金森穣×東京バレエ団『かぐや姫』5月開幕 公開リハーサル&取材会レポ 「夢は世界へ」

金森穣振付『かぐや姫』全幕が5月に開幕する。この公演は2020年のコロナ禍に産声をあげたプロジェクト、足掛け3年をへて全幕の完成にいたり、舞台映像がユーロアーツを通じて世界各地に配信されるなど大きな成果をあげた。世界初演から3年、月に帰った『かぐや姫』が、再び東京文化会館の舞台に。しかも東京文化会館の休館前最後の公演となる。
本作はすでに海外展開が確定しており、本年12月には作品の一部、そして2027年には全幕を欧州の著名な歌劇場で上演することが決定している。


公演に先駆け、本作の演出・振付を手がけた金森穣が直々に指導する稽古が特別に公開された。同じシーンを繰り返しながら、細かいところを修正していく。金森 穣が自ら踊って見本を示す。少しずつ、シーンが”完成”していく。

1時間ほどの公開稽古の後、取材会が行われた。登壇したのは金森穣と東京バレエ団の団長・斎藤友佳理。

ーー今回の再演について

金森穣「初演のときはどんな作品でもそうですが、この世に存在しない作品を作るために限られた時間の中でギリギリ最後までエネルギーをかけて、作品を生み出します。 ただ当然のことですが、生み出してみてから気づく、『もう少しこうすればよかった』とかいろんな気づきがあるんですね。それはもうどんな作品でもそうなんです。それは『かぐや姫』も同じで、初演からから『ここもう少し詰めたいな、ここの振り付け、高度な音楽性、もっとこの方がいいな、演出ももっとこうしたらいいかな』といういくつかのアイディアを、常にためておいたこと、今回の再演にあたっては直せているというよりは、さらによりよくブラッシュアップできているのでぜひ楽しみにしていただきたいですし、初演より更に素晴らしい作品になると願ってます」

東京バレエ団にとっての『かぐや姫』の位置付けについて斎藤友佳理は

斎藤友佳理「海外公演に行ってるとき、時々、『日本人の振付家の作品はないのか』聞かれていたことがずっと私の中にありまして。ただこの東京バレエ団にとっての位置づけとしては、レパートリーとして上演されている『ザ・カブキ』『M』がありますが、それに続く作品…海外公演へ持っていき、東京バレエ団の顔としてこの作品が残り続けていってくれたらいいなとずっと願っています。この作品を作るにあたって、クロード・ドビュッシーの音楽を使うことを決めた時点から、私としては、みんなの夢でもありますが、全幕物としての作品はこの『かぐや姫』が初めてだと私が知る限りでは思っているので、夢の一つとしてフランスに持っていきたいという大きな夢がありますし、フランスだけではなく、ヨーロッパに持っていきたいっていう夢があります。が、近いうちにそのことをまた発表できるときが来ればいいなと思っています」

海外での公演の具体的な内容について。
「いきなり全幕で、というよりも、まずは一部、その後、全幕上演でもっていけるのが一番の理想の形です。近いうち発表できることを願っています」
また「3幕出来上がったときには本当に、本当に、この作品を作ってもらってよかった。 今の東京バレエ団のダンサーたちにとっても、東京バレエ団にとってもこの作品は絶対必要になってくる、何かを手応えみたいなのを感じました。また、演出助手の井関佐和子さん、彼女の存在がなかったらきっとここまでできてなかったと思います。彼女がいてくれたことによって金森穣さんの才能がさらにまた生かされ、ダンサーたちのパイプにもなってくださり、ものすごく大きな役割を果たしてくださったと…ここで心から感謝の気持ちを伝えたい気持ちがあります」とコメント。

作品について金森穣は
「影姫とかぐや姫もそうですが、光と影みたいな…ある種の1人の人物の二面性みたいな部分があるので…もちろん異なるキャストそれぞれの個性が生きることが、やっぱりグランドバレエ、バレエの醍醐味だと思いますので、いろんな人がいろんな見方をやってほしいと思うし、いろんなのがあっていいと思います。ただ、ある種の人間心理、人間とは何かっていうことを舞台芸術の本質として、やっぱり常にそういう白と黒。 代表的なのは『白鳥の湖』ですね。配役ですが、(前回)帝を踊った大塚卓が今回は道児をやるのは全然ありです。卓はその両方を表現者としてできると思っているので期待して配役いたしました」

今回の公演は東京文化会館の閉館前、改修工事に入るとのこと。昭和36年に開館し、約60年経過、全面的な設備機器更新等の大規模改修工事。休館は大ホールは5月7日から、小ホールは5月14日より。「東京バレエ団にとっては本当にホームグランド、東京文化会館、歴史もそうですし、全てそこに刻まれてきたのでとても感慨深いものがあります。早く開いてくれることを願ってますが、その間どうやってうまく生きていくのかということを今、みんなで考えてます。舞台の回数を減らす、イコールダンサーと地位の保障…そういうことをいろいろ考えます…スケールの大きいものができるところが日本では限られてしまっているので。ファミリーで楽しめる、題材としてはこの『かぐや姫』は本当にふさわしいと思いますし、また新たなこの『かぐや姫』を、ここ、東京文化会館の最後の舞台にできることは本当にとてもいいことタイミングだったと思ってます」と斎藤友佳理。
金森穣は「友佳理さんがおっしゃってたいわゆる行政に対する怒りは共有しますし。実演芸術にとっての継続性、これがどれだけ大事なのかは、そこはお役所仕事なので、人(担当)も変わるし、わかってもらえないことに対する憤りは共有します」とコメント。
劇場不足はここ数年、声高に言われてきた問題。東京文化会館が閉館すると海外からの招聘公演は難しい。
「願わくばここから海外に飛び立って、『かぐや姫』が凱旋でまた上野の文化会館でできる日が来ることを夢みます」と斎藤友佳理。有名な作品はあらゆる劇場で公演されているが、斎藤友佳理は続けて「『かぐや姫』、(金森)穣さんが海外の大きなバレエ団、たとえば、ロイヤルバレエ団に彼の魅力を…日本人ダンサーが今どの劇場でも活躍されているように、日本人の振付家が世界に羽ばたいて欲しい、さらに上の夢ですね」と熱く語る。
『かぐや姫』の初演は2023年の10月。2021年春から始まったクリエーション、同年秋の第1幕、23年4月の第2幕初演、2年7か月越しのプロジェクト、10月に第3幕を加えた全幕バレエとして完成、上演された。もちろん、今回の公演に向かって日々、ブラッシュアップ。振付けの細かいポジショニングなど、5月の上演に向けてクリエイティブスタッフ、ダンサー陣、総出で最高のステージを創出すべく、稽古に励んでいる真っ最中。

最後にメッセージ。
斎藤友佳理「日本人として、この日本最古の物語『かぐや姫』を、楽曲はドビュッシー。 とてもいいバランスでこの作品が生まれました。夢はもちろん『世界』ですが、まずは日本人の1人でも多くの方々にバレエというものを知っていただきたいと思っています。1人でも多くの方に触れるようにこういうバレエがあるんだっていうことを伝えていただけたらすごくありがたいです」

金森穣「いや、全く同意見です。上野の東京文化会館の最後の公演、『かぐや姫』海外に羽ばたく前に満席にしてほしい、お力をお貸しください!」

公演概要
日程・会場・配役
2026年5月5日(火・祝) 13:00
かぐや姫:秋山 瑛
道児:大塚 卓
影姫:沖 香菜子
帝:池本 祥真
翁:岡崎 隼也

2026年5月5日(火・祝) 18:30 *
かぐや姫:足立 真里亜
道児:柄本 弾
影姫:金子 仁美
帝:生方 隆之介
翁:岡崎 隼也
*開演前にプレトークを開催。

2026年5月6日(水・休) 14:00
かぐや姫:秋山 瑛
道児:大塚 卓
影姫:沖 香菜子
帝:池本 祥真
翁:岡崎 隼也

会場:東京文化会館(上野)

音楽:クロード・ドビュッシー
演出振付:金森 穣
衣裳デザイン:廣川 玉枝(SOMA DESIGN)
木工:近藤 正樹
映像:遠藤 龍
照明:伊藤 雅一(RYU)、金森 穣
演出助手:井関 佐和子
衣裳製作:武田 園子(Veronique)
助成:文化芸術活動基盤強化基金(クリエイター等育成・文化施設高付加価値化支援事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
主催:公益財団法人日本舞台芸術振興会
後援:一般社団法人日本バレエ団連盟

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