手塚治虫原作のミュージカル「アトム」。演出・振付は初演で主演を演じた良知真次。脚本は横内謙介、作曲は甲斐正人の初演スタッフが再集結。わらび座の名作が15年ぶりに、11月21日~11月30日、 IMM THEATER(東京ドームシティ)にて開幕。
十万馬力のロボット・鉄腕アトムの時代が終わり、ロボット達がより進化を遂げつつも人間に自由を奪われて絶対服従するという、アトムがいなくなり抑圧されたさらに未来の世界が舞台。この手塚治虫のメッセージが込められたミュージカル「アトム」は、秋田県を代表する劇団わらび座が企画•制作。脚本•演出には扉座の横内謙介、作曲には甲斐正人というスタッフ陣。初演は2010~2013年にかけて全国ツアーを含めたロングラン公演が行われた。
15年前の初演で主演のトキオを演じた良知真次が演出・振り付けを担う。

主演のトキオ役には、ダンス&ボーカルグループ「WATWING」メンバーで「デスノート THE MUSICAL」や「ジェイミー」に出演する髙橋颯と、5人組ボーイズグループ「WILD BLUE」のメンバーで今回が初ミュージカル、初主演となる宮武颯のWキャスト。トキオの親友のロボット・アズリ役はミュージカル「フランケンシュタイン」やミュージカル「四月は君の嘘」への出演で注目を集める島太星と、9人組ミクスチャーユニット「SUPER★DRAGON」のメンバーの志村玲於のWキャスト。ヒロインである人間のマリアは、スーパー戦隊シリーズ『王様戦隊キングオージャー』などで幅広く活躍する平川結月と、ミュージカル『暁のヨナ』主演、明音亜弥のWキャスト。そして木村来士、寺島レオン、AKB48メンバーとして活躍する田口愛佳、ラストアイドル出身の畑美紗起ら。さらに宝塚歌劇団出身の実力派である飛龍つかさ、音くり寿、天寿光希らや、劇団四季出身の柳瀬大輔、今井かなこ、そして演出・振付も務める良知真次らが出演。

開演前の射幕、21世紀、といった雰囲気。キャッチーな楽曲、そして幕開き。アトムの時代が終わり、ヒト型ロボットは進化、だが、パワーは制限されている。さらにロボットは人間に服従しなければならない。人間に見下されるロボットたち。だが、それでも明るさは失わない、秘密のパーティは楽しそうだし、ロボットに理解を示し、対等に接する人間もいる。お茶の水博士の弟子であり、元科学者の神楽坂町子、彼女のところでは、この物語の主人公であるトキオが働いている。そんな状況でも仲間がいれば楽しい、ハッピー。トキオには優しい心を持った看護師ロボット・アズリがいる。気の合う親友。そんな様子を歌とダンスで綴る。ウキウキするナンバーも心地よい。客席通路も使った演出、シンプルに楽しい。
一方の人間界、今も昔も変わらないが、不幸な若者たち。家柄は良いが両親が不仲のマリア、今でいうところのブラック企業で働くタケとエミ。我慢しきれず、逃げ出す、しかも会社のお金まで盗んで。そんな3人がロボットたちの”エリア”に迷い込む。それぞれが感じる閉塞感、どこか呼応する。


孤独なマリア、優しいアズリ、互いに惹かれ合うが、人間とロボット、本来は恋愛関係になどならないどころか、白い目で見られてしまうが、二人の心は真実、二人の歌は心洗われるようなナンバー。だが、思わぬ悲劇が二人に襲いかかる。
人間とロボット、設定はファンタジーでSFだが、ここで描かれていることは普遍的だ。ロボットを下に見る人間、態度が尊大だったり、口が悪かったり、乱暴を働いたり。差別、それは普通に地球上のどこでも起こっていること。人種、生い立ち、見た目、文化、さまざまな理由で差別するが、俯瞰した見方をすれば、差別する方もされる方も不幸だ。それによって紛争や争いも起きる。この物語でも、争い、戦いが起こる。元科学者のスーラは「アトムを甦らせよう」とロボットたちを煽る。アズリのことで怒りが煮えたぎっているからさらにヒートアップ、この争いはどうなるのか?というのが大体の流れ。




テンポよく展開、映像、ダンス、立体感のあるセットは俳優陣が動かす。アズリのことで頭に血が上るロボット、持っている感情は人間と変わらない。人間のタケとエミ、劣悪な環境で荒んだ心、モラルも薄い。だが、ロボットたちの環境も決していいとは言い難いが仲間を想い、大切にする。だからアズリのことでロボットたちが立ち上がり、戦おうとするのは皆、アズリのことが好きだったから。しかし、争いからは何も生まれない。

本人も知らないトキオの秘密、後半に明かされるが、タイトルがなぜ「アトム」なのか、観客は大きく頷ける。ラストはバッドエンドではないが、絵に描いたようなハッピーエンドでもない。考えさせられる結末だが、そこには光がある。上演時間は休憩込みで2時間30分、濃密な時間。トキオ始め、個性的なキャラクターが物語を紡ぐ。若いキャスト中心だが、柳瀬大輔らベテランがしっかり脇を支える、良い座組。公演は30日まで。

STORY
20××年、十万馬力のロボット「アトム」の時代は終わり、さらに進化したヒト型ロボットが、パワーを大きく制限され、人間への絶対服従を強いられている時代。
路地裏の倉庫では、ロボットだけの秘密のパーティーが開かれていた。
お茶の水博士の最後の弟子である元科学者、神楽坂町子の屋敷で働くロボットのトキオ。
トキオの親友で、心優しい看護師ロボットのアズリ。
二人が創った歌は、自由を持たないロボットたちに生きる喜びを与えていた。
そこに、両親との不仲で家出してきたマリアと、
労働環境の悪い工場から金を盗んで逃げてきたタケとエミ、3人の人間の若者たちが迷い込んでくる。
自分たちの心の自由を歌うロボットと人間の叫びは、互いの心を結びつける。
やがてマリアとアズリは惹かれあうが、それによって悲劇が起き、
元科学者のスーラは「殺人兵器として、十万馬力のアトムを甦らせよう」と扇動する。
概要
会期会場:2025年11月21日(金)~11月30日(日) IMM THEATER
※一部ダブルキャストでの上演。詳細は公式HPにて。
スタッフ
原作 手塚治虫 「鉄腕アトム」
脚本・監修 横内謙介
演出・振付 良知真次
作曲 甲斐正人
キャスト
トキオ: 髙橋颯(WATWING) 宮武颯(WILD BLUE)
アズリ:島太星(NORD)志村玲於(SUPER★DRAGON)
マリア:平川結月 明音亜弥
ダッタン:飛龍つかさ
エミ:音くり寿
タケ:木村来士 寺島レオン
ウメ:田口愛佳(AKB48)畑美紗起
時計じいさん:柳瀬大輔
ヘレン:今井かなこ 知念紗耶
キム・ウォンシク
添田陵輔
鈴木美那実
若林佑太
河村薫平
神楽坂博士 天寿光希
スーラ 良知真次
チケット料金:SS席:13,500円(税込/特典付き) / S席:12,000円(税込)/A席:9,000円(税込)/U-18チケット:4,500円(税込)/ファミリーペアチケット:4,500円(税込)
チケットスケジュール:https://l-tike.com/atom2025/
オフィシャル先行(抽選):2025年10月6日(月)12:00~10月13日(月・祝)23:59
プレリクエスト先行(抽選):2025年10月14日(火)12:00~10月20日(月)23:59
一般発売:2025年11月1日(土)12:00~
企画協力:手塚プロダクション
企画・制作: World Code
主催:ミュージカル「アトム」製作委員会
特別協力:わらび座
公式HP:https://worldcode.co.jp/m_atom2025/
Ⓒ手塚プロダクション
Ⓒミュージカル「アトム」製作委員会
※手塚治虫/手塚プロダクションの「塚」は、正表記は旧字体「塚」


