勅使川原三郎 新作公演「空耳」インタビュー

大反響を呼んだ前作「記憶と夢」に続く、今年最後の新作アップデイトダンス「空耳」が12月13日よりカラス・アパラタス B2ホールにて開幕。
過去さまざまな音楽をテーマに、時には無音でダンスをしてきた勅使川原が「新作は聴くことに固執してダンスを探りたい」と語り、「聴く」をテーマに創作。その「聴く」について勅使河原三郎のインタビューが到着。

ーー「聴くことに固執してダンスを探りたい」とのことで、どのような音・音楽を構想されているのでしょうか?

勅使川原三郎:あらゆる音、聴こえる音、響きやうねりという音響的な聴こえるものも含む。自然界の音も、風や木立の音、海からの音、鳥などの動物、生き物の鳴き声も。宇宙からの音も含む。作られた音楽も当然。
加えてまさに空耳、勘違いで聴こえたと思う音や記憶に残っている音がよみがえる音も。
そして体内の音、呼吸や心臓の鼓動、血管の脈打つ音、体がこすれる音、手を叩く、足を踏む、もちろん声。作品にはありとあらゆる種類、ありとあらゆる所から聴こえてくる音、つまり、積極的に聴く音と聴こうと思わなくても聴こえてくる音がある。
意識や無意識がさまざまな音を聴かせていることに創作の主題がある。心の中で求めている事(音)と贈り物のように与えられる物(音)があるように、音は恩恵(恵み)、恩寵(天から与えられるもの)のように、ありがたいものとして受け取る時、単純に耳で聴く音というのとは違う、関わりを私は感じる。ありがたきものとして。

ーーこれまで数々の作品のタイトルに身体の部位が登場しています。今回は「耳」ですが、勅使川原さんにとって身体こそが着想の源なのでしょうか?

勅使川原:身体は命が宿る所ですから考えや感情などの源と言えます。また着想ということは、考えや感情の動きをある形式に組み耐える作業の範囲にあります。

ーー本来空耳とは錯聴、幻聴的な現象を意味しますが、今作の「空耳」はどのような作品になるのでしょうか?

勅使川原:私の創作の方法は、規定された観念や方法論から離れて、元来の意味とは異なる解釈の可能性を自由に広げることが大事です。
それは破壊的な作業ではなく、発端が同じでも別な発見や出会いがあるはずだという可能性を広げる構築的な思想が基本にあります。
例えば、空を耳と思ってみると空から何かが聴こえてくるが、逆に空が聴いているのではないかと思えてしまう。
歌も歌自体がそもそも聴いていて、それを我々が聴いているのだろうと思える。目一杯、空に向けて腕を高く伸ばした、その手の平が聴く宇宙の音、無数の聴き間違いをしている世界にはなんとたくさんの美しい空耳があるのだろう。耳が生み出す「聴くという表現」がダンスになるのだろう。

ーーありがとうございました。公演を楽しみにしています。

概要
アップデイトダンスNo.116「空耳」
演出・照明:勅使川原三郎
アーティスティックコラボレーター:佐東利穂子
出演:勅使川原三郎 佐東利穂子
日程・会場:2025年12月13日(土)ー12月22日(月) (17,18日は休演日) カラス・アパラタス B2ホール
主催:有限会社カラス
企画製作: KARAS
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(公演創造活動))|独立行政法人日本芸術文化振興会
公式サイト:https://www.st-karas.com
公式X:https://x.com/karas_apparatus