「銀幕の果てに」は1994年に発表された、つかこうへいの長編小説。
秩父山中にあるという設定の大東映画撮影所を舞台にして、映画界の裏側を描きながら繰り広げられる告発サスペンスに政治的野望が絡まっていく。伝説の女優「玲子」のまわりに起きた奇っ怪なエピソードや撮影所に隣接する原子力発電所の意味、燃料棒の中に浮かび上がるハサミの謎、どこからどこまでが撮影している映画の内容なのか、どれが現実でどれが物語なのかが錯綜していく。この小説は、1989年に発表された戯曲「今日子」をベースに着想し、現実と虚構が行き交うバーチャルな世界を描いたSFサスペンス。2019年春のつかこうへい復活祭VOL.2として女優版のバックステージ秘話とも呼べるこの小説を戯曲化し、紀伊國屋ホールにて上演。
とにかくジェットコースターのような展開にどのシーンが撮影されている映画なのか、どれがその外側で起こっている出来事なのか、クロスしながら進んでいく。幕開きは「バババババーーーン!!!!」と激しい爆音、サイレンの音、それにかぶさるようなピアノの調べ、戦闘機が機関銃を発射する。後ろに名前が映像で浮かび、役者登場、そして撃たれる、俳優紹介にしてはかなり激しく、インパクト大!脚本家・立花明(石田明)、大部屋女優に大女優、様々な人物の人間関係、親子に夫婦、そしてそれぞれの立場と過去。シャンデリア落下事件、その真相を明らかにしたいという脚本家、刑事に内閣官房長官、原発に国際情勢に、それぞれの野心と欲望、新作映画のタイトルは「銀幕の果てに」、撮影中の映画「火の鳥」もあり、日本・アメリカ、主要国の思惑を秘めた世界核戦略、内閣官房長官・村雨大吾(味方良介)の壮大なる野心と、最後の映画スター・野火止玲子(矢島舞美)の挑戦。
そして周りの人々、恨み、確執、因縁、つながり、愛憎、野望、そこに映画撮影所の裏側と、国内外の政治、原子力発電が絡み合い、虚と実が折り重なるようにストーリーは渦を巻きながら怒涛のように進んでいく。事件の真相は一体なんなのか、そういった謎解き的な要素もあり、刑事・叶大作(久保田創)が迫る。地球と人類の存亡をかけて激突する。原発にハサミがあるという、そのハサミとは?愛と祈り、思いもつかない大きな力学、人々は否応無しに巻き込まれていくが、それでも前を向く。「何があっても真ん中に立つ人間は動いてはいけない」「すべてはキネマの夢」「愛し続けよ、意志があれば滅びることはない」など、圧倒的な力強い言葉が次々と繰り出されていく。バックボーンにそこはかとなく見える戦争や核兵器、人類の野望が神に挑んでいくようにも見える。過激な世界に観客を引きずり込む原作のパワー。設定、とにかく、つかこうへいらしい荒唐無稽さがあるが、作家独特のロジックと感性でラストは急速にまとまっていく。最後に見える景色は?原発は?映画は?事件の真相は?それは劇場で!
ゲネプロ前に囲み会見があった。登壇したのは主要キャスト、矢島舞美、味方良介、木崎ゆりあ、石田明、佐久本宝、松本利夫。ちなみに味方良介と石田明は「熱海殺人事件」から『連投』。
まずは矢島舞美、「大女優・野火止玲子役です。圧倒的な強さとみんなを包み込むような優しさを持っている役です」味方良介は「僕は村雨官房長官、物語とは一線をおいた役所です。意気込みはつい先日までここで『熱海殺人事件』を・・・・・・・・・・ここで、また新たな作品の初日を迎えられる楽しみもあるんで、僕と石田さんの超人ぶりを観ていただければ」とコメント、石田明は「富山から赴任してきた・・・・・・違います(笑)、終わりました、今回は復讐に燃えている立花という役を演じます、執念深い!」佐久本宝は「僕は照明家の山崎宝という役です。間違っていることは間違っているという、いい青年です」木崎ゆりあは「吉川涼子という大部屋女優の役をやらせていただきます。松さんと夫婦役ということで、お父さんぐらいの年代なので(笑)、(ここで『やかましいわ!』と松本利夫)」年齢差克服!「僕は牛沢利夫という映画監督の役をやらせていただきます。ぶっちゃけ、ストーリーの中だと自分がなんなのかわかんなくなってくる、そういった部分を観に来ていただける方々に楽しんでいただけると思います」と松本利夫。大女優は17歳から60歳まで!年齢が!矢島舞美は「気持ちはずっと若いので」とコメント。女優オーラで!松本利夫は「みんなすごくお芝居がうまい!足を引っ張らないように」と謙遜。また石田明は脚本も実際に書いているが「脚本家に見えなかったら終わりですよ(笑)、今回は堂々と!」と笑いをとった。また映画の方は「自分の書きたいものが詰まっている」とコメント。また年号またぎについて「飲みましょう!」とシンプルに木崎ゆりあ。石田明は「最近、家を買ったんです・・・・・・令和になった瞬間にみんなを家に呼んで、書斎飲みを!」ここで一同大喜び。「0時になった瞬間飲む!」と味方良介。松本利夫は「僕は何もしない!子供と遊ぶのが一番楽しい!」とコメント。また岡村俊一とは2度目という矢島舞美は前回公演が自分的にはできなかったことが「悔しいと思って・・・・・今回は悔しかった部分をぶつけたい」と意気込んだ。また続けての紀伊国屋ホール、「覚醒状態です。どんどん調子が上がっていく、どこまでもいける気がしています。僕と石田さんの超人ぶりを観て欲しい」とPR。石田明も「無駄に朝6時に目が覚めました、覚醒中です」とコメント。ちなみにこの日はつかこうへいの誕生日という記念すべき日!新作、しかも紀伊国屋ホール!矢島舞美は「覚悟を持ってやらないと。大事にしたい」と気を引き締めた。「やればやるほどに重みを感じる」と木崎ゆりあ。石田明は「めちゃくちゃ難しい宿題をもらったなという感じ、試練をいただいてこれを舞台化するに当たって、これが初演、どんどんいいものに変わっていくと思う、初演ならではの難しさと体当たりで!光栄なことです。僕たちの糧に。つかさんに観て欲しい」と意気込んだ。また味方良介も「会えなかった悲しさと悔しさもありますが。生き残る作品になるように」と力を込めた。佐久本宝は「つかさんの言葉を伝えるのは緊張感があります」といい、松本利夫は「つかさんが亡くなられたあとも引き継がれていく、魂を感じます」とコメント。つかこうへい作品小説の初の舞台化、つかこうへい復活!
【公演概要】
春のつかこうへい復活祭 VOL.2「 銀幕の果てに」
日程・場所:
<東京公演>
2019年4月24日(水)~29日(月・祝)
紀伊國屋ホール
<大阪公演>
2019年5月8日(水)・9日(木)
COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
作:つかこうへい
演出:岡村俊一
出演:矢島舞美、味方良介、木崎ゆりあ、石田明、佐久本宝、久保田創 / 岡田帆乃佳(劇団4ドル50セント)、黒川恭佑、磨世 / 松本利夫
※木崎ゆりあの「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記。
公式HP:http://www.rup.co.jp/ginmaku.html
取材・文:Hiromi Koh