劇団スタジオライフの舞台版『はみだしっ子 ~in their journey through life~ 』が上演中だ。この作品は2017年秋にスタジオライフが初めて舞台化した『はみだしっ子』の続編。早世のマンガ家・三原順により1975~1981年に発表された同名作品を原作としたもの。原作者なき後も、多くの支持を集めている名作だ。親に見捨てられたり親を見限って家出したりといった事情を抱え、共同生活を送 ることになった少年4人の、心の彷徨と成長を描いているが、今回の公演は原作の中から前回描き切れなかったエピソー ド の続きを、前回と同じ4人組が演じる。
舞台のセットは初演時と同じ。バスの走る音、その音が過ぎ去り、4人が浮かび上がる。グレアムが言う「僕たちは出会った」「赤の他人だ」と。偶然に出会った4人、グレアム、アンジー、サーニン、マックス。渡り鳥に会うために北へ向かう途中、ひょんなことでスケッチブックと写真を受け取る。それを届けに行くためにとある街に着き、その持ち主の家にたどり着くが・・・・・・。
それぞれ、心に闇、トラウマを抱えている4人、寄り添うように生きている。時にはおどけてみたり、笑いあいながら・・・・・・つまり、それだけ辛い過去を背負っている、ということ。行った先の街、家で厄介な事件に巻き込まれ、サーニンは不幸にも監禁されてしまうが・・・・・・。しかし、そこから力を合わせて逃げ出した4人、幽霊屋敷に隠れ場所を求めた。鍵ばかりの屋敷、しかもグレアムは父に、アンジーは母に追われていた・・・・・・。
家族でもなく、兄弟でもない4人、初演でも描かれていたが、様々な人々との出会い、時には助けられ、時には騙され、時には裏切られたりする。それでも4人は協力し、支え合いながら旅を続ける。心の痛みがわかるから、「赤の他人」でありながら、絆を深めていく。彼らの前途は険しいが、ラストシーンではほのかに光を感じる。4人は子供だが、大人びた一面もあり、我々に様々なことを気づかせてくれる。作品発表から実に40年以上が経過しているが、普遍性のあるテーマが内包されており、現代でも十分に通用するものであるからに他ならない。
観劇したのは岩﨑 大(グレアム)、山本芳樹(アンジー)、緒方和也(サーニン)、田中俊裕(マックス)のTRKチーム(ちなみに満席!)。[舞台写真はTBCチーム:仲原裕之(グレアム)、松本慎也(アンジー)、千葉健玖(サーニン)、伊藤清之(マックス)]年齢的に「今回をもって解散」と倉田から通告されているベテラン俳優を擁するチーム。岩﨑 大演じるグレアムは4人の中でもリーダー的な存在で、安定感もあり、落ち着いた印象だが、後半の衝撃的な場面では言い知れぬ深い憎しみと悲しみをたたえた表情、客席は静寂になり、張り詰めた空気が充満。山本芳樹のアンジー、物語の設定では小児麻痺のために足が悪く、しかし努力によって歩けるようになっている。よく動き、時にはおどける、客席からは温かい笑いが起こっていた。初演最後で松葉杖を使わなくなるが、杖を使わないことによって心強くなったのだろうか、後半では勇気を持って自分より『女優』を選んだ母親と対峙する。緒方和也のサーニンはいつも腹ペコ、闊達な少年といった風情だが、前半の監禁されるシーンでは、閉じられた空間での辛さに耐える姿に心が痛くなる。田中俊裕のマックス、このチームの中でも最年少、ほっこりとした感じでアクセントに。
また、このチームではBUSチームでグレアムを演じる久保優二が幽霊屋敷のシドニーを演じているが、4人に出会ったことで内面が変化、ラスト近くでは晴れやかな表情に変化していたのが印象的であった。また船戸慎士が全てのチームでグレアムの父親を演じる。実の息子に手をあげる、その行動は息子なのに思い通りにならない苛立ちに満ちており、しかも自分の意志と信念を頑なに守る『鉄』のようなキャラクター、船戸慎士がメガネの奥の瞳を光らせて熱演。
スタジオライフの公演は複数チームが代わる代わる『登板』する。チーム毎にカラーが変わり、また違うキャラクターを演じているのがユニークなところ。
サブタイトルにもあるように『in their journey through life』、彼らは実際に旅をしているが、人生そのものが旅。「僕たちは旅の途中」と言う。多様なニュアンスを含む台詞、そう彼らの旅は、まだ終わらない。
なお、大阪では公演に伴い原画展も開催される。日程は10月30日から11月4日まで。場所はスタジオクートギャラリー。
【概要】
スタジオライフ『はみだしっ子~in their journey through life~』
原作:三原順 「はみだしっ子」(©三原順/白泉社)
脚本・演出:倉田淳
[東京公演] 2018年10月6日(土)~10月21日(日) シアターサンモール
[大阪公演] 2018年11月2日(金)~11月4日(日) ABCホール
[キャスト] ※出演者は都合により変更になる場合がございます。予めご了承ください。
TRKチーム:岩﨑 大(グレアム)、山本芳樹(アンジー)、緒方和也(サーニン)、田中俊裕(マックス)
TBCチーム:仲原裕之(グレアム)、松本慎也(アンジー)、千葉健玖(サーニン)、伊藤清之(マックス)
BUSチーム:久保優二(グレアム)、宇佐見輝(アンジー)、澤井俊輝(サーニン)、若林健吾(マックス)
船戸慎士 牛島祥太 吉成奨人 鈴木宏明 前木健太郎 藤原啓児 他
[公式HP] http://www.studio-life.com/stage/hamidashi2018/
文:Hiromi Koh