ーー美しき夢の紋章、今、煌めきの幕が上がるーー
フランスを代表する伝説のファッションデザイナー であるイヴ・サンローランの華麗な人生の光と影を描くミュージカル『イヴ・サンローラン』が来年の2月に上演される。イヴ・サンローランはココ・シャネル、クリスチャン・ディオール、ポール・ポワレらとともに20世紀のフランスのファッション業界をリード、2002年の引退まで、トップデザイナーとして40年にわたり活躍、「モードの帝王」とも呼ばれた人物。
イヴは1936年、フランス領アルジェリアのオランで生を受けた。子供の頃パリ17区に引越し、1953年、イヴが17歳の時にファッションデザイナー養成校 パリ・クチュール組合学校 に入学し、早くも才能を発揮する。IWS主催のデザインコンクールのドレス部門においてカクテルドレスを発表し最優秀賞を受賞。そのカクテルドレスの縫製はユーベル・ド・ジバンシィ、その時の毛皮部門の受賞者はシャネルのデザイナーであるカール・ラガーフェルドであった。
この時の審査員であったVOGUEのディレクター、ミッシェル・デブリュノフは、イヴの才能を高く評価し、ディオールに紹介する。そして1957年、ディオールは次のコレクションでイヴを連れ出すと言い出したというエピソードもある。ところが同年にディオールが死去。イヴは21歳でディオールブランドを財政的な破滅から救うために主任デザイナーとなり、大きな力で仕事を始める。しかし1960年、イヴはアルジェリア独立戦争で戦っていたフランス軍に徴兵される。20日後に軍隊内のいじめの影響でストレスを被ったイヴはフランスの精神病院施設に収容され、神経衰弱のために、電気ショック療法を含む精神医学的な治療を受けた。後年、イヴは自身の薬物依存や鬱の起源はこれらの体験にあったと語っている。そんなドラマチックな彼の半生をミュージカル化する。映画化は2014年に「イヴ・サンローラン」(ジャリル・レスペール監督)、「SAINT LAURENT/サンローラン」(ベルトラン・ボネロ監督)繊細で孤独、重圧に押しつぶされそうになる内面を描いている。
さて、注目のミュージカル、フランス大使館内で制作発表会が行われた。まずはピエール・コリオフランス大使館参事官及びアンスティチュ・フランセ日本代表より挨拶があった。「日本ではミュージカルは人気のジャンル、ミュージカル『イヴ・サンローラン』の上演はとても嬉しく思います」と手放しでの喜びを語った。
それから作・演出の荻田浩一、音楽の斉藤恒芳、衣裳の朝月真次郎、 出演の東山義久、海宝直人、上原理生、大山真志、川原一馬、安寿ミラが登壇したが、やはりイブ・サンローランの生涯を描く作品だけあって、特にWキャストの主演の2人は作品に相応しいいでたちで登壇。まず荻田浩一は「波乱万丈の人生を浮かび上がらせた作品にしたい」と抱負を述べた。音楽の斉藤恒芳は「新めのミュージカルに、歌謡曲風の今風なものと60年代の音楽を混ぜて楽しめるようにしたい」とコメント。時代的にもイヴ・サンローランは60年代に颯爽と現れたクリエイター、「半分は、もう出来ています」と語る。衣裳の朝月真次郎は「これから考えます」とちょっとプレッシャーを感じている模様。「イヴ・サンローラン!私が!それくらいの気持ちで」とコメントしたが、世界のトップデザイナーのミュージカルを扱っているだけに衣裳には注目が集まること、必至。
それからキャストのコメント、まずは東山義久は「海宝直人君や安寿ミラさん、素晴らしい方々が集まった。いろんな作品を作ってきた仲間です」とカンパニーの良さを強調。次に海宝直人「イヴ・サンローランが歌うっていうのは(なかなか)想像できないのですが、Wキャストでどのように作っていくのか楽しみ。イヴの世界観を余すところなく表現していきたい」と抱負を語った。上原理生は「イヴ・サンローランは世界に誇るデザイナーで(オファーを受けた時は)すごく面白そうだなと思いました。フランスに失礼のないように、実在の方々と誠実に向き合って演じていきたい」とコメント。大山真志は「新しく作るミュージカル、ピエールとクリスチャン・ディオールの2役をやらせていただくのは大変光栄です。一つの作品でいろんな人生を・・・・・ピエールはサンローランを支えてきましたが、この作品の支えになれるように頑張ります」と気合十分。川原一馬も「身が引き締まる思い」とやや緊張気味に。
安寿ミラは「フランス好きの私がシャネルをやれるなんて!」とまずは喜びの一声、それから「最もスリリングな荻田さんとの稽古が楽しみです」と語る。ドレスの着こなしも決まってさすがないでたち。
それから・・・・・・・MCより出演者にまさかの「イヴ・サンローラン、これ知ってる?」的なクイズが出されることに!一同、かなりの慌てぶり!悩みながらも全員クリア!さすが!それから役作りについて東山義久は「髪の毛をバッサリ切ってきました!」確か今までのロングヘアーが・・・・・さっぱりと!海宝直人は「パリに行く機会がありまして、イヴ・サンローラン美術館に行きました、仕事場も拝見してきました。荻田さんと一緒に作っていけたら」とコメント。それからMCより質問でイヴ・サンローランのイメージについて「高級なブランド」と回答し、このミュージカル出演自体が「不思議だな・・・・と」語り、大山真志は「映画やドキュメンタリーを観て、いろんな栄光を手にしていて、すごく繊細で孤独な人」と印象を語った。川原一馬は「生きること=デザインすることに命を燃やした人。ハイブランドなイメージ、この作品を通してイヴ・サンローランの人生をもっと知りたい」と語る。1962年、神経衰弱の完治とともにディオールを去ったイヴは、芸術後援者で恋人のピエール・ベルジェの出資により自身のレーベル「イヴ・サンローラン(YSL)」を設立、活動を開始。そして1966年に「イヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュ」のブティックをパリに開設。そして1989年にはファッションブランドとしては初となるパリ証券取引所に株の公開をすることに。とにかく世界でイヴ・サンローランを知らない者はいないくらいのトップブランドになった。そういうわけで衣裳の朝月真次郎は「大学を卒業してアパレルメーカーに入りましたが、イヴの影響は受けてきました」とコメント。イヴ・サンローランは様々な新しいスタイルを打ち出し、それは今のファッションに多大な影響を与えている。プレタポルテの流れを作り、女性のパンツスタイルを作り、とにかく画期的なクリエイターであったことは間違いないのだ。安寿ミラは「さらに見聞を広げたい、イヴのお母様のことはほとんど知られていないのですが、ここは台本を読んでイメージを膨らませていきたい」と意気込む。荻田浩一は「歴史的デザイナー、繊細すぎる心と溢れる才能を持った人」と語る。
一通りのコメントが出たところで、この作品のテーマ曲が歌唱披露された。キャッチーなナンバー、公演に期待がかかる。最後にローラン・ピック駐日フランス大使が登壇し、挨拶。「フランスを代表するデザイナー、イヴ・サンローランは2008年に亡くなりました。このミュージカルを通してイヴの生涯を知っていただきたい。彼は自分のブランドを立ち上げ、時代の先端を行っていた」とコメント。偉大なるデザイナーであり、孤独を抱えた一人の人間であるイヴ・サンローラン。最後に大使は「ミュージカル好きな方、ファッションが好きな方、多くの方に楽しんで頂きたい」と締めくくり、会見は終了した。
【公演概要】
ミュージカル「イヴ・サンローラン」
公演日程・場所:
2019年2月15日〜3月3日 よみうり大手町ホール
2019年3月3日 阪急中ホール
作・演出:荻田浩一
音楽:斉藤恒芳
衣裳:朝月真次郎
出演:
東山義久、海宝直人、上原理生、大山真志、川原一馬、安寿ミラ他
チケット発売日:一般発売 2018年12月9日
企画・製作:M・G・H ニッポン放送
制作:ミュージカル「イヴ・サンローラン」制作カンパニー
公式サイト:https://www.yume-monsho.com
取材・文:Hiromi Koh