吸血鬼の物語は古今東西、多く存在する。この『DIABOLIK LOVERS』(ディアボリック ラヴァーズ)もまた、ヴァンパイア、しかもドS!な兄弟と主人公の少女・小森ユイの過激かつピュアな恋愛模様を描いており、ゲーム、アニメ等多角的に展開している人気コンテンツだ。2013年にアニメ化され、2015年には続編の『DIABOLIK LOVERS MORE,BLOOD』がアニメ放送されている。初舞台化は、2015年の8月、最初のアニメに沿った物語が展開、品川の六行会ホールという小振りの空間で濃密な愛憎劇が展開された。今回の舞台は基本的にはアニメ第2期に沿ったストーリー、逆巻兄弟と小森ユイの他に無神兄弟が登場する。
天井にはシャンデリアに赤い電球がランダムにつり下げられている。気分はヴァンパイアの館。開演前から雰囲気を盛り上げる楽曲が静かに流れ、それからクレッシェンドになり、幕開き、となる。ヒロインが1人、ポツンと佇み、客席通路から逆巻兄弟が1人ずつ登場、決め台詞を言って舞台上にあがる。客席も含めた劇場全部がこの“ディアラヴァ”の世界になる。曲は一転してワルツに変わる。そして今回の舞台では初登場の無神兄弟、皆、逆巻兄弟に負けないくらい個性的な4人だ。ヒロイン・ユイに向かって「やっと会えたね」と意味深な言葉。そしてテーマ曲の後、“本編”という趣向。ユイが目を覚ますとそこは見知らぬところ。そう、無神兄弟がユイを拉致したのであった。「ここに住むんだよ」と言われて「帰ります!」と言うユイ。しかし、もちろん帰れるはずもなく……。
無神ルキは参謀系ドS、無神コウはユイを“エム猫ちゃん”と呼び、アイドル系なドS、無神ユーマは野生系ドSだが、家庭菜園が趣味、無神アズサは弱気系なドS、皆、変わり者であることは違いないが、監禁されているユイはそんな無神兄弟が気になっていく。逆巻兄弟は、もちろんユイが心配、彼女を連れ戻そうとするが……。
官能的で耽美な世界、吸血シーンはどこかエロチックで、舞台は生身の俳優が演じているだけあって、かなりなリアル感。初演はアンサンブルが戦いのシーン等で活躍していたが、今回はシンプルに小森ユイと逆巻兄弟、無神兄弟だけになっている。キャラクターのやり取りに重点を置き、心理描写を細かくしている。もちろん、初演と同じく、プロジェクション・マッピングのようなハイテクは使わず、あくまでも“俳優勝負”。ユイは見た目は可憐で可愛らしいが、ヴァンパイアを恐れながらも対等に接しており、また彼らを理解しようとする姿勢、それが彼らの心を動かす。
俳優陣も世界観とキャラクターはキッチリと踏襲、ヴァンパイア達は相当に個性が強いが、その言動は純粋で共感も出来る。ユイは見た目に反して肝が座っている。逆巻兄弟と無神兄弟、当然のことながらユイを巡って対立するが、その行く末は……。
円形の舞台を有効にしかも想像力豊かに使う。円形の舞台の周りに俳優が座る、丸い舞台はテーブルのようだし、途中でドーナッツ型になり、その中央にユイが“囚われの身”で閉じ込められたり、と縦横無尽だ。セットがシンプルな割に色々と変化、見どころはやはり吸血シーン。照明が赤く変化し、吸血というよりも愛のシーン的なニュアンスもあってここは“マジック”。またアニメにもあるが無神兄弟が海老フライや蟹クリームコロッケを取り合うシーンがある。微笑ましくもクスリと笑える場面、海老や蟹は甲殻類で“血のない魚介類”、洒落も効いている。
ラストは初演と同じく、キッチリと“落とし前”をつけている訳ではなく、“続く”という雰囲気。ヴァンパイア達とユイの物語、愛の顛末は?それはまだ、わからない。
【公演データ】
舞台「DIABOLIK LOVERS MORE,BLOOD」
期間:2018年1月24日(水)~28日(日) 全8公演
会場:クラブeX(品川)
原作:オトメイト(アイデアファクトリー・Rejet)
原作協力:DIABOLIK LOVERS MB PROJECT
演出:なるせゆうせい
脚本:太田ぐいや
キャスト:逆巻アヤト役:荒一陽、逆巻カナト役:佐藤友咲、逆巻ライト役:井深克彦、
逆巻シュウ役:小波津亜廉、逆巻レイジ役:和合真一、逆巻スバル役:高本学、
無神ルキ役:斉藤秀翼、無神コウ役:杉山真宏、
無神ユーマ役:遊馬晃祐、無神アズサ役:西野太盛、小森ユイ役:高宗歩未
※DVD発売決定!
DVD 舞台「DIABOLIK LOVERS MORE,BLOOD」
価格:¥8,056+税
発売:2018/04/25(水)
初回特典:・キャストブロマイド ・イベント参加抽選応募券
©Rejet・IDEA FACTORY/DIABOLIK LOVERS MB PROJECT
©舞台「DIABOLIK LOVERS MB」製作委員会
文:Hiromi Koh