2.5 次元ダンスライブ「S.Q.S (スケアステージ) Episode 3『ROMEO – in the darkness -』」。愛はあらゆることを可能にしてくれる。

4月25日(木)に「2.5次元ダンスライブ「S.Q.S(スケアステージ)」Episode 3「ROMEO – in the darkness -」がヒューリックホール東京にて開幕した。公演はREDとBLUEの2バージョンあるが、取材したゲネプロは主にSolidSのメンバーが活躍する「Ver.RED」。本作は、2.5次元に存在する芸能事務所「ツキノ芸能プロダクション」に所属するSolidSとQUELLの2つのユニットがメインに綴られる物語「SQ(スケア)」シリーズの舞台版で、2.5次元ダンスライブ「S.Q.S(スケアステージ)」(通称:スケステ)の第3弾となる。

SolidSは、楽曲提供者としてツキノ芸能プロダクションで働く篁志季(日向野祥)を中心としたユニット。彼は、かつてアイドルとしてデビューし、挫折した過去がある青年。だから起死回生の熱い想いを胸に秘めて再デビューを果たした。QUELLは、2016年夏、4人組のユニットとしてデビュー。流れる水のような颯爽でクールなサウンドが評判を呼んでいるが、中心となっているのは、楽曲提供も行う和泉柊羽(田中稔彦)だ。初見の人は、このユニットの性格を知っておくと物語に入り込みやすいだろう。2つのユニットは成り立ちからして表裏をなしている。そして物語において彼らがどうやって交わって、新たな“スケステ”を作り上げていくのかが毎回の見どころだ。

舞台の始まりは異国の地。映像のヨリコジュンの質の高いプロジェクションマッピングを背に、ボロをまとった男・ロミオ(平井雄基)が1冊の日記を手にして恋する女性・ジュリエットに訴えかけている。「例え、この身が滅んでも、君に伝えたいことがある」と。愛という儚い気持ちが舞台全体に漂う。平井の何かに祈るような演技が絶品だ。

シーンが変わり、神田の古書街にやってきた村瀬大(小林涼)、世良里津花(阿部快征)、久我壱星(山中健太)、久我壱流役(山中翔太)の4人。彼らは路地裏で不思議な書店を見つけた。思わず惹かれてその店に入ると、なにやら怪しい店主がいる。彼をよそ目に『ROMEO(ロミオ)』という古びた1冊の本を見つける。村瀬大はそれを手にとり、ページをめくっていると紙でうっかり手を切ってしまう。かすかに血で濡れてしまった本。商品を汚して買うしかないと決意した彼は、店主にその本を売ってほしいと伝えると……。

翌日、村瀬大の様子がおかしい。気になったメンバーたちが集うと、村瀬は、両目が真っ赤な薔薇の模様になって失明してしまったのだ。たじろぐメンバーたち。一体何が起こったのだろう? しかし、白き魔王様である同じ事務所のアイドルユニットのProcellarumの霜月 隼に聞くと、どうやら、古書店で手にした本の呪いだという。原因の本について話を聞こうと店主を探して神田の街を奔走してみたものの、古書店はいつの間にか消えていた……。一体どこへ?

そこから観客は、同じ舞台で、過去と現在、夢と現実、日本と異国が入り乱れる演劇的な手法を体感しながら、ロミオは半分人間で、半分は吸血鬼の行商人であることを知る。彼が生まれながらに背負っている“業”。しかも、彼は行商先の領主の娘のジュリエットに恋をしてしまった。彼はしっかりした告白ができずに、自らの出自や後悔を引きずりながら、現世と過去の世界をさまよっていたのだ。その強い想いがどうやら現代で呪いに変わってしまったことがわかる。すると、その思念に引っ張られるように、村瀬大、世良里津花、久我壱星、久我壱流は、ロミオのいる異世界へと誘われてしまう。そこで見た真実とは?

今回の「S.Q.S(スケアステージ)」(SolidSバージョン)で活躍するメンバーは、村瀬大(小林涼)と世良里津花(阿部快征)。彼らの台詞や行動を追いかけていれば、舞台上で何が起こっているのか、どんな顛末を迎えるのかよくわかる。物語は、“愛”がモチーフなので、重たい感じかと思いきや、脚本を手がけたふじわら(ムービック)と演出のヨリコジュンの化学反応が素晴らしいから、グルーヴ感に満ちていて、先の展開が気になって仕方がない。ユーモアたっぷりのシーンもあるから、なおのこと楽しめる!

愛とは言葉で簡単に説明できるものではないけれど、無限の可能性に満ちた、優しさを孕んでいることを、このカンパニーは芝居を通して教えてくれた。暗闇の中からそっと差し込む太陽の光のように暖かい舞台。愛することの難しさ、それでも、そこからいくつものストラグルをくぐり抜けた先に待っている“真実の愛”を感じた時の壮大なカタルシスがやみつきになる第一部であった。

第二部は、お待ちかねのダンスライブ! 1曲目から激しいダンサンブルなSolidSの「CRAZY BABY SHOW」、続いて「Judas」、そしてQUELLの「BELIEVER -祈り-」、「時を越えて」、たった4曲で脳内のアドレナリンが一気に噴出! 先にも書いたように彼らのユニットの特徴は楽曲にも表れている。どちらかといえば攻撃的なSolidS。幽玄の調べが優しいQUELL。彼らの個性が爆発したダンスライブは必見だ。しかも、冒頭の4曲では、2019年版のセクシーな新衣装をまとった彼らのダンスが舞台に映える!

やっぱり、ダンスライブはこうでなくては、と終演後に納得してしまった。3時間を超える舞台ではあるけれど、決して長く感じない。むしろ、愛について深く考えて頭はオーバーヒート気味だったから、スカッとしたライブでリフレッシュしてしまった。ロミオの一途な愛を象徴する真っ赤な薔薇の似合う情熱的な舞台。公演は5月6日(月)まで。BLUEバージョンも気になるところだが、どちらのバージョンも観て損はないはず。というか、両方観てしまおう!

<キャスト>
・SolidS
篁志季役:日向野祥、奥井翼役:瀬戸啓太、世良里津花役:阿部快征、村瀬大役:小林涼
・QUELL
和泉柊羽役:田中稔彦、堀宮英知役:中尾拳也、久我壱星役:山中健太、久我壱流役:山中翔太
・舞台オリジナルキャラクター
ロミオ役:平井雄基
・バックダンサー
J.U.N. 中村聖 上地大星 理土
・アンサンブル
新宮乙矢 池田彰夫 橋本昭博 加賀美秀明
【公演概要】
タイトル:2.5次元ダンスライブ「S.Q.S(スケアステージ)Episode 3『ROMEO – in the darkness -』」
劇場・日程:
2019年4月25日(木)~5月6日(月・祝)ヒューリックホール東京(有楽町)
原作・脚本:ふじわら(ムービック)
キャラクター原案:沙月ゆう
原作楽曲提供:滝沢章/はまたけし

取材・文:竹下力