ハイパープロジェクション演劇 「ハイキュー!!」〝東京の陣〞音駒、梟谷、戸美、三校それぞれの個性が輝く圧巻の試合展開は必見!

2018年10月に上演された〝最強の場所(チーム)〞以来シリーズ7作目となる新作公演“東京の陣”。今回はこれまでのメインであった烏野高校ではなく、音駒高校を主役に添えたエピソードを上演。前回の公演でキャスト全員が卒業した烏野高校の面々がいないエピソードはシリーズ初となる。

今回登場するのは春高バレーの東京予選に挑む音駒高校、梟谷学園高校、戸美学園高校の3校。作中で“強豪ぞろい”と称される東京予選だけに、戦いのスピード、パワーともに一流。その中でいかに、孤爪研磨を含む音駒高校メンバーたちがどのようにして戦うのか、はたまた絶対エース的存在の木兎光太郎率いる梟谷学園や一癖も二癖もある戦術を誇る戸美学園高校が彼らの前にどう立ちはだかるのかに注目したい。ストーリーは単行本22~23巻。

はじめに、孤爪研磨と黒尾鉄朗の幼少期シーンが展開され、彼らの思い出と「約束」が何であるかを匂わせる。その後は3校の顔合わせ。音駒高校はロックに、梟谷学園高校はラテンのリズムに、戸美学園高校はワールドミュージック風のヒップホップにとそれぞれのテーマが流れ、音楽に合わせた振り付けで彼らの性格を印象づけている。

中でも、戸美学園の振り付けは「蛇」を前面に押し出したもので、ピタリと揃った手をうねらせる振り付けが、只者ではないという雰囲気をかもし出している。ここはダンス甲子園に出たほどのダンススキルを誇る福澤侑の腕の見せどころ。この振り付けはこのあと試合でも度々出てきており、狡猾さ、緻密さ、そして豊かな表情など彼らがただの“ヒール役”ではない魅力を存分に発揮している。

1幕の試合は音駒高校vs梟谷学園高校。梟谷学園はエースの木兎光太郎が持つ性格そのまま“テンション高い”“元気”“声も顔もうるさい”という特徴があり、なおかつエースの木兎は日本でベスト5に入るほどのツワモノ。主将・黒尾率いる音駒は彼らを相手に東京都予選へと挑む。

ここでは梟谷学園のキャプテン・木兎光太郎を演じる桜庭大翔が「ハイキュー!!」初出演とは思えないほどの存在感を発揮。長身を活かしたダイナミックな振り付けとアクションで魅せる。リフトを使ったスパイクではよりそのパワフルさが際立っていた。対して、彼とコンビになる冷静な赤葦京治(髙﨑俊吾)との掛け合いはまるで夫婦漫才のようであり、真剣な試合シーンを和やかにさせている。

そんな梟谷の押せ押せムードに負けじと立ち向かう音駒高校。円陣のシーンでは黒尾による「──俺達は血液だ 酸素を回せ ”脳” が正常に働くために」 というセリフで絆を高め合う。音駒がピンチになるたび、メンバーたちを叱咤する黒尾の姿や、的確な判断を示していく孤爪の姿が頼もしく見えるのは彼らを演じてきた永田と近藤のコンビが為せる技ともいえる。

試合が終了し、一人になる孤爪。彼が黒尾と交わした「約束」がリフレインするシーンでは、スポットライト下の孤爪と黒尾、ふたりの表情が印象深い。

2幕の試合は音駒高校vs戸美学園高校。戸美は狡猾な作戦と舌戦が得意な一筋縄ではいかないチーム。どちらも予選を突破するために負けられない試合ということで、気合が高まる両チーム。攻撃の対象を一人に絞り、執拗に罠へとはめていく作戦を取る戸美のターゲットになったのは、1年生の灰羽リエーフ。バレーボールに関してはキャリアが浅く、精神的にも未熟な彼が次第に追い詰められる。また、気性の激しい山本猛虎もまたその巧みな言葉により窮地に立たされる。二人を集中攻撃する戸美メンバーたちはここでも蛇をモチーフにしたさまざまなフォーメーションダンスを披露。不穏なシーンにもかかわらず美しささえ感じられるダンスは、よりその異様さを際立たせている。後輩たちが次々とピンチに陥るさなか、守備の要であったリベロの夜久衛輔が足を負傷。3年生にとってこれが最後の春高になってしまうかもしれない、と予感する後輩たち。それはまさに音駒高校にとって絶対絶命の状態……。

そんな状況を冷静に判断し、的確に指示を出していくのはやはり黒尾、そして孤爪。彼らの存在が、音駒高校の部員一人ひとりの意識を高め、またそれぞれの才能を開花させ、反撃がはじまって……。

今回の上演では、先輩である音駒キャストが、フレッシュな梟谷&戸美キャストを引っ張って、カンパニー全体の絆を深めていったのであろうことがよくわかる。その光景はまるで現実の運動部のようで、キャラクター描写に抜かりのない本シリーズならではとより感じられる。

なお、ゲネプロ前に囲み会見も行われた。登壇したのは主要キャスト、孤爪研磨役の永田崇人、黒尾鉄朗役の近藤頌利、木兎光太郎役の桜庭大翔、赤葦京治役の髙﨑俊吾、大将 優役の福澤 侑と、演出・脚本のウォーリー木下。

<演出・出演者によるコメント>
◆ウォーリー木下(演出・脚本)
今回は演奏、振り付け、音楽、すべて刷新。まだまだ演劇「ハイキュー!!」は進化できるのだな、と感じました。今回の中心・音駒高校には、主役(孤爪研磨と黒尾鉄朗)が幼馴染というエピソードがありますが、彼らが子どもの頃から一緒に過ごしてきた関係の中にある“約束”が、本作の一つのテーマとして全編に描かれています。今までの公演ではなかった新しい切り口で、ストーリーを楽しんでいただけるのではないかと思います。

◆孤爪研磨役 永田崇人
今回は、烏野高校が不在で、僕らが演じる音駒高校がメイン。だからこそこれまでとは違う新しいことがやりたいと思っていました。今まで演劇「ハイキュー!!」を見てきた方も、見たことがない人にも楽しんでもらいたいと願っています。

◆黒尾鉄朗役 近藤頌利
黒尾を演じるのは今回で5回目で、今年で3年目になります。この〝東京の陣〞の話をずっとやりたいと言っていたのが、ようやく実現できました。一人ひとりのキャラクター性が掘り下げられているので、キャスト陣もそれを意識して演じました。

◆木兎光太郎役 桜庭大翔
今回が初めての舞台で、そして大好きな演劇「ハイキュー!!」に参加させていただけたことが本当に光栄です。舞台についてはわからないことだらけだったけれど、この舞台を披露できるということが本当にうれしいです。

◆赤葦京治役 髙﨑俊吾
僕自身は演劇「ハイキュー!!」2作目ですが、チームとしてはメンバーがかなり新しくなりました。永田座長を中心に、試行錯誤しながら新しいことに挑戦してきました。だからこそ、(皆さんに)この舞台を楽しんでいただける自信を持っています。

◆大将 優役 福澤 侑
今回、戸美学園は演劇「ハイキュー!!」に初参加です。新しい風、新しい色をつけられたらいいなと思っていますし、どのチームも「人がここまで動くのか」と感心するほど動きます。演じていてとても楽しかったですし(皆さんには)本当に生で見てほしいと思います。

[キャスト]
■音駒高校
<孤爪研磨>永田崇人/
<黒尾鉄朗>近藤頌利/
<海 信行>武子直輝
<夜久衛輔>後藤健流
<山本猛虎>川隅美慎
<福永招平>石上龍成
<灰羽リエーフ>石倉ノア
<芝山優生>木村風太/

<山本あかね>重石邑菜
<灰羽アリサ>楓/

■梟谷学園高校
<木兎光太郎>桜庭大翔
<赤葦京治>髙﨑俊吾
<木葉秋紀>東 拓海
<鷲尾辰生>瀬羅 純
<猿杙大和>松波優輝
<小見春樹>畠山紫音/

■戸美学園高校
<大将 優>福澤 侑
<高千穂恵也>辻 大樹 ※辻は一点しんにょう
<沼井和馬>杉本海凪
<広尾倖児>佐藤たかみち
<先島伊澄>高田晃宏
<赤間 颯>高橋里央
<潜 尚保>小林優太/
<2019年春公演概要>
タイトル:ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」〝東京の陣〞
原作:古舘春一「ハイキュー!!」(集英社「週刊少年ジャンプ」連載中)
演出・脚本:ウォーリー木下
<公演期間・劇場>
大阪:2019年4月5日(金)~4月14日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
宮城:2019 年 4 月 20 日(土)~4 月 21 日(日) 多賀城市民会館 大ホール
東京:2019 年 4 月 27 日(土)~5 月 6 日(月・休)TOKYO DOME CITY HALL
<チケット情報>
一般発売日 2019年3月3日(日)10:00
大阪・宮城公演 8,800 円(全席指定・税込)
東京公演 S 席:8,800 円 A 席:6,800 円(全席指定・税込)
<チケットに関するお問い合わせ>
サンライズプロモーション東京 TEL:0570-00-3337(全日10:00~18:00)
<公演に関するお問い合わせ>
ネルケプランニング TEL:03-3715-5624(平日11:00~18:00)
<公式 HP>
http://www.engeki-haikyu.com/

取材・文:佐藤たかし