舞台「文豪とアルケミスト 余計者の挽歌(エレジー)」、「芥川先生のいるところ、どこまでも!!!!」(太宰治)

舞台「文豪とアルケミスト 余計者の挽歌(エレジー)」が 2019 年 2 月 21 日(木)よりシ アター1010 にて開幕した。
原作の「文豪とアルケミスト」は、人々の記憶から文学が奪われる前に、文豪と共に敵である”侵蝕者”から文学書を守り ぬくことを目指す DMM GAMES で配信中の文豪転生シミュレーションゲーム。
舞台「文豪とアルケミスト 余計者ノ挽歌(エレジー)」では好評につき京都での追加公演が決定、さらにチケットも完売、迫力の殺陣と、豪華キャスト9名が演じる文豪たちの関係や葛藤など、原作の華やかな世界観をそのままに舞台上でも!

ダンサー陣が手に本を持って登場し、文豪たちがそれを手にする。太宰治(平野良)が叫ぶ「また自殺未遂かーーーー」、近代文学史を知って入れば頷ける&笑える瞬間。無頼派、白樺派、国文学出身者ならもう常識と言っても過言ではない。「俺たちは何のために集められたんだ?」と。再び、現れた文豪たち、前世ではありえなかった再会だ。そして重大なことが・・・・・何と・・・・・作品が消滅する???作品が消滅したら作家も消滅を意味すると江戸川乱歩(和田真一)が説明する。それは大変!自分たちの作品を守るために!文豪たちは立ち上がる!というのがだいたいの概略だ。

近代文学史とそれにまつわるエピソードを知っていれば「ある、ある」とか頷いたり、あるいはクスリと笑ったりできる台詞やエピソードが散りばめられている。『自由軒』『ルパン』、という店が登場するが、これは実在の店で『自由軒』は明治43年創業のカレーで有名な店で織田作之助が昭和12〜13頃によく来店していたという。『ルパン』は銀座にあるバーで文豪がこよなく愛した店で今でも「太宰席」もあり、林忠彦の撮影位置や坂口安吾(小坂涼太郎)、織田作之助(陳内将)が座った椅子などはお店のバーテンダーに聞けば教えてくれるそうだ。

そして物語のキーになっている「芥川賞」、誰もが知っている最高峰の文学賞であるが、太宰治は芥川賞が欲しくて佐藤春夫や川端康成に手紙を書いたエピソードは有名、「私を見殺しにしないでください」と書いた手紙が見つかっている。そんなわけでここでも事あるごとに「芥川賞」にこだわる発言、そして芥川龍之介を敬愛する発言が出てくるのである。

作品を守るために戦う文豪たち、誰かの作品だけではない、もしかしたら自分の作品も、である。そしてここでは具体的には「鼻」(芥川龍之介)と「斜陽」(太宰治)の作品が登場する。「鼻」は芥川の初期の作品で人の嫉妬心や他人が不幸に陥ると笑ってしまう、そんな人間の心理をついたもので夏目漱石から絶賛されたもの。「斜陽」は太宰治のベストセラーで没落していく人々を描いた作品。戦後すぐの1946年に発表され「斜陽族」という言葉も生まれた。またその他の文豪、学習院の中等科で武者小路実篤と志賀直哉は親しくなる。よってここでも無二の親友として描かれている。

そんな文学の知識とゲームならではの『お約束』、「潜書」「有碍書」などの用語を覚えておけば世界観にすんなり入れる。またゲームがわからなくても冒頭に説明されるので大丈夫。

各文豪の性格と過去、作品群、関係性、これらが実に興味深く、また転生したからこその関係もまた面白い。そして見所の一つであるバトルシーンも!アクション、殺陣、ダンス、身体能力の高いアンサンブル陣の動きは目を見張る。そしてラスト近く、芥川龍之介(久保田秀敏)に異変が!太宰治はどうするのか、その他の文豪たちは???

アナログな演出、ラストは「そうきたか!」という展開、上演時間は約1時間50分ほど。スピード感溢れる展開、シンプルかつ高低のあるセットが様々な表情を見せる。太宰治は叫ぶ「芥川先生のいるところ、どこまでも!」。人は生きている限り誰かの力にもなり、誰かを傷つけることもある、文学作品は彼らにとって、いや我々にとって「生きる」という事を教えてくれる。エンタメの力を借りてそんな当たり前かもしれないが、大切な事を教えてくれる。それにしても太宰治のイメージが!会見で平野良が「賑やかし」とコメントしていたが、片時もじっとしていない!のがツボかもしれない。

ゲネプロ前に囲み会見が執り行われた。キャスト全員が登壇し、まずは挨拶、江戸川乱歩役の和合真一は「ストーリーテラー的存在」といい「あやしい感じでやりたい、あやしいの字は『妖艶』の『妖』です(笑)」とつかみはOK。佐藤春夫の小南光司は「先輩たちが多いので・・・・」とやや恐縮。また中原中也は酒乱の詩人であるが演じる深澤大河はお酒は飲みないそうで「梅酒ぐらいなら」とコメントしていたが、舞台上ではいつも酔っ払い。武者小路実篤役の杉江大志は「優しくっていい人の役」とコメント、ソフトな雰囲気でアクセントに。坂口安吾役の小坂涼太郎は「無頼派の3人の一人です。稽古場では仲良く3人で!そんな仲の良さが伝われば」とコメント。志賀直哉役の谷佳樹は「芥川と太宰の橋渡し的な役です。言葉と立ち回りで人物、物語を見せられるように」とコメントしたが、後半、志賀直哉の活躍に注目。織田作之助役の陳内将は「生粋の大阪人の役です」とコメント、そして「楽しくも儚い演劇になっています」と語るが、そこはかとなく漂う儚い空気感もあり、楽しく、笑ってドキドキして見られるエンタメだが、その奥深さがこの舞台の重要ポイント。芥川龍之介役の久保田秀敏は「僕が軸になっていて芥川の作品が消されてしまいます。そこで各文豪が戦う、葛藤もあります」とコメント、太宰治役の平野良は「浮き沈みの激しい気性です。怒られないかどうか心配(笑)」と語った。「またゲームをやった事のない方でも楽しめる」と和合真一。また舞台化発表時には大きな反響があったが杉江大志は「プレッシャーがあります」と正直に。小坂涼太郎は「めちゃくちゃ面白い!」と言い、谷佳樹は「稽古は命がけで・・・・熱量を見てください」と語る。そのアクションは必見、武器を振り回して!陳内将は「笑いの絶えないカンパニー」というが、この会見自体が笑いが止まらない!平野良は「演劇らしい演劇、人の力で見せる、文豪が主体で物語が文学的・・・・最年長ですが、こんな賑やかしの役がくるとは!(笑)」で締めて会見は和やかな雰囲気で終了した。

<あらすじ>
文学作品を守るためにこの世に再び転生した文豪たち。 親友たちとの再会、そして前世ではありえなかった出会いに喜ぶのもつかの間、 太宰のあこがれの人、芥川龍之介の作品が侵蝕される。 芥川先生の作品は俺が守る!と意気込み、仲間を引き連れ潜書する太宰だったが ――――。

<キャスト>
太宰治:平野良、織田作之助:陳内将、坂口安吾:小坂涼太郎、佐藤春夫:小南光司、中原中也:深澤大河、志賀直哉:谷佳樹、 武者小路実篤:杉江大志、江戸川乱歩:和合真一、芥川龍之介:久保田秀敏

【公演概要】
公演日程:
[東京]2019年2月21日(木)~28日(木) シアター1010
[京都]2019年3月9日(土)~10日(日) 京都劇場
原作:「文豪とアルケミスト」(DMM GAMES)
監修:DMM GAMES
世界観監修:イシイジロウ
脚本:なるせゆうせい
演出:吉谷光太郎
音楽:坂本英城(ノイジークローク) / tak
振付:MAMORU
アクション:奥住英明(T.P.O.office)
制作:ポリゴンマジック
主催:舞台「文豪とアルケミスト」製作委員会
公式HP:http://bunal-butai.com
公式Twitter:https://twitter.com/bunal_butai
©舞台「文豪とアルケミスト」製作委員会