原作コミックはもちろん、アニメも映画も大ヒットの「GANTZ」が満を持しての舞台化となった。舞台化されるのは1~12巻までとなる。
幕があくと、舞台上には無機質な太い鉄骨、ジャングルジムのようだ。ROCKな音楽が劇場いっぱいに鳴り響く。スクリーンに英文が流れる。シンプルな出だし、GANTZスーツを着た玄野計が「なんで、出てこないんだ!全員、死んだのか!?なあーー!」と慟哭に近い叫び声を上げる。原作を読んでいれば、胸がかきむしられるような感覚に陥る。
そこから一転して、普通の光景、和泉が新聞部から取材を受けている。ルックス良し、頭脳明晰で男女問わず人気のある和泉、「テロも戦争も嫌いだ」と平和を愛するといった爽やかな風情で答える。そんな和泉は玄野に問いかける「黒い玉の部屋って知ってる?」と。平静を装う玄野だが、実はかなり動揺している。ジャングルジムのような鉄骨が廻る。直径2メートルの黒い玉……これは……。
時間が遡り、とある駅。酔っぱらいがホームに転落する。「めんどくさいな」と思う玄野だが、そこに偶然居合わせた玄野のかつてのクラスメートである加藤、彼は酔っぱらいが放っとけない性格で線路に降りて救助を始める。彼の視界に飛び込んだ玄野の姿を見て「手伝ってくれ」、しぶしぶ手伝う玄野であったが、ホームに酔っぱらいを上げた瞬間、列車が滑り込んでくる。大慌てで逃げる2人、大きな音、叫び声を上げる玄野と加藤、暗転……2人はとある部屋にいた。「助かった!」ところが、西丈一郎が言う「君たちは死んだんだ」、ここはGANTZの部屋だった。そこに同じく命を落とした女の子がやってくる。そして……部屋にあった大きな黒い玉がしゃべり始めた……。ミッションが伝えられる「ねぎ星人を殺せ」と……。
ねぎ星人は奇妙な格好で、おまけに臭い!このねぎ星人を倒すべく、GANTZ部屋に連れてこられた面々が戦う。小ねぎ星人は片付いたが、強そうなねぎ星人が登場する。やくざ、タレント等がやられてしまった。スーツを着ているのは玄野、戦っているうちに気づく、力が!いつの間にか力がついていた。対等に戦える!と気づく瞬間、彼は笑みさえ浮かべてねぎ星人を倒す。西丈一郎が言う、「君、そのスーツ着て気持ちいいだろう!」答えられない玄野、一瞬であるが、彼は快感を感じたからだ。
原作もそうだが、たたみ掛けるような展開、舞台版は原作以上の疾走感で登場人物たちが駆け抜けていく。文字通りの意味ではなく、死後の人生を疾風のように生きて再び死へと急ぐ。照明、ノイズ音、ROCK音楽、GANTZ部屋に来る時のあの「ジジジ」、照明を駆使、本当に!あの原作通りで、ここは舞台ならではのマジック。ノイズ音で場面等が変わるのだが、あの世界観を聴覚的に感じさせる。鉄骨のひんやりとした見た目の【感触】も「GANTZ」の世界観を皮膚感覚で、触れる訳でもないのに何故か感じることが出来る。そして作品に貫かれている重く普遍的なテーマ、人は生まれ、生きて死ぬ。それでは何のために?何を目指しているのか、幸せとは何なのか、いくら考えても答え等出ない。それでも問いかける、玄野は言う「あのスーツを着れば俺は最強」と。「殺してやる!俺の生きる場所はここだ」と叫ぶ西丈一郎、彼は大きなダメージを負い死んでいくがその間際に「俺は死ぬのは嫌だ」と言い放つ。玄野は「俺たちは何のために戦っているのか」と問いかける。ここにこの作品の哲学がある。
そして再び、最初の場面に、和泉は言う「俺の持っているものに何の意味もない」と。そしてひたすら撃ちまくる、「生き甲斐のある場所」と言いながら。簡単に人を殺していく和泉。仲間が死んで心がキリキリと痛み、耐えきれなくなる玄野は和泉に銃口を向ける……。
この極限の状況で人は何を想うのだろうか、良心とはなんなのか、幸せとはなんなのか、作品が突きつける命題は重い。殺戮を繰り返し、そこに快感を覚えたら幸せなのか?疾風怒濤の2時間弱の芝居、見応えのある作品、続きも観たくなる内容であった。
【公演データ】
舞台「GANTZ:L ACT & ACTION STAGE」
期間:2018年1月26日~2月4日
会場:銀河劇場 (天王洲)
原作:奥浩哉「GANTZ」(集英社刊)
演出・脚本:鈴木勝秀
アクション:清水順二(30- DELUX)
出演:百名ヒロキ、高橋健介、浅川梨奈、佐藤永典/村瀬文宣(30-DELUX)、 影山達也、大原海輝 / 藤田玲 / 久保田悠来
公式サイト:http://gantz-l-stage.jp
文:Hiromi Koh