演出・鈴木勝秀×上口耕平、多和田任益らが問いかける“ドルーク(友達)”とは?『僕のド・るーク』ゲネプロレポート

2019年3月7日(木)に舞台『僕のド・るーク』が東京・オルタナティブシアターにて開幕した。2016年2月の『僕のリヴァ・る』から3年、、再び鈴木勝秀が上演台本・演出を務め、新たなテーマを題材にした3つのオムニバスストーリーが綴られる。
『僕のリヴァ・る』ではrivalをフランス語発音した“ライバル”をテーマに3つの兄弟の物語が描かれていたが、今作ではロシア語で“友達”を意味する“ドルーク”をテーマに、“木と少年の物語”、“サリエリとモーツァルト”、夏目漱石「こころ」を題材にした3つのオムニバスストーリーが描かれている。
出演は、上口耕平、多和田任益、辻本祐樹、小早川俊輔/井澤巧麻(W キャスト)、小林且弥/鎌苅健太(W キャスト)。初日当日に行われた公開ゲネプロには上口、多和田、辻本、小早川、小林が出演した。

村上春樹の翻訳で話題にもなった、アメリカの作家シェル・シルヴァスタインの絵本「おおきな木」を元にした“木と少年の物語”では、少年(小早川)が成長して老人になるまでを、温かく見守り続ける森の主(小林)の無償の愛と交流を描く。

“サリエリとモーツァルト”は、イギリスの劇作家ピーター・シェーファーの戯曲で、映画化もされた『アマデウス』がベース。宮廷楽長のサリエリが嫉妬から天才音楽家のモーツァルトを破滅させる物語であった『アマデウス』だが、本作では新たな視点を持ち込んで、サリエリ(上口)とモーツァルト(多和田)の嫉妬の果てにたどり着き理解者となっていく関係を笑いも交えながら舞台上に描き出している。

そして、夏目漱石の代表作でもある「こころ」では、語り部(小林)、先生(辻本)、私(多和田)、K(上口)らによって、親友への裏切りと人間の罪・自責の念が露わにされていく。静寂な舞台上に語られる親友との関係と、やがて訪れる緊張と緊迫のコントラストが目を奪うストーリーとなっている。

誰もが知る有名な作品をベースに時代や場所も様々なシチュエーションで、ある時は主人公に、またある時は木になりながら、入れ替わり立ち替わり登場人物となって現れては瞬時にキャラクターを演じ分けていく役者たち。

舞台上にはシンプルで必要最小限のものしか存在しない。笑い・慈愛・嫉妬・悲しみ・緊張と緊迫。鈴木の演出と俳優5人のセリフと演技のみによって構築される濃密な演劇空間が劇場に広がり、テーマとしての“ドルーク(友達)”が紡がれ、浮き彫りになっていく。

志を共にする相手、笑い合える仲間、悲しみを分かち合える人…利害関係の一致、競い合う相手、居場所の確認…大切なものであり、自分の存在を証明するものであり、けれど曖昧なものでもある“ともだち”という存在として、「友達とは何か?」と問いかけてくる本作。

当たり前のように存在しながらも、曖昧で答えのない存在をどう感じるのか。それぞれが劇場でぜひ感じ取ってほしい一作となっている。

なお、初日を迎えて上口からコメントが寄せられたので以下に紹介する。

上口耕平:お客様にまもなくこの作品をお届けできることがとても楽しみです。全バージョンぜひ観ていただきたいと心から思うほど、演者の皆さん1人1人の魅力的な部分が溢れています。シンプルなセットの中での会話劇。本編の中にある「演劇とはそういうものです」という言葉の通り、劇場中が皆様のイマジネーションで満たされることを願い、表現させていただきます!

【公演概要】
『僕のド・るーク』
日程・場所:2019年3月7日(木)~3月10日(日) オルタナティブシアター
上演台本・演出:鈴木勝秀
出 演:上口耕平、多和田任益、辻本祐樹、小早川俊輔/井澤巧麻(Wキャスト)、小林且弥/鎌苅健太(Wキャスト)
る・ひまわり公式HP:http://le-himawari.co.jp/
取材・文:櫻井宏充