声の優れた俳優によるドラマリーディング 日本文学名作選 第七弾 「 三つの愛と、殺人 ―芥川 太宰 安吾―」無限なる愛の形、そして『生きる』。

日本文学の名作を朗読劇にした、声の優れた俳優によるドラマリーディング 日本文学名作選も7回目を迎える。今回は芥川龍之介の「藪の中」、太宰治の「駈込み訴え」、坂口安吾の「夜長姫と耳男」の3つの作品を取り上げる。

「藪の中」は今昔物語の一説話を題材にした「王朝物」。黒澤明監督により「羅生門」(1950年)というタイトルで映画化されている。

「駈込み訴え」は短編でイスカリオテのユダが主人公で彼の視点でイエス・キリストについてどのような感情を持っていたのかを述べる形式になっている。

「夜長姫と耳男」も短編。1990年にオペラ化され、2006年にはコミカライズもされている。

作品は発表された順に登場する。

時間になり、風の音、雷鳴、雷の閃光が走る。

「藪の中」、木槌の音。死体を発見した木樵の話から始まり、この『事件』の当事者たちの『話』、そこから浮かび上がるもの、その瞬間に湧き上がる彼らの想い、感情、そして行動。盗人、殺された男、その妻、三者三様の言い分から見えてくるものは?

芥川龍之介がこの作品を発表した後の数年後に発表された芥川の「或旧友へ送る手記」が読み上げられる。それから彼は自殺する。

太宰治の「駈込み訴え」は1940年に発表。イスカリオテのユダがメインキャラクター、彼のイエスキリストに対する思い、ペテロなど他の弟子たちも彼の独特の視点で語られる。それは愛?憎しみ?出てくるエピソードは聖書の福音書である。

三作目、坂口安吾の「夜長姫と耳男」、飛騨の匠の弟子である耳男と、無邪気さと残酷さを併せ持つ長者の娘・夜長姫を中心とし、説話風に書かれたもの。耳男のほとばしる感情。そして最後は坂口安吾が書いた「不良少年とキリスト」が朗読される。

3つの作品については、様々な解釈があるが、それぞれには『愛』がある。しかし、その形は一つにとどまらず、想像力によって無限大に広がる。

演者は男性は黒い服装、女性は白。照明、効果音で縁取られ、そして映像のような具体的なものは排し、朗読だけで観客に作品世界を提示する。描かれている世界は濃密で一言で言えば『愛』なのかもしれないが、その『愛』には実に多くのものが内包されている。

ここに登場する作家、芥川と太宰は自殺でこの世を去り、坂口は病で逝去している。この3人の作品をリレー式に登場させているが、この日本の情勢、学校の授業で先刻承知だが、この時代にも目を向けたい。

初日の福島潤、岸尾だいすけ、山下七海、大空直美で観劇。第一線で活躍している声優陣だけあってその声だけで情景が浮かび上がってくる。男性声優の朗々と響く声、女性声優の、時折可愛らしさをにじませる高いトーンの声、これをライブで聴くことの贅沢さ。そして、多くのことを考えさせる構成。最後に読み上げられる坂口安吾の言葉は心に残る。「人間は生きることが全部です」「人間は勝ちません。ただ、負けないのだ」「学問とは限度の発見だ」と。

【概要】
声の優れた俳優によるドラマリーディング 日本文学名作選 第七弾.
「三つの愛と、殺人 -芥川 太宰 安吾-」
日程
2018年10月9日(火)~14日(日)
会場  紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
原作
芥川龍之介「藪の中」
太宰治「駈込み訴え」
坂口安吾「夜長姫と耳男」
構成・演出  深作健太
日程・出演スケジュール
10月9日(火)19:00開演 福島潤 岸尾だいすけ 山下七海 大空直美
10月10日(水)13:00開演 吉田ボイス 岸尾だいすけ 夏川椎菜 徳井青空
10月10日(水)19:00開演 中島ヨシキ 岸尾だいすけ 夏川椎菜 伊東健人
10月11日(木)19:00開演 福島潤 岸尾だいすけ 浅倉杏美 下田麻美
10月12日(金)19:00開演 土屋神葉 小松昌平 安済知佳 大空直美
10月13日(土)13:00開演 花江夏樹 斉藤壮馬 浅倉杏美 田中美海
10月13日(土)19:00開演 花江夏樹 小松昌平 浅倉杏美 濱野大輝
10月14日(日)13:00開演 駒田航 神尾晋一郎 安野希世乃 芹澤優
10月14日(日)18:30開演 羽多野渉 代永翼 安済知佳 大久保瑠美

公式HP:https://www.koesugu.com

文:Hiromi Koh