もしもモーツァルトが女性だったら……そんな「IF」の物語が、「マドモアゼル・モーツァルト」。元々はコミック原作で初演当時の1991年は、まだコミック原作のミュージカルが少なかった時代、いまでこそ「2.5次元」と言われてもてはやされているが、この頃はどちらかと言うと「マンガなんて」と言われていた。
楽曲はこの時代のサウンドの代表とも言える小室哲哉氏、しかも同氏はクラシックにも通じており、モーツァルトの名曲をこの時代に合わせたアレンジで聴かせてくれた。ストーリーは映画でもよく知られている「アマデウス」にアウトラインは近い。しかし、そこに独自性を加えたコミック、モーツァルトが生きていた時代は女性は作曲家にはなれなかったが、主人公のエリーザ、つまりモーツァルトは、それでも前を向き、作曲家として生き抜いた。また主人公の自由な性格、親との確執、サリエリの作曲家としての限界等、様々なことをあぶり出した良作であった。ビジュアル的には、「フィガロの結婚」や「魔笛」等のオペラの登場人物をモチーフにした精霊達が現れて、その深層心理等をシアトリカルに表現。完成度も高いミュージカルであった。
21世紀に入り、楽曲や構成を一新した『21C:マドモアゼル・
今回の企画は、この2つの作品をコンサート形式で、その違いや世界観を提示する、といったもの。セットは、2作品に共通する球体のみ。出演陣はミュージカルの衣裳ではなく、シンプルな黒い服装。
同じ原作で異なるミュージカルを作ること自体、珍しいが、それをコンサートにして観客に見せるというのも新しい試み。中でも興味深いのは、同じ場面での楽曲の違い。『21C:マドモアゼル・
コンサート自体は歌はもちろんダンスもたっぷり、また、ミュージカルシーンも!場所は芹が谷の小さいスタジオで密な空間。時間にしておよそ1時間半、時折、作品の「今だから言える、こんなこと、あんなこと」も飛び出し、「へえ〜」の連続。
ちなみに原作の「マドモアゼル・モーツァルト」は1989年から1990年にかけてコミック・モーニング』に連載された福山庸治の漫画。神童モーツァルトは女性だったという大胆な設定で、彼(彼女)と彼を取り巻く家族、彼を憎みつつも惹かれていく宮廷楽長サリエリたちとの悲喜劇を描く。『青春アドベンチャー』でラジオドラマ化もされている。こちらも紐解いてみると一層、作品に興味が沸く事であろう。
【公演概要】
公演名:ONGAKUZA MUSICAL CONCERT Vol. 1 2つのマドモアゼル・モーツァルト
公演日程:2018年3月25〜26日
会場;芹が谷スタジオ
【音楽座次回公演】
「ホーム」
ホームタウン公演;町田市民ホール
2018年6月22日(金)~24日(日)
広島公演;上野学園ホール
2018年6月30日(土)
http://www.ongakuza-musical.com/
文:Hiromi Koh