今、韓国演劇界でもっとも実力と人気を兼ね揃えた演出家の 1 人であるチョン・インチョルが、“ショートショートの神様”と 呼ばれ、今も幅広い世代に愛読され続けている SF 作家星新一の数ある傑作の中からセレクトした作品を、2017 年に韓 国ナショナル・シアターで舞台化。観客の圧倒的な支持を得て韓国でもっとも権威ある東亜演劇賞を 3 部門で受賞。 商業演劇から小劇場まで、幅広いジャンルの演劇作品がつくられている演劇都市ソウルで、トップの実力を誇る韓国ナショナル・シアターカンパニーがいよいよ東京芸術劇場に登場!
日本が誇り、韓国でも根強いファンを持つ人気作家星新一が書いた現代に生きる私たちに向けたメッセージとは?
<韓国ナショナル・シアターカンパニー>
韓国ナショナル・シアターカンパニーは、長い歴史を持つ、国営の重要なシアターカンパニーの一つである。1950 年 4 月に創立し、2020 年には 70 周年を迎える。ソウルに明洞芸術劇場と 2 つのスタジオ・シアターの 3 つの劇場を持ち、韓国 でもっとも多くの演劇を制作しており、新作のみならず、世界の古典を現代版に蘇らせて上演し、年間に 20 公演以上を制 作している。韓国ナショナル・シアターカンパニーは、韓国の演劇の中心として、伝統を受け継ぎ、近代演劇の新しい展望を 切り開いている。
<東亜演劇賞>
1964 年に東亜日報により創立された韓国でもっとも長い歴史を持つ演劇賞で、演劇の現場スタッフに支持されている。賞でありながらも、ニュー・コンセプト演劇賞(新しいアイディアを取り入れた前衛的な作品を創作する演出家に授与する) などを新たに設けるなど進化を続けている。演出家チョン・インチョルは第 54 回東亜演劇賞演出賞を受賞(2017 年の作 品・活動を対象に、2018 年 1 月受賞)。この部門では 2013 年に多田淳之介が『かもめ』や日韓合作の『カルメギ』 で、史上初の外国人受賞者になっている。
<脚色・演出:チョン・インチョル>
何年か前に、星新一さんの「ボッコちゃん」という作品に出会いました。それ は短い話でしたが、とても感動的で私は心を動かされました。その後、私はで きる限りの星さんの作品を読みあさったのですが、星さんの作品は、コメディ、 寓話、そして悲劇の 3 つのカテゴリーに分類できるということに気づきました。 星作品では、作者の人間味あふれた大きな愛情を感じることができます。星 さんの小説を舞台化する作業は、まるで星さんと対話でもしているような気 持ちでした。彼は、誠実で素晴らしい作家で、想像力溢れ、人への深い愛 情を持ち、これからやってくる未来を予言している作家です。
私は、ほとんどの星さんの作品を読んだのですが、数にしたら 1,000 作品 あまりを読んだことになります。私はそれらの作品の中で、近未来について書 いている悲劇作品に特に魅力を感じました。驚嘆すべきなのが、私たちの生 活スタイルが自分や周りの人、地球をも壊していく様子を書いた作家の温か さです。そのため、ソウルで公演した際の公演タイトルは、『I Am a Murderer(私は殺人者です)』と名づけました。その公演で私は、人間の 暗い未来を書いた悲劇を 7 つの作品のオムニバスからなる舞台にしました。
私が、演出家としてのキャリアをスタートさせたとき、蜷川幸雄さん、野田秀 樹さんの作品が本当に大好きでした。2 人の演出家のことを知るにつれて、 日本に住んでいる人たちについても興味を持ちました。演劇が、それほどの影 響を与えることを大変興味深く思いました。
日本では、星新一さんはとても有名な作家であると伺いました。韓国で上演 した際に、韓国の観客は、星新一さんが書いた人間の暗い未来を直視する ことに、かなりばつの悪さを感じたようでした。私は、日本の観客が私たちの舞 台にどのような反応をするのか、とても興味があります。
[脚色・演出 チョン・インチョル プロフィール]
チョン・インチョルは、2006 年の 『沈黙』で演出家としてのキャリ アをスタート。旧知の仲である劇 作家のキム・ウンサンと『スヌ伯 父さん』『シドン洋服店』『木蘭 姉さん』でコラボレーションし、高 く評価された。また、『黄色い封 筒』『ゲーム』では社会と政治の 矛盾を扱い、注目を浴びる。 2015 年にシアターカンパニー “ドルパグ”(突破口)を立ち 上げ活発に創作を続けている。
[CREATIVE TEAM]
原作:星新一
脚色・演出:Jun In-chul チョン・インチョル
字幕・コーディネーター:Jooyong Koh コ・ジュヨン
舞台美術 Park Sang-bong パク・サンボン
照明 Choi Boyun チェ・ボユン
衣裳 Kim Woo-seong キム・ウソン
メイク+小道具 Jang Kyoung-suk チャン・キョンスク
音楽&音響 Park Minsoo パク・ミンス
映像 Jung Byungmok チョン・ビョンモク
映像テクニカル・ディレクター Kim Sung-ha キム・ソンハ
振付 Keum Bae-sub クム・ベソプ
芸術監督 Lee Sung-yol イ・ソンヨル
製作 The National Theater Company of Korea(韓国ナショナル・シアターカンパニー)
表紙(原画)真鍋博「ミステリマガジン 1979 年 1 月号/早川書房」愛媛県美術館所蔵
[CAST]
Yoo Byung-hoon ユ・ビョンフン
Ahn Byung-sik アン・ビョンシク
Kim Myung-ki キム・ミョンギ
Lee Bong-ryun イ・ボンリョン
Kwon Il クォン・イル
Kim Jung-min キム・ジョンミン
Park Hee-jung パク・ヒジョン
[上演演目]
1. 「ボッコちゃん」(『ボッコちゃん』所収)
2. 「知人たち」(『たくさんのタブー』所収)
3. 「おーい でてこーい」(『ボッコちゃん』所収)
4. 「鏡」(『ボッコちゃん』所収)
5. 「宇宙の男たち」(『宇宙のあいさつ』所収)
6. 「ひとつの装置」(『妖精配給会社』所収)
【公演概要】
タイトル:『ボッコちゃん ~ 星新一 ショートショートセレクション ~』
作:星新一
脚色・演出 :チョン・インチョル
出演:韓国ナショナル・シアターカンパニー(National Theater Company of Korea)
韓国語上演・日本語字幕付/上演時間:90 分(休憩なし)
日程・場所:2019 年 5 月 30 日(木)~6 月 2 日(日) 東京芸術劇場シアターイースト
主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団) 東京都/アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)/豊島区
後援:駐日韓国文化院
助成:文化庁劇場文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会
協力:星ライブラリ/新潮社
(C)Nah Seung-yeol, provided by National Theater Company of Korea ※前回公演より