半世紀の時を超え、 唐十郎・幻の第一作となる未発表小説「懶惰の燈籠(らんだのとうろう)」(42枚)、 未発表シナリオ「幽閉者は口あけたまま沈んでいる」(64枚)が発見された。
本作は、 唐十郎氏が学生時代に、 当時大学の先輩で後に脚本家となる布勢博一氏(2018年8月死去、 代表作に『熱中時代』他)へ預かられたもので、 原稿は布施氏が他界する2ヵ月前に、 批評家の樋口良澄氏(『唐十郎論 逆襲する言葉と肉体』他)へと渡ったもの。
それらがこの度、 現在療養中の唐十郎氏に代わって樋口氏の尽力により「文藝」2018年冬号(2018年10月6日発売:1300円+税/河出書房新社)で初めて公に発表される。
これまで唐十郎氏の第一作は、 劇団「状況劇場」結成時に執筆された戯曲『24時53分「塔の下」行は竹早町の駄菓子屋の前で待っている』とされてきたが、 本稿の発見は表現者・唐十郎をめぐる解釈、 さらには演劇史、 文学史までも大きく揺るがすものとなる。
今回発見された2作について、 樋口氏はこう語ります。
「一見よくある小説とシナリオのようだが、 その内実は反リアリズム・幻想と現実・見る/見られる・水・自閉とその反転など、 現在に続く唐十郎の世界が色濃く流れている。
また、 安保の挫折・教養主義的/近代主義的な知の転換・貧富の差の一方で、 テレビやゴルフなど新しいライフスタイルの勃興も描かれるなど、 時代の刻印を強く受けていたことも感じる。
本稿は、 作家・唐十郎の原点を探る貴重な資料であるとともに、 演劇史、 文学史にもあらたな1ページを刻むものとなる。 」
当原稿ついての詳しい経緯と解説は、 「文藝」冬号に掲載される樋口氏の解説「<唐十郎>へ、 初源への遡行」を。
また、 明治大学駿河台キャンパス図書館ギャラリーにて「実験劇場と唐十郎1958-1962」が開催され、 本作の生原稿が展示される予定[主催=明治大学文学部/会期=2018年10月5日(金)~28日(日)/お問い合わせ=明治大学文学部事務室:tel.03-3296-4180]。