舞台「こと~築地寿司物語~完全版」お客様が幸せになることが幸せ、場所が変わっても美味しい寿司を!

一昨年(第一作)、昨年(続編)と公演され両作共に劇場開館以来の来場者記録を打ち立てた舞台「こと~築地寿司物語~」、本年のNHKスペシャルでも伝説の女板前と紹介されている“中野里こと”をモデルにした物語の完全版が3月7日~10日、築地ブディストホールにて公演される。
脚本監修には大ヒット作品≪アンフェア≫シリーズ原作者であり、アニメ≪ルパン三世≫最新作も担当するなど大人気脚本家である秦建日子、脚本にきむらゆうかを迎え、総合演出は現代演劇界を代表する演劇人、唐十郎氏が育てた唯一の演出家、中野敦之、演出には中野とは幾度もコンビを組む笹浦暢大が担当。
主演は第一作より主人公の“こと”を演じる2002準ミスインターナショナル日本代表であり、つかこうへい門下の鳳恵弥、昨年の続編に続いての出演となる渡辺裕之、お笑いコンビ極楽とんぼの山本圭壱、現在は俳優として活動する元猿岩石の森脇和成などが出演。
主題歌はTMNETWORKの木根尚登氏が担当し、メインビジュアルはDr.コトー診療所の山田貴敏氏が第一作目より引き続き手がける。
時は現代から始まる。男3人、孝二朗(渡辺裕之)、その息子の秀平(森脇和成)、秀平の息子の恵太(上杉潤)が仏壇に向かって手をあわせるところから。この物語の舞台である築地玉寿司、市場が豊洲に移転する、その直前。手を合わせていたら、いきなり!仏壇から人が!この物語の主人公であるヒロイン・こと(鳳恵弥)である。テンション高く元気キャラだ。

それから物語が動き出す。東京大空襲、もちろん、寿司屋も何もかもが燃えてしまった。落ち込む人々、ことは燃えてしまった寿司屋の跡から夫である栄蔵(山本圭壱)の包丁を見つけ出す。「この築地で玉寿司を立て直す!」と決意する。そして戦後、店を切り盛りし、奮闘するヒロイン・こと、男性客から言われる、「女が握った寿司なんか食えるか!」と。そんなある日、ある男性客がやってくる。「マグロを握ってくれ」と言う。彼は寿司職人だった。名は矢沢源太(IKKAN)、「女の下で働けるかよと思った」と言い「俺が握ってやる」という。回想シーンで栄蔵が出てくる。ことと盃を交わしながら「お客が幸せになることが玉寿司の幸せ」という。

下町ならではの地域の人々、何かにつけて店にやってくる。ちょっと反抗期?の一人息子・孝二朗(少年時代・大場啓博)、叱る源太、実の親子のような関係。人が出たり入ったり、ちょっとドタバタな人情喜劇的な光景だ。
時代は行きつ戻りつ進行する。東京は幾度となく『危機』にさらされてきた。時代は大正の終わり、関東大震災、寿司屋はもちろん、魚河岸も壊滅的な打撃を受けた。この時代、魚河岸は築地ではなく日本橋にあった。この震災をきっかけにして市場は築地に移転したのだった。意外と知られていない話、移転したら商売できなくなると嘆く人々であったが、栄蔵は言う「築地でやり直すんだ!」と叫ぶ。

そして再び、店の場面、昨今、舞台の題材で人気のある戦国時代や幕末ではないので、ドラスティックな展開や派手な見せ場はない(せいぜい息子の孝二朗(森脇和成)が好きな女の子・典子(Ayano)と交換日記を交わしていたことぐらい)。玉寿司の店の日常、客がやってくる、寿司を出す、その繰り返しだが、そんな日常が実は大切なのだ。注文がくる、寿司を出す、客は美味しそうに食べる。たったそれだけのことであるが、ここに大きな意味がある。娘の弥生(Wキャスト:冬崎聖奈・植野祐美)が言う「私は玉寿司が好き」と。時折挿入される歌、ちょっとほのぼの系の、しかし元気が出る内容、主題歌になっている「今日が始まる」、なかなかにキャッチーな楽曲だ。


ラスト近く、ことの長台詞の中に珠玉の言葉が散りばめれている、「苦しいことはいっぱいある」「ゆっくりと頂上を目指せばいい」と。しみじみと、そして心に染み入る長台詞だ。
日本橋、築地と場所を変えながら営んできた店、場所が変わってもうまい寿司は変わらない、うまい寿司は人を元気にさせる。笑って、笑って、ちょっとほろり、そして元気になれる築地玉寿司を中心に展開される市井の人々の生きざま、そして玉寿司の暖簾を守ることを中心とした家族の頑張り、絆。それにしても舞台上にお寿司が出てきては、皆さん、美味しそうに食べる!またゲネプロではお客様役で4代目が登場し、アドリブで俳優陣とやりとり!
ゲネプロが終わり、4代目の中野里陽平から挨拶、「事実に基づいたところがいい脚本になった」とコメントし、「築地を愛し続けながらやっていきたいです」と語った。

その後は俳優陣らの囲み会見があった。
主演のことを演じる鳳恵弥は「ことさんという実在の女性を描いた作品ですが、周りの人々の人間模様も見所です。明治、大正、昭和、平成といきた人々の物語をしっかりとみなさまの心に残せるように、そのみなさまの心の中で生きていくことができたら次の世代に、ことさんであったり、築地で頑張った魚河岸の方々だったり、次の時代も生きて行けるのではないかと思います。この公演の成功にかかっているのではと思います。背負って頑張っていきたいです」と挨拶した。山本圭壱は「このゲネプロが私の中では初日だと思って!やっていたんで、全ステージ、初日のつもりで!」といい、隣で鳳恵弥が「素敵!」と思わず!「真っ白なキャンパスに色をつけたいなと思います」と山本圭壱、そこでさらに鳳恵弥が「かっこいい!」といいさらに!「鮮度が大事」と、お寿司の話だけに!渡辺裕之はそれを受けて「私は毎日が千秋楽と思って!あとがない!一期一会、その場で起きる現象が楽しくって」とコメント。渡辺裕之は語り部的なポジションで折に触れて登場する重要な役割を担うキャラクター。森脇和成は「実在する人物を演じる、本人が観ていらっしゃる前で!こういう風にお芝居をするのは初めてのこと。緊張がMAXです。今日もこれから一人で台本を100回読みます!」と意気込む。
演出の笹浦暢大は「皆さん、いろいろとやってくださったので感謝しています。とにかく個性的な方が多く、こういう人たちと作ってきた、というところに面白みを感じています。明日が楽しみです。ダメ出しは・・・・・・いっぱいあります(笑)」と語る。きむらゆうかは「このお芝居を描くに当たっては、いろいろと調べていったんですが、私は北海道の出身で築地の歴史はほとんど知らなかったんですが、日本橋の魚河岸・・・・・・調べまして知って、そこを描かせて欲しいと、会長からも場所が変わってもやることは変わらないと直接伺いまして、ここのホンに刻もうと描かせていただきました」と語る。秦建日子は「人間は忘れっぽい生き物だと思うんで、おそらく築地の前は日本橋だったっていうこともあっという間に忘れてしまう。知らない人も多いかもしれない現実、これが3年連続して上演されるのはすごく大事なことじゃないかな」と語る。鳳恵弥は「何度もやらせていただいて役者として嬉しいですが、でもまだまだ、たりていない。自分の人生の拠り所みたいな形になっています。一つの役を極める、一つ一つ間違えずに・・・・・」とコメント。山本圭壱は「ようやくつかめてきました。でも本当にいい役をいただいて、いいとこ取りで!・・・・・鳳さんを落としていきたい(笑)」と笑わせた。渡辺裕之は「芸人の方は独特の間、存在感はありますね、学びきれないエンターテイナーとして僕がないものをいっぱい持っていらっしゃる!」
最後に鳳恵弥は「素晴らしいメンツ、キャスト、スタッフの方々、脚本、演出、本当に関わっている皆さんの全ての力で!次の時代にしっかりと持っていけるように頑張ります!お待ちしております!」と締めくくって会見は終了した。

~物語概要~
東京大空襲の翌朝、焼け野原に立つひとりの女性“こと”。彼女は日本初の女性寿司店主であり、夫の栄蔵亡き後に自ら板場に立って店を切り盛りし、間も無く創業100年を迎える築地玉寿司の基礎を築いた女性。
伝説の女板前として知られる彼女を中心に、戦中戦後を強く明るく生き抜いた人々の、日本人の絆と暖かさをギューッと詰め込んで現代の全ての世代に贈る物語。

 

【公演概要】

舞台「こと~築地寿司物語~完全版」
[日時] 平成31年3月7日(木)~10日(日)
[場所] 築地ブディストホール

公式HP: