舞台「おおきく振りかぶって」、早くもDVD化決定!発売は6月6日!

 「おおきく振りかぶって」は、他の野球マンガとは一線を画す。物語の中心人物は「弱気で卑屈」な性格ですぐに涙ぐむ。性格や心理描写は細かく、2007年には第31回講談社漫画賞一般部門受賞、文化庁メディア芸術祭10周年記念企画「日本のメディア芸術100選」マンガ部門に選出されている。そんな訳で「全く新しいタイプの野球漫画」と評されている。

 

 主人公の三橋 廉は中学校時代は祖父の経営する三星学園の野球部でエースだった。しかし「贔屓」でエースをやらせてもらっているとみなされ、野球部では疎まれてしまっていた。それで極端に暗く、自虐的な性格になってしまった。舞台の冒頭で、学ラン姿の三橋1人が登場し、頭を抱える。こだまする声はかつてのチームメイトの厳しい言葉だ。その状況から逃げ出したい一心で、埼玉県にある西浦高校に入学する。しかし、たまたま野球部の監督である百枝まりあに強引に野球部に入部させられるのだった。この年から軟式から硬式にかわり、よって部員は皆、一年生だ。そこで捕手の阿部隆也に見いだされ、彼とバッテリーを組むことになる。

 基本的にストーリーは原作通りに進行する。阿部は三橋に言う「オレがおまえをホントのエースにしてやる」と。ここから三橋の心が変化していく。

 上演時間の半分以上は試合のシーン。まずは三橋が通っていた三星学園との試合、これは百枝が三橋のトラウマを克服させるために仕組んだ練習試合だった。阿部は三橋のためにこの試合に勝って欲しいと他のメンバーに言うが、ここに阿部の男気と本気が見える。

 単行本では1~8巻までのストーリー、漫画は野球の試合の場面を丁寧に描いており、三橋や阿部、その他登場人物の心理状況を細かく描写している。もちろん、舞台でもここはきっちりと見せるので、登場する高校球児たちの思いが伝わってくる。スポットライトの使い方も効果的、また注目の「野球の試合って舞台でどう見せるの?」、舞台に野球場が出現、囲み会見で演出の成井豊が「ピッチャーゴロも距離が近いからセーフになってしまう」言ってたが、距離が短いので“投げる、打つ、走る”を表現するのには限界がある。ここは演出家、キャストが知恵を絞ってアイディアを出したとコメントしていたが、固定概念に囚われずに、迂回したり、立ち位置を工夫する等で、舞台という限界ある状況を克服、しかもマンガでは作画のコマの使い方でクローズアップしているところもそれが舞台上でもシンクロ、試合の緊迫した瞬間を上手く切り取って、舞台という制約ある場所をプラスに変えて、「おおきく振りかぶって」の独特の雰囲気を踏襲することに成功している。しかも映像も使わないアナログ表現も功を奏し、ヒューマンドラマに徹底したところは演出家の手腕。またキャストもキャラクターを体現、ヘタレで弱気、卑屈、泣き虫、自らを「ダメピー」と言ってしまう主人公・三橋 廉を演じる西銘駿は、なんとこれが舞台出演の第2回目にして主演、将来性を感じさせる俳優だが、やはり2回目にして主演というのは相当なプレッシャーであるのは容易に察しがつく。もはやベテランの猪野広樹が舞台上では頼もしいキャッチャー・阿部隆也として三橋 廉をフォロー、叱咤激励し、会見では常に西銘駿を気にかけて、時折優しく肩に手をかける、会見から2人の空気感が【三橋&阿部】、舞台が始まる前からもう「おおきく~」な空気感であった。脇を固めるチームメイト達、白又敦、納谷健、白又は、この舞台のためになんと頭を丸める!気合十分、納谷健は会見ではムードメーカーで終始笑顔、舞台上でも活躍、バック転等も披露してくれた。久住小春は会見では「やったことのない役」と語っていたが、舞台では男勝り、いや男以上の強気なキャラクター・百枝、1巻で見せる“お約束”感のある「生ジュース」シーンもバッチリ決まって掴みはOK!な感じであった。 

 

西浦高校のチームは最初は単なる寄せ集めではあったが、次第にチームとしてまとまってい き、その過程もさることながら、また彼らと対戦するチームもまた、試合を通じて内なる発見をしていくのが原作作品の魅力。野球を舞台上に再現するだけでも大変だが、それ以上にキャラクターの心情もあますことなく魅せる。スポーツの部活を描いた作品は数多くあるが、「おおきく振りかぶって」はいわゆるスポ根ものではない。そこに作品ファンは心惹かれる。西浦高校のその後の活躍もそうだが、三橋&阿部のバッテリーも再び、舞台上で観たいと思わせてくれる出来映えであった。

 ゲネプロ前に会見も執り行なわれたが、最初から笑顔、カンパニーのまとまりも感じさてくれた。

 西銘駿は「原作では表しきれていないシーンは舞台にはいっぱいあります」と語っていたが、生身の人間が演じる細かい表情等は舞台ならでは。また白又は「桐青高校のバッテリーのシーンが好き」と語る。桐青高校は甲子園も目指せるチーム、だからバッテリーもプライド高く、並々ならぬ意気込みであるが、ダークホースの西浦高校と対戦、原作を読めばわかるが、弱小高校に苦戦、相当なプレッシャーとなっていく。また納谷健は稽古後に「みんなで野球やるのが楽しかった」とコメント、カンパニーの仲の良さが伺えるエピソードだ。また久住小春は「マンガ知らないできた方には原作やアニメも観て欲しい」と語ったが、原作やアニメもチェックすると面白さは倍増。成井豊は「人間のドラマと22人の役、1人1人の人生の感情を!」とコメントしたが、登場人物全てに人生があり、喜怒哀楽がある。また西銘駿は「アニメを観て三橋の動きを研究した」とコメント、ここは注目ポイント。そんな西銘駿を観て猪野広樹は「人の垣根を越えていくタイプ」と評した。会見メンバーで野球経験者は西銘駿であるが、他のキャストも野球の動きを徹底研究、そして稽古後の野球の成果を魅せてくれた。

 また、早くもDVD化も決定、舞台はチケットがほぼ完売、観れなかったファンはDVDで!

 

【公演データ】

舞台「おおきく振りかぶって」

期間:2018年2月2日~2月12日

会場:サンシャイン劇場

 

原作:ひぐちアサ(講談社『月刊アフタヌーン』連載)

脚本・演出:成井豊(キャラメルボックス)

キャスト:西銘駿、猪野広樹、久住小春、白又敦、納谷健、竹鼻優太、安川純平、湯本健一、

亀井賢治、関根翔太、元木諒、澤田美紀、筒井俊作/金井成大、加藤潤一、松本祐一/

平田雄也、川隅美慎、島野知也/石渡真修、鶏冠井孝介、吉田英成

 

公式サイト:http://oofuri-stage.com

 

 

【舞台『おおきく振りかぶって』公演DVD詳細】
・タイトル:舞台「おおきく振りかぶって」DVD
・発売日:2018年 6月6日(水)予定
・価格:8,000円(税込)

<収録内容>
・本編
・特典 千秋楽カーテンコール・キャスト一言挨拶収録
・ブックレット(カラー、8ページ)
※内容は予告なく変更する場合がございます。予めご了承ください。

<仕様>DVD 16:9LB/片面2層 1枚/ドルビーデジタル(ステレオ)
<オンラインショップ>
・NAPPOS SHOP https://nappos.shop-pro.jp/

 

©ひぐちアサ・講談社/舞台「おおきく振りかぶって」製作委員会

 

文:Hiromi Koh