タクフェス第6弾 『あいあい傘』人は肩と肩を寄せ合い、生きていく、そこには愛と想いが満ちている

タクフェス第6弾 『あいあい傘』、映画の方も絶賛上演中、舞台は東京公演が11月2日より始まる。物語は、とある田舎町で起こる、父と娘の再会の物語。娘の高島さつきは、自分が幼い頃に失踪した父親・六郎を探して、恋園町へやってくる。しかし、六郎には新しい家族がいて…。
映画も公開中、回想シーンはモノクロで描かれる。六郎には家族がいてささやかな幸せに包まれていた。誕生日の小さい一人娘からのプレゼントは手書きの肩たたき券とメッセージカード。たどたどしい字で「お誕生日おめでとう」と書かれているこのカードは六郎の大切な宝物だ。しかし、そんな平凡だがかけがえのない幸せが・・・・・・・。時は流れ、ある出来事から25年経ったある日のこと。恋園町に高島さつき(映画版:倉科カナ)がやってくる。突然いなくなった父を探しに・・・・・・。
舞台は越村友一が映画と同役で出演しているが、それ以外の役は俳優が異なるので(役の設定も一部異なる)、そこも見所となる。

恒例の前説、ここで様々なインフォメーションがあるので早めに席につくことをおススメする。いつものことではあるがカーテンコールは撮影OKタイムとなる。

(c) タクフェス製作委員会/曳野若菜

幕開き、赤いジャージを着た少年とその父親が登場する。仲の良さそうな掛け合い、少年の名は雨宮清太郎(柿澤仁誠、佐田 照:Wキャスト)、父親は虎蔵(宅間孝行)。この親子の会話が楽しく、思わず、見入ってしまう。そこへ怪しい男!なにやらカバンの中を物色するも虎蔵に見つかってしまう。彼の名は車海老貫一(モト冬樹)、髪の毛がやたらふさふさしているので、登場した途端に笑いが起こってしまう場面だ。雷鳴、時折、カバンを抱えた男が通る・・・・・・彼は・・・・・・。「あの人、本気で死ぬ気ですよ」と貫一。この偶然の出会いが物語の発端となる。場面変わって現代、一転、明るい空気感に。大学教授の滑川秀樹(越村友一)がいる。巫女の松岡麻衣子(前島亜美)が神社を掃除している。ヒデコ(鈴木紗理奈)と竹内力也(竹財輝之助)、かつての悪ガキ、仲良し、一緒にテキ屋をやっている。ワイワイ、ガヤガヤと賑やかな連中だ。船田くん(大藪丘)がビールケースを抱えてやってくる。メガネをかけた、ちょっと気弱っぽい、優しげな感じで登場する。どこかにリアルにありそうな光景だ。そこへ、ちょっと訳がありそうな若い女性が大きなバッグを持ってやってくる。彼女の名は高島さつき(星野真里)、神社にある茶屋を興味深そうに見ているものの、入る勇気がない感じ。そこへ雨宮清太郎(宅間孝行)がやってくる。清太郎はさつきを見るなり、思わず「可愛い!」と一目惚れ、テンションアゲアゲ!ここは、もう笑うしかない場面。そこへ神主見習いの敏男(弓削智久)、なかなか強烈なキャラクターだ。

(c) タクフェス製作委員会/曳野若菜

(c) タクフェス製作委員会/曳野若菜

人と人との縁、清太郎はヒデコたちと屋台の準備をしているところに車海老がやってくる、長い時を経ての再会、心温まる瞬間だ。そしてメインではないが、脇キャラのストーリー、滑川は麻衣子が好きなのだが・・・・・結果は・・・・・・(すごい歌を聴かせてくれる!)。またビールを届けに来る船田くんもまた・・・・・・。その当の麻衣子は、特に父親である六郎(永島敏行)に対して反抗的な態度をとる。実は六郎は麻衣子の実の父親ではなく、母の玉枝(川原亜矢子)と六郎は内縁関係、一見、普通の親子に見えるが、そうではない。六郎には残してきた家族があり、その家族のことは片時も忘れたことはなかった・・・・・。

(c) タクフェス製作委員会/曳野若菜

人間関係とそれぞれの過去や想いが絡み合い、出会い、それがタペストリーのようににおりなしていく。さつきは自分たち家族の元を突然去った父親を探し、この神社にたどり着いた。「父に会いに来ました。できれば連れ戻したい」というさつき。何十年も会っていない父親に対してやるせない想いがあり、思わず感情を爆発させる。清太郎たちはそれぞれのことを案じつつ、画策してみるが・・・・・。この物語の傍観者的な車海老が言う「過去はどうでもいい。今、どうあるべきか」「神社は神様の懐みたいなもんだよ」と。時を超えた出会いと愛、小道具は『傘』、それが随所に出てくる。テキ屋の3人が準備している屋台の一つは傘を売る屋台、最初の場面も雷鳴が轟き、雨がぱらつく、そしてテキ屋の虎蔵親子の名前は『雨宮』、傘は雨をしのぐだけではない。傘をそっと差し出す、一つの傘に二人、肩を寄せ合って入る、あいあい傘、漢字で書くと『相合傘』実は江戸時代からある言葉。必然的に肩を寄せ合い濡れないように一つの傘に入る。人は肩寄せ合い生きている。そして濡れないように思いやりを持ちながら傘をさす。タイトルに込められた想い、登場人物は皆、どこかにいそうな普通の人々で、悪人も出てこないし、いろんな意味で肩寄せ合って生きている。さつきの「元気でいてください」は染み入る言葉だ。恋園神社の年に一度のお祭りに起こるちょっとした出来事、見終わった後は心が温かくなる。キャストも適材適所、そしてところどころ映画版とは設定や状況が異なる場面があるので、『ネタバレじゃん!』と思わずに両方観るとこの物語がさらに立体的に見える。そして映画版と舞台版の表現やキャストの違いなどもチェックすると面白さは倍増する。

(c) タクフェス製作委員会/曳野若菜

舞台の方は『本編』終了後に恒例のダンスタイム!モト冬樹は踊らずに華麗なギターテクニックを披露してくれるので、ここも要チェック!

ゲネプロ後に囲み会見が行われた。メインキャストが全員登場し、まずはフォトセッション。
作・演出・出演の宅間孝行は「旅をしながら商売をする露店商のメンバーを演じます。(キャスティングについてきかれると、キャストから「スケジュールが合ってたから?」と笑いが出る場面も)とても今回のキャラクターははまっていて、例年に比べてとてもスムーズにけいこができた。今までが、ということではないが、今回はより、まとまりよく進んでまいりました」と語る。
主演の星野真里は「地方を回ってきたので、初日という気がしていないのですが、時間を経て東京に帰ってきたことで自信をもって帰って舞台に立てると思っています。さらに良いものを届けられると思う」とコメント。
鈴木紗理奈は「みんなに食らいついていく気持ちで頑張っています」と語る。ちなみに稽古エピソードで宅間孝行から「うまくいかない時があってご飯食べに行こうっていう時にうまくいかないと言って一人で残って練習してできるようになっていた」と暴露すると、本人は「してねーよ」といい一同爆笑。
この作品のメインキャラクター・六郎を演じている永島敏行は「僕も娘がいて心が動きます。宅間演出は、お客さんを意識しないで、ただそこに生きている人を見てもらうというもの。お客さんを意識せずに演じられるということが、とても楽しいと思っています」と絶賛した。
モト冬樹も「この話がとても大好きですが、あまり物語にはいるかいらないか分からない車海老という役柄を演じます。自分自身も、“変則的な”髪形で頑張ります!」とコメント(最初は髪の毛ふさふさ!)。
川原亜矢子は「恋園神社でお茶屋さんを営み、永島さん演じる“六さん”と娘と住んでいます。意気込みは、200%お芝居し、千秋楽まで頑張りたい」と意気込む。皆、この「タクフェス」に参加するのが楽しい様子。
前島亜美は「タクフェス初参加で、稽古場の段階から、みんなで筋トレやったり炊飯器で一緒にご飯食べたり、驚くことが多かった。地方公演を回っているなかで、驚くほど老若男女の方にたくさん観ていただけていて、会場が温かいことにとても驚きました。家族愛の物語なので、しっかりとお届けられるように」と語る。
大藪丘は「酒屋の息子、船田君役を演じます。麻衣子が大好きな男の子の役です。参加させていただき嬉しいです!」とストレートな発言。
竹財輝之助は「宅間さんの演出は毎日、公演ごとにブラッシュアップされていくので、これからも、もちろん今までも、さらに1.2倍、1.5倍と何倍にもなるお芝居ですので、一人でも多くのお客様に楽しんでもらいたいと思います。」とアピール。
弓削智久は「「神主見習いの敏夫役を演じます。宅間さんに頭が上がらない役なので、非常にやりやすいです。先輩、同年代、年下の世代のキャストと会えたことがうれしく、この素敵なメンバーで演じていけて嬉しい。観に来る方にも大切な一日なることを祈っています」とカンパニーの良さをコメント。ちなみこのキャラクターは映画版には登場せず。また船田くんの役も映画版では設定が異なるので、ここは要チェックを。
越村友一は「恋する大学教授。舞台の方が時間をかけて稽古をするのでキャラクターの濃さは強く、映画は逆に瞬発力がいるかなと。舞台と映画演出家が同じ、という珍しい作品になっていますので、ぜひご覧ください」とPR、舞台上でいきなりタキシード姿で伴奏なしで歌うが、恋する男には怖いものなし!なシーンに注目。映画版ではラスト近くで滑川に『春』が!!!
恒例になったダンスタイムについて永島敏行は「初めて舞台上で踊りました!居残り練習しました。できないんだもん!フォークダンスもやったことないのに!」(練習の成果とやらは舞台上で是非!ご確認を!)、それに対して宅間孝行は「超感動しました!」さらに星野真里も「楽しいです、ダンス!」悩める役どころなので、ダンスシーンでは大いに弾けていたのが印象的。

地方公演から始まった今回の「タクフェス」、結束も固く、こなれた印象。不器用な人々が織り成す愛と思いやりの物語、ちなみに会場となっているサンシャイン劇場、この劇場と上演映画館も近いので、続けて観るのも一興だ。

【公演概要】
タイトル: タクフェス第6弾『あいあい傘』
<公演日程・場所>
2018年11月2日(金)~11日(日) 東京都 サンシャイン劇場
2018年11月15日(木) 新潟県 りゅーとぴあ・劇場
2018年11月18日(日) 広島県 はつかいち文化ホールさくらぴあ大ホール
2018年11月23日(金・祝)・24日(土) 北海道 道新ホール
2018年11月30日(金)~12月4日(火) 大阪府 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2018年12月6日(木)~9日(日) 愛知県 ウィンクあいち
出演: 星野真里 宅間孝行/鈴木紗理奈/竹財輝之助 弓削智久 大薮 丘
前島亜美 越村友一 柿澤仁誠(Wキャスト) 佐田 照(Wキャスト)/モト冬樹 川原亜矢子/永島敏行
作・演出: 宅間孝行
協力: テイクオフ
企画: タクフェス
製作: ネルケプランニング、エイベックス・エンタテインメント
HP: http://takufes.jp/aiaigasa/
公式twitter:https://twitter.com/taku_fes_japan

【映画概要】

出演:倉科カナ 市原隼人
入山杏奈 高橋メアリージュン やべきょうすけ 布川隼汰 永井大 金田明夫 大和田獏 / トミーズ雅 立川談春 原田知世

監督・脚本:宅間孝行

制作プロダクション:FILM 配給:S・D・P

(c)2018映画「あいあい傘」製作委員会

公式サイト:http://aiai-gasa.com

公式Twitter:https://twitter.com/aiaigasamovie

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公式Instagram:@aiaigasamovie

10月26日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

取材・文:Hiromi Koh