《特別対談》Rock Opera『R&J』 脚本・演出:鈴木勝秀×ジュリエット役:仲 万美

「ロミオ&ジュリエット」が全く新しいロックオペラとして構築される。世界中の人が知っている恋愛物語に挑む、脚本・演出の鈴木勝秀さんとジュリエット役の仲 万美さんに作品について語ってもらった。

「『ロミオ&ジュリエット』を好き勝手にやる、その攻撃的な感じがすごくいいなと思った」(鈴木勝秀)
「やるって決めたからには、思いっきりやるしかないな、と」(仲 万美)

――この作品に携わることになった感想を。
鈴木:面白そうだなって思ったのが大きな理由です。「ロミオ&ジュリエット」を好き勝手にやっていいと言われまして。その攻撃的な感じがすごくいいなと思いました。ロックを全面に押し出して、色々とやらせてもらおうかなと思っています。
:一番好きな映画が1996年公開の「ロミオ+ジュリエット」なんです。それもあってか、今回のお話を最初にいただいた時、言葉を全て失いました、「ポカーーーン」と。「演出家は鈴木勝秀さんで・・・・」説明していただいていたんですが、ほぼ記憶がなくって・・・・・頭が真っ白になってしまいました。しかし、やるって決めたからには、思いっきりやるしかない、死に物狂いで、やろうかなと思っています。
――映画、ストレートプレイ、ミュージカルなどなど、数え切れないくらいにいろんな「ロミオ&ジュリエット」がありますが、自身のそれぞれのイメージとか印象などをお願いいたします。
鈴木:いい意味で、馬鹿しか出てこない。だからこそ、愛しいという印象です。あと、ロミオとジュリエットが「一目惚れを信じ抜く」っていうのが肝だと思っています。僕は芝居をやる時にファーストインプレッションをものすごく大事にしています。そのファーストインプレッション、初めてお会いした瞬間の、最初に掴んだ印象、「(ここから)どういう風になっていくんだろうか」って・・・・・・僕はもうかなりのヒントをもらった感じがしますね。
――早いですね!
:(笑)
鈴木:でも言わない(笑)。言ってもしょうがないです。
:そうですね(笑)。
鈴木:この「一目惚れ」っていうのはとってもいいなと思っています。自分の好き嫌いというものは見た瞬間にわかるはずなんです。それなのに、「一目惚れ」が信じられなくなっちゃう、わからなくなるから、誰かにアドバイスをしてもらったり、『◯◯占い』をみたりする。最初の直感が本当に優れていれば、そういうものに頼らないないはず。僕は昔から言っている、「ピンときたから」。
:はい。
鈴木:「ピンときたから」っていうのがなかったらできない。プロデューサーに「この2人で」って言われた時にすごくピンときた。だから自分がピンときたことに関しては信じようと思っているし、今までもほとんど信じてきた、そこが大きなところですね。「ロミオ&ジュリエット」って2人が出会ってそのまま死ぬまでいっちゃう、そういうことを改めて「みなさん、信じられますか?」と、直感が鈍っていると間違ったものを手にする。直感はすごく大事なんです。
――そうですね。
鈴木:そのためには野生的なものをいつも磨いていなければいけない。
――「野性の勘」ですね。
鈴木:そう。体動かしている人は直感が優れていて、そういうことは大事だと思いますね。
:実はスズカツさんについて、元々『すごく怖い、お堅い』イメージがあったんです。でも、今回ご一緒することが決まり、改めてスズカツさんのことを知っている仲のいい役者さんに聞いたら「すごいアーティスティックな方だよ」って言われました。「あ、想像していた方と違う」と思い、今日お会いする前からすごく楽しみだったんです。実際にお会いしたらすごく笑ってくださるので、「この方から生まれるアーティスティックってどんなんだろう」って、今いろいろとお話を伺いながら考えています(笑)。
鈴木:どうなんでしょうね(笑)。

「自分ではオルタナティブロックオペラと」(鈴木)
「仲 万美がやるジュリエット!いい意味でみなさんの期待を裏切りたいな」(仲)

――今回はロックオペラってことですが、有名なところではミュージカル「ロミオ&ジュリエット」もありますが、現時点での構想を。
鈴木:ミュージカルっていうとお上品な感じがしちゃうじゃないですか。自分ではオルタナティブロックオペラと、要するに本流ではない、というような世界観で描きたいなと思っています。
――演じる方は楽しみですね。
:最初にお話が来た時は不安でしかたがなかったんです。今でも不安ですが、来るものは来るし、全てはなんとかなるって思っているんですよ。死に物狂いでやったら絶対になんとかなる!って。
鈴木:それはすごく正しい!
:超えられないものは絶対にない!来るものは来ますから、終えるものは終えますから「なんとかなる!」ってずっと思っているんですが、そこに気持ちが達しました!で、ジュリエットに対して色々考えていましたが、もはや皆さんが想像するジュリエットではない!みたいな。仲 万美がやるジュリエット!いい意味でみなさんの期待を裏切りたいな、「こういうジュリエットもあり!なんだね!」っていう風になれたらいいなって・・・・・やっと、今、そこに達した気持ちです。それまでは「マジかよ〜」って(笑)。
――演じる方もなんでもありですね。
:(笑)
鈴木:なんでも!
――演出家が「なんでもあり」っておっしゃっていますよ(笑)
:(笑)

「この『なんでもあり』って本当はすごく難しい。」(鈴木)
「好き勝手にやらせてもらいます!」(仲)

――プロデューサーが「好き勝手に」っていったのを受けて「なんでもあり」と演出家がおっしゃっているわけですからね。
鈴木:この「なんでもあり」って本当はすごく難しい。役者さんは舞台の上に立たされて、みんなに見られているので「これをやったら恥ずかしい」「これをやったらかっこ悪い」っていうことの責任を取らされてしまう。いくら演出家が「いいよ」って言っても自分が「これはちょっと・・・・・」と思ったり、また、誰かから何か言われたこと等と戦わなければならないんです。それでも「自分はこれがやりたい」と思ったことをやるのは、思い切れればいいんだけど、そこに到達できないとものすごく大変。実は、僕は「こうしてください」ってほとんど言わない。
:エーーーー!!!
鈴木:いつもそうです!
:言って欲しいです。
鈴木:みんな、そう言います(笑)
:(笑)
鈴木:皆さん「言って欲しい」っていうけど。稽古が始まって最初の2週間は苦しむ、「なんで何も言わない・・・・?」みたいな。この前は85歳の草笛光子さんとご一緒しましたが、草笛さんも「何でこの人、何も言わないんだろう」っておっしゃっていて、ずっと悩んでいた!
:(笑)
鈴木:それでも最終的には賞を取り、「言われなくってよかった」っていう風に言ってくださった。一つの芝居をやるときは一からセリフ覚える、その時にこっちが要求すればするほど皆さんは僕に褒められたいとか僕に怒られないようにし始めるので、それはつまらない。
:はい。
鈴木:自由にやっていいって言われたら自分の中で色々と選択していき、そのうちにどういう方向を向けばいいのかわかってきます。最初は苦しいときがあるとは思いますが、「好き勝手にやっていいって言っているんだから」ってやりながら他のキャストの関係性も見ていき、だんだん「これでいいのか」って思えてきます。他のキャスト、今回はとても嬉しいことにお2人のほかには、僕の芝居に出ている人たちが結構キャスティングされていて、彼らはわかっていますから。
:なるほど。
鈴木:そう!「なるほど」ということから色々出てきますよ。
:じゃあ、好き勝手にやらせていただきます(笑)
鈴木:メインでやっている人が好き勝手に突っ走らないと後ろの人が怯えちゃう。ガーーーと前に出ていってくれると後ろの人たちは「よし、そこをフォローしよう」とか、抜けているところは「こうしていこう」とか考えられるんです。
:そうですね。
鈴木:そうです!
:走りましょう!走ります!

「人は恋が好き、恋愛が大好きなんですよ」(鈴木)
「そういうの、ドキドキしちゃう!」(仲)
――この作品が映画や舞台と様々な形で長きにわたって上演され愛され続ける理由はどこにあると思いますか?
鈴木:端的に言って人は恋が好き、恋愛が大好きなんですよ。それがもっともわかりやすく作られている作品、しかも天才が書いたものですから、つまらないわけがない!例えば、「源氏物語」も現代語にして書き続ける作家がいたりしますよね、恋の話、恋愛は人間が大好きなんですよ、「ロミオ&ジュリエット」はその傑作なんですよ。人間は愚かなもの。だからこそ愛おしい、そんな愚かな人たちが一生懸命に恋をするんですよ。実はそれだけの話なんですが、そこにいろんな要素をくっつけていくことによって、初めて出会ってピンときちゃった者同士「よし、一緒に死んでやろう」っていうところまでいく、こんな分かりやすい恋愛の話、年月が経過しても国が変わってもみんなわかるんですよね。日本の国内でしかわからない、イギリスじゃないとわからない、イタリアじゃないとわからないって話だとこんなには浸透していかないですね。この話は誰にでもわかるんです。
――世界中でやっていますからね。
鈴木:そう。みんなが観た時に「ジュリエットの今の気持ち、どうなんだろう」って想像して自分の中でピンとくるものがある。
――共感するところはすごくありますよね、でも出会った人にピンときて「えい、死んじゃえ!」にはなりませんが(笑)
鈴木:ファンタジーですからね、この薬を飲んだら死なないけど仮死状態になるからって言われて・・・・・・「飲むかよ!」(笑)
:(大笑)
鈴木:普通、飲まないでしょ!それを飲んでしまうくらい一生懸命なんだってこと。それを別のことに置き換えたらすぐにわかること。薬飲んで仮死状態になるというのは現実的に考えるとおかしな話(笑)。しかし、みんな恋しているとそういうことをやってしまうんです。
――勢いがありますからね。
鈴木:そう、勢いがある!「これ、やっちゃう?!」みたいな。
:そういうの、ドキドキしちゃう!
鈴木:ドキドキするでしょ!恋していると!
――日本の心中物もそうですね。「心中する・・・・え?心中しちゃうの???」、共通しているところはありますね。
鈴木:ありますね。
――恋愛自体が麻薬みたいなところはありますね。
鈴木:あと、大人たちがわかりやすく邪魔しているでしょ(笑)
:(大笑)
――邪魔者がわかりやすい(笑)
鈴木:家と家、階級みたいなもの、貴族の社会とか、そういう障害があって、それを乗り越えていくほど、好きになってしまう。でも「なんで?」っていったら「ピンときちゃった」だけ。
――それだけですよね。
鈴木:そう。どんな人だか知らない、それは多分、みんな経験があるはずで、なんだかわかんないけど、好きになっちゃうんですよ。
――その障害が、家と家とか、従兄弟とか。
鈴木:友達もたくさん殺しちゃって、なんで?って思うけど(笑)、死ぬまではいかなくても、それに近いこと、喧嘩になっちゃったっていうのはよくある話。そこにやってくるちょっと大人な人のアドバイスが・・・・・・間違っている!(笑)。
――乳母とか。
鈴木:そう!絶対に間違ったアドバイス!しちゃう!
:(大笑)
鈴木:それをまた聞いちゃって(笑)。

「今回もとても僕の好きなものが出てきますので、それを見たいと思ったら来てください(笑)」(鈴木)
「自分じゃない自分ができる!みんなを裏切りたいなと」(仲)

――最後に、Rock Opera『R&J』が気になっている方に向けてメッセージを。
鈴木:僕は自分の作品に対しては自分の好きなものしか出さないし、きっと今回もとても僕の好きなものが出てきますので、それを見たいと思ったら来てください(笑)
:素晴らしい!自分も好きなことしかやりたくないんです!
鈴木:好きなことしかやっている暇ないのよ!
:もったいないですもん、時間が!先ほどもちらっと言いましたけど、裏切らせてください。お願いします!「頑張ります!」みたいなのは言いたくないです。
鈴木:俺も!
(一同大笑)
鈴木:そういうの嫌いだから。
:みんな頑張っているんだから。
――頑張るのは当たり前。
:そう。「頑張ってください」って言われるのもあんまり好きじゃない。
鈴木:せっかくこういう芝居に踏み込んでいくわけだから、今までと違うようにしなきゃいけない。僕は草刈民代さんがバレエやめて女優になるっていう時の最初の芝居を演出した時に、世界的なバレリーナなのに、最初にやった芝居は「宮城野」っていう和服を着た日本の和風の芝居。
:素敵!
鈴木:それにチャレンジ、どうせやるなら、翻訳ものや洋物、得意なバレエ的なものをやるんじゃなくって、『和物』、しかもずっと座って着物着てる。そういうのって裏切られるけど、なんかすごく決意が感じられる。
――確かに。
鈴木:それが良かったりする。
:そういうの、楽しいです!自分もずっとダンスやっていて、ダンスをちょっと離れようと思って演技の仕事を始めたんですが、楽しい!見たことのない自分が見ることができてすごい楽しいんです。この舞台も、もちろんそうですが、自分じゃない自分ができる!みんなを裏切りたいなと。
――いいですね!
:(笑)
――頑張るのは当たり前ですからね。
:本当!当たり前ですよね。人間、生きているだけですでに頑張っていますよね。
――私の知り合いで誰か言ってましたよ、「生きているだけでいっぱいいっぱい!」って。
(一同大笑)
:本当にいっぱいいっぱいですよ!生きている上で自分の好きな楽しいことが見つけている素晴らしい人、たくさんいると思います。自分のやりたいことがしっかりと決まっているし、自分もそうなりたいと。だから好きなことしかやらないし、「頑張っています」って言うのは、あんまり好きじゃないし。
鈴木:そう。楽しく!好きなことを!
:楽しくやらせていただきます!
鈴木:はい!
――はい!ありがとうございました!公演を楽しみにしています。

【公演概要】
Rock Opera『R&J』
[東京公演] 2019年6月14日(金)~23日(日)日本青年館ホール
[大阪公演] 2019年7月4日(木)~7日(日)森ノ宮ピロティホール
原作:ウィリアム・シェイクスピア
脚本・演出:鈴木勝秀
音楽:大嶋吾郎
出演:
佐藤流司 仲 万美
藤田 玲 諸星翔希 田淵累生 オレノグラフィティ 山岸門人
諸橋沙夏 平井琴望 寺山武志 冨田昌則
AKANE LIV コング桑田
陣内孝則 他
一般発売日:2019年5月11日(土)10:00 チケット料金:9,500 円(前売 ・当日共/全席指定/税込)
公演に関するお問い合わせ :ネルケプランニング: TEL:03-3715-5624(平日11:00~18:00)
主催:ネルケプランニング
公式サイト: https://rockopera-rj.com/

撮影:金丸雅代
文:Hiromi Koh