タクフェス“新”シリーズ第2弾 タクフェス春のコメディ祭!「笑う巨塔」 脚本・演出・出演:宅間孝行、巨塔感ゼロの「笑う巨塔」、特別インタビュー

 

 一言で言えば多才、マルチに活動している宅間孝行さん。俳優・演出家・脚本家と様々な顔を持つ。2月にはライブも敢行、題して「タクフェス冬のバンド祭り コントもあるよ‼~武道館への道vol.1~」、そして、リピーター率も高いと言われている舞台「タクフェス」宅間孝行の「タク」にフェスティバルの「フェス」、聞いただけで楽しそうな響き、この3月はタクフェス春のコメディ祭!「笑う巨塔」、これだけで、きっと面白い!と確信出来るタイトル、精力的に活動している宅間孝行さんにお話を伺ってみた。

 

「僕らは『お祭り騒ぎをします』……それが僕にとって“フェス”」

 まずは演劇に対しては「自分もそれこそ、若い頃に凄くアレルギーがあったジャンル」と発言。確かに“演劇”という言葉の響きからしてちょっと難しそうなイメージを持たれやすいのは否めない。続けて「かつて芝居見物と言われるものが劇場で幕の内弁当を食べたり、掛け声かけたりとか、そういうのを含めてなんか、もっと晴れやかなエンターテイメントっていうか、ハレの場のような気がして、お着物着て、お芝居見物しますよ、じゃないけれど、何かワクワク感があるライブ空間であったりしたはずなのに、最近、演劇って『しゃべるな』『飲むな』『席立つな』『黙って観てろ』……に近い空気感みたいなのが感じないこともなくって、入って来て、芝居始まるまで客入れの音楽もなく、しーんとしているところで、お客様が堅くなっていく感じっていうか~待っている時間も含めて、なんですけど。高い金取ってるわりには客に優しくねーなと。お芝居する側、演劇する側が客を選んでいるなと。『そういうのがいやだったら、来なくっていいよ』みたいな。そうじゃなくっていいんじゃないかな?」と自身の考えを述べてくれた。江戸時代は芝居は完全に娯楽、皆、お洒落をしてお弁当にお菓子の準備もしていたらしい。そう考えると“タクフェス”はそういった本来楽しい芝居見物の要素を持っているとも言える。

 

 

「僕達はライブであるこの空間を楽しめる集団でありたいなって思うけれど、演劇っていうとアレルギーな人達がたくさんいる。それなら、僕らは『お祭り騒ぎをします』と……それが僕にとって“フェス”」と言い、続けて「中には『そういうの要らない』っていう方もいますが、ただ、結構な値段を取るので、ウチは、別に安くないし高過ぎでもない、絶妙なところだと思うんですが(笑)、とはいえ、ディズニーランドと一緒なんですよね、1日いますと。1日行けるディズニーランドに8000円払う……僕はその同じ価値があってしかるべきだと思うので、そういう意味ではお芝居やりながらも、そこに行くのが楽しみであって欲しいなと。そう思って頂きたいなっていうお祭り、1日のお祭り」と語る。

 ところで“春の~”と聞くと、この季節、スーパーやコンビニで見かける、ある食べ物を買ってシールを集めると素敵なものがもらえる、あの有名なキャンペーンを連想するが……。「ちょうど、これの『タイトルどうしましょうか』って言っていた『歌姫』の時にそんな話ばっかりしてたので~そこからの流れだと思います」と語り、さらに「昔はコメディは冬の時期にやっていたんですよね。冬にコメディやって夏に切ないのをやってという感じだったんですよね、僕達がまだ、小さいところでやっていた頃は。そういうサイクルでやっていたんですよ。まあ、なんか、こう……賑やかしとしては、春は語呂としてもいい感じ、うん」とコメントしてくれたが、やっぱり春はなんとなくウキウキする季節、タクフェス春のコメディ祭!、気分は上向きになりそうな。

 

 

 

「お客さんが声を出して、手を叩いて腹抱えて笑ってくれれば、そのためなら何でもやる!」

 そんな宅間孝行さんにとってのコメディ、「そういう風に向き合ったことはないんですけど、コメディ……あんまり、正直、深く考えていないっていうのもあるのですが、こう……見世物としては笑いは不可欠なものと思っているので、切ない作品をやるにしても笑いの要素がすごくあったりするのですが、コメディと謳っているからには、振り切っちゃっていいかな?と。そこでいくと、笑われているのが、役者のコメディだと思っているので、力技だろうなと思うのですが、どんな手を使おうが『笑わせたい』『笑われたい』みたいなところで、もう“なんでもあり!”、とにかくお客さんが声を出して、手を叩いて腹抱えて笑ってくれれば、そのためなら何でもやる!みたいな。そのためだけにやっている、凄い単純ですけど(笑)」と笑いに徹する。医学的には笑うことによって免疫力が上がるという記事は様々なところで目にする。「精神的な部分と身体はつながっている『病は気から』じゃないですけど。全て繋がっているような気がして……そこへいくと本当に、笑うと免疫力がアップするって言われていることは本気で信じていて、笑いにあふれている人生の人の方が素敵なんじゃないかと。顔つきが変わってきたりとか、そういうのもありますし、幸せ、『笑う門には福来る』じゃないですが、幸せになれるような気がする、侮ったものではないなと。単純に笑いっていうのはね」と語る。また、今回のタイトルのネーミングが「笑う巨塔」、病院が物語の舞台となる。

 「2003年に一番最初に作ったのが『HUNGRY』っていうタイトルだったんです。当時、何作るにせよタイトルが一番最初にないとっていう状態だったので~台本を書く前にタイトルを……コメディは英語単語をひとつで、切ない作品は日本語の単語ひとつっていう考えで作ったネーミングですけど。それで『HUNGRY』というタイトルをつけたんですよ。その前の『わらいのまち』は元は『JOKER』ってつけたんですけど……『JOKER』はギリギリ、セーフかな?と思ったんですが、『HUNGRY』は完全にOUTぐらいにタイトルと作品の内容が合ってなくて無理矢理こじつけているところがあるんです。そこで、コメディシリーズに関しては全部、原題を改題した方がいいなと。タイトルに“笑い”みたいな言葉を入れようと思っていて、それで一作目は『わらいのまち』にしました。今回は病院のロビーで2時間弱、突っ走っていく話なんで。もちろんタイトルは『白い巨塔』のパロディで、そこから頂きました。話はロビーでしか展開しないんで“巨塔感ゼロ”なんですけど(笑)」

 

 

「今回は“鼻からピーナッツ”を見たいんじゃないかと。それをあえて封印する理由がない」

 ところで、宅間孝行さんが創る芝居にはある共通点がある。それは場所は変わらない、ということ。つまりワンシチュエーション、時間の行きつ戻りつの表現等、こういった形式のものは演出側からすると実は難易度は高い。それに対しては正直に「難しいですよ~」と回答。しかし、どんなに難しくてもここにこだわりを持つ。「僕は基本的には芝居に関しては1セットでやりたい、セットチェンジがないんです。その代わり、セットを作りこむっていうことをやりたくって。それは何故かというとなるべく舞台空間を作り込みたい。それは空間を生っぽくしたい。リアルにしたいっていう思いがあってずっとそうなんですけど。全て1セットの中で生きるとなると、本当に時間経過でしか表現出来ないんですよ。コメディに関しては。その縛りも取っ払って暗転無しで時間軸そのもので、ワンシチュエーションのシチュエーションコメディを作ろうということで、当時もそういうつもりで作ったんです」シチュエーションコメディ、場所は1箇所で出たり入ったり、上手下手も含めて出入り出来るところが複数あり、交錯するところやすれ違うことによって生じる勘違いとか、本当は会った方がいいのに会わなかったり……そういった笑いの構造となる。ここは観てのお楽しみだが、それにしても出演する方々が本当に濃い!

「皆さんがアクの強いタイプの人達なので、その人達をどうやって生かせるのかな?というのがあります。俳優さんにその役として生きていくことを常にお願いする、求めるっていうか、そういう考え方なんですが、今回のメンバーに限っていえば、ギリギリの線はあった方がお客さんはコメディとしては喜ぶのかな?っていうか~役はもちろんあって、物語を背負っている。背負っていなくちゃいけないんですが、演じている人のタレント性がなかなか強いので、そこを消して芝居してもらうことが本当に最善かどうか、その“出し引き”のバランスは考えながらやろうと思っています。ただ、観にきてくれる人は絶対に期待していると思うんですね。今回は“鼻からピーナッツ”を見たいんじゃないかと。それをあえて封印する理由がない……梅ちゃん以外の人で全員でやるとか、梅ちゃんにだけやらせない!(笑)も含めてちょっとそういういじり方はありなんじゃないかな?……鳥居さんの暴走の仕方も、枠にはめない、これがファンには魅力なんでしょうし、そこらへんのさじ加減は稽古入ってみてからですが、このアクの強い人達の其々のベクトルが収まり切らないことの魅力を引っぱり出せると思うので、お客さんにこの座組感、たぶん、各々の魅力、その人がどこまで弾けるか注目してもらえれば」と語るが、個性的という言葉にハマらない方々に対して宅間孝行さんは「だから稽古が心配なんですよね(笑)。10年若かったら押さえ切れないかもしれないですよ(笑)みんなが僕の言う事を聞くのがいいのか悪いのかみたいなところもあります。変な言い方ですが、言う事を聞かなくっていいみたいなところもあるかな?」と笑う。しかし、これだけの面子が揃えば面白くならざるを得ない、相当な期待感!宅間孝行は「その期待を背負って来て頂いて大丈夫だと思います」と胸を張る。

「感謝の気持ちを込めて踊ります!」

 詳しくは劇場で!ということだが、芝居はとにかくライブ、宅間孝行さんは最後に「基本的なスタイルとしては劇場に来て、いかに生(ナマ)が、ライブが楽しいかということを体験してもらうこと。今回のフェス、そこがさらに楽しんで頂ける……皆さん、サービス精神が旺盛なタレント性のある人達なので、より、お客さんがライブを楽しめるには生がうってつけの人達だらけ!テレビで観るより生の方が面白い人達が揃っているので、そんな生を体感して頂きたいと思っています!!」そして恒例のダンスタイムについては「ハイ!梅ちゃんもWAHAHA(本舗)でやっているし、コメディなんで、かとうかずこさんにもガンガンに踊ってもらう(笑)ぶっちゃけ、WAHAHAのパクリ(笑)!やっているのを観て凄い素敵だなと。こういうのを本当に楽しみにきている人達にとっては最後のあれって凄く心地いい。盛り上がって!基本的に僕らがやっている芝居を楽しみに来ているし、僕らも来てもらいたくってやっている。その楽しみに来ている人達に感謝の気持ちを込めて踊ります!役の範囲内でありながらちょっとサービスっていうのかな?僕らはタイトルバックのつもりですが、そこらへんも楽しみだと思います!」と締めくくった。巨塔感ゼロの「笑う巨塔」、最後の最後まで、きっと笑いが止まらない!

 

 

【ストーリー】
東京はとある所にある「四王病院」。この病院には様々な人が入院していた。総選挙を間近に控えた山之内代議士が突然倒れ運び込まれた。山之内の息子であり、父親の秘書も務める蓮太郎と秘書として長年仕える芥川、新人秘書のあゆみの3人は検査の結果をやきもきしながら待ちわびていた。検査の結果、単なる疲労と分かり胸をなでおろす3人だったが、総裁選を前に健康問題を対立候補陣営につつかれてはまずいと、入院の事実を党本部に隠そうとその場しのぎの言い訳を…。

一方、頑固で意地っ張りの典型的な江戸っ子のとび職の親方、花田浩美は検査の為入院していた。家族も本人も大病かと心配したが、結果は軽い胃潰瘍。調子づき、たまの入院生活でわがまま三昧の浩美。そこに一人の男が見舞いにやって来る。昔、浩美の元で修行をしていた富雄が数年振りに現れたのだ。しかしこの男、とんでもない迷惑者。富雄との再会に喜ぶのは浩美の娘、ふみばかり。そんな中、軽い胃潰瘍だと思っていた浩美の病状が実は…。

また、政界の古狸、浜惣こと浜村惣一朗は秘書を連れ親友である元横綱、三子山親方を見舞いに来ていた。
総裁選を控えた大事な時期に仕事をほったらかすなど相手陣営に知れたらとやきもきする秘書をよそにばれる訳がないと意気揚々の浜惣であったが…。

患者、見舞い客、医者、看護師、水道屋…様々な想いや事情が交錯し、平穏だった病院はとんでもない事態に…。

 

 

【公演データ】

 タクフェス 春のコメディ祭!「笑う巨塔」

東京公演:2018年3月29日(木)~4月8日(日) 全12回公演

東京グローブ座

愛知公演:2018年4月13日(金)~ 4月15日(日) 全4回公演

ウインクあいち 大ホール

兵庫公演:2018年4月17日(火)~4月22日(日)

全7回公演

兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

愛媛公演:2018年4月24日(火)

ひめぎんホール サブホール

福井公演:2018年4月30日(月・休)

越前市文化センター 大ホール

作・演出:宅間孝行

出演:宅間孝行 篠田麻里子 松本享恭 / 石井愃一 梅垣義明 / かとうかず子 鳥居みゆき / 片岡鶴太郎 他

http://takufes.jp/kyotou/

文:Hiromi Koh

撮影(宅間孝行):阿久津知宏