけれども、それがどんどんどんどんその関係性の変化で色が変わってくるんです。最後にどろっと…核心に向けて動いていくっていうところの流れだったりだとか、綱さん演じるジャックとほぼ水の油なんですけれども、この水と油がなぜか最後のところではその2人が変化を…最後どうなっていくのかみたいなところは、ぜひとも注目していただければと思います。どんどん人間関係が変わっていくというか、色が変わってきます」
最後に公演PR。
朝海ひかる「この作品を見に来ていただいて、また他の方たちとトー横の話や子供たちの話、社会の問題、そういうことを話すきっかけになっていただければと思います」
綱啓永「稽古して、今日から本番始まります。舞台は毎回同じものにはならないので、1回見たら2回目見てもまた感じ方も違うだろうし、僕らの芝居も変わってきてると思います。1回だけじゃなく何度かきていただけたら嬉しいなと思います」
日澤雄介「初日ということで、本番見るのが僕自身楽しみなんですけれども、舞台は劇場に足を運んでいただいてそこでこの作品の最後の一つのピースをお客様に埋めていただいて完成だと思っております。ぜひとも劇場に足を運んでいただいて、少し見終わった後に心が軽くなっていただければなと思っております」
宮崎秋人「今回キャスト7人、うち3人が初舞台で本当に彼らがとにかく稽古初日からすごい。成長していく姿を目の前で横で見させてもらって、自分の初舞台のときを思い出したりとか、なんかすごい初心に返る現場になったなと思ってます。彼らをも頑張りを親心で見に来てもらえればなと思います」
あらすじ
若者たちがたむろし“界隈”を形成している新宿・歌舞伎町の一角、トー横。
ある時、トー横キッズの一人であった少女が雑居ビルの屋上から飛び降りた。しかしその死はすぐに過去の出来事になってしまう。
一方、しがない興信所の調査員である本郷(演:宮崎秋人)のもとに奇妙な依頼が飛び込んできた。それは、「娘の生きた痕跡を辿って欲しい」という、死んだ少女の母親(演:朝海ひかる)からの要望だった。戸惑いながらもトー横を訪れる本郷。調査の途上、その“界隈”の顔役であるジャック(演:綱啓永)と関りを持つようになり、「死んだ少女が未だ歌舞伎町にいる」というおかしな噂も耳に入る。
本郷は調査を通し、トー横に居座る人間の心の内側に深く潜り込んでいくことになる。
そして…
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概要
日程:2025年11月13日(木) ~ 11月24日(月・祝) 紀伊國屋ホール
脚本:古川健(劇団チョコレートケーキ)
演出:日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)
出演:宮崎秋人、綱啓永、伊礼姫奈、岡島遼太郎、大石愛陽/玉置孝匡、朝海ひかる
美術:池宮城直美
照明:松本大介
音響:青木タクヘイ
衣裳:髙木阿友子
ヘアメイク:水﨑優里
演出助手:長町多寿子
舞台監督:荒智司
宣伝美術:菅原麻衣子
宣伝写真:金井尭子
宣伝衣裳:丁瑩
制作:大迫彩美、桑原涼大
プロデューサー:貝塚憲太、北原ヨリ子(ycoment)
エグゼクティブプロデューサー:渡辺ミキ
主催・企画・製作:ワタナベエンターテインメント
公式ホームページ:https://tooyoung.westage.jp/
提携:紀伊國屋書店


