ーー”ネタバレ注意、閲覧注意”ーー
劇作家・末満健一が作・演出を手掛けるTRUMPシリーズの最新作『COCOON 月の翳り星ひとつ』「TRUMP」シリーズは、劇作家・末満健一がライフワークに掲げ、2009年より展開する作品。不死を失った吸血種《ヴァンプ》たちの絢爛な社交界を舞台に、永遠の命を持つとされる吸血種《トランプ》の不老不死伝説に翻弄されていくゴシック・サスペンスだ。記念すべき10周年では「月の翳り」編・「星ひとつ」編という2作を同時期に交互に上演する。
<「月の翳り」:ストーリー>
繭期の吸血種を収容する施設《クラン》にアンジェリコ(安西慎太郎)、ラファエロ(荒木宏文)、エミール(宮崎秋人)、ジュリオ(田中亨)、ディエゴ(碓井将大)という貴族の子息5人が在籍していた。彼らは特別な貴族階級の出でクランの周囲の生徒たちから《聖なる五家》と呼ばれ羨望の対象となっていた。アンジェリコ、ラファエロは幼馴染、クランで再会を果たす。だが、子供の時に温和で臆病だったラファエロは、どこか人を寄せつけない尖った空気をまとっていた。
ラファエロは父親であるダリ・デリコから名門デリコ家の家督相続者として厳しく教育されており、父のような立派な貴族にならなければという思いを強迫観念的に抱えるようになっていたのだ。アンジェリコもまた、父への複雑な思いを抱いていた。父親であるゲルハルト・フラは、デリコ家と同格の家柄であるフラ家の家督者であった。だがアンジェリコは、ラファエロとは裏腹に、父から期待の言葉をかけられることはなかった。それでもアンジェリコは、父親たちの跡を継ぎ、ラファエロとふたりで血盟議会を昇りつめていくことを夢見ていた。
ある日、二人は不良グループのジョルジュ(大久保祥太郎)、モロー(池村匡紀)らによる《貴族狩り》に遭い、上級生のディエゴ、エミール、ジュリオに助けられる。その出来事をキッカケに彼らと交流を深めていくふたり。やがてラファエロは、自由奔放に生きるディエゴに憧れに近い感情を抱くが、アンジェリコはその様子に嫉妬心を募らせていく。そのことにより、ふたりの友情に亀裂が生じていくのだった。
クランでは、生徒たちの繭期の症状が著しく悪化していることが問題とされていた。繭期の症状を投薬制御する《抑制プログラム》の担当であるティーチャードナテルロ(細貝圭)は、抑制剤の調整を試みる。だが事態は一向に解決する気配を見せなかった。
繭期を深刻化させたディエゴは激しい暴力衝動に襲われ、ジョルジュたちに必要以上の暴行を加える。自らの繭期の状態に不安を覚えたディエゴは養護室を訪れる。そこでドナテルロから聞かされたのは、彼がクラン時代に体験した《美しき繭期》の思い出話であった。
──繭期なる刹那に築かれつつあった友情は脆くも崩れ去り、高貴なる五家と呼ばれた彼らはついに決定的な決裂の時を迎える。
<ポイント>
アンジェリコとラファエロ、二人に共通しているのは立派な『家柄』。家を守ることこそが彼らの使命であり、生きがい。しかし、それによって不自由な思いをしているのも事実。しかもアンジェリコは父に振り向いてもらえない、という状況、それがアグレッッシヴな夢となっていく。
アンジェリコとラファエロの関係性を軸に物語は進んでいく。上級生たち、それ以外の生徒たち、閉ざされた施設《クラン》。嫉妬、憧れ、絆、友情、誰もが持っている感情、それらが何かの拍子で崩れたり、あるいは強くなったりする。その中でも懸命にその瞬間を生きる。こういった描写を美しく幻想的に耽美に表現。アクションシーンはスピード感の中にも魅せる要素がたっぷり、また舞台の高低差でダイナミックに。またコロスの動きにも注目。
<「星ひとつ」:ストーリー>
14年前、人間種と吸血種の間に生まれ、「死を迎えるその日まで絶望しろ」というイニシアチブと「その絶望に負けるな」という《二つのイニシアチブ》を受けた赤子がいた。彼の名はウル(宮崎秋人)。生まれてすぐに実の両親をなくし、ある事情から特級貴族であるダリ・デリコに引き取られて育てられた《ダンピール》であった。
成長して繭期を迎えたウルは兄・ラファエロがいるクランに入ることになる。名門デリコの家名を護るために表向きは《純血種》として生きることを命じられたウルは自分がダンピールであることをひた隠しにして生きてきた。
やがてウルは同じクランにやってきたダンピールの少年ソフィ(三津谷亮)と出会う。ダンピールであるにもかかわらず毅然として生きるソフィの姿に心惹かれていくウル。自分も彼のように生きられたらどれだけよかったか・・・・・ウルはソフィを《ともだち》と呼び、いつも彼と一緒に行動するようになる。しかしラファエロは弟がダンピールであることが露呈することを恐れ、ふたりをひきはなそうとするのだった。
一方、TRUMPを監視・守護する《ヴラド機関》の任務にあたるダリはソフィがクランに入所していることを問題視していた。なぜなら、そのクランには永遠の命を持つ吸血種TRUMPであるティーチャークラウス(陳内将)がいたからだ。ソフィにはクラウスの精神状態に悪影響を及ぼしかねない秘密があった。ソフィの育った養護院を訪れたダリは、そこで《ダミアン・ストーンの意志》と再び対峙することとなる。
自らクランへと赴いたダリ(染谷俊之)は息子らと接見。ラファエロにウルをソフィに近づかせないように命じる。またダリは自ら守護する対象であるクラウスと対話する。ダリはそこでクラウスから《アレンの血族》であるソフィに手出ししないよう警告される。
月日がたち、クランは年に一度の祭典《クランフェスト》を迎えていた。ラファエロに敵対心を抱くアンジェリコの策略により負傷したラファエロはクランフェストの催しである剣術の試合でソフィに敗北する。父からの重圧と弟の守護
者たる使命感から焦燥にかられたラファエロはソフィに噛み付くという凶行に走る。ラファエロがソフィにトドメを刺そうとしたその時、ラファエロの体が自然発火するとともに跡形もなく消し飛ぶ。それは全ての吸血種の頂点イニシアチブに立つクラウスの仕業であった。
ーーやがて、呪われた少年ウルは慟哭の結末を遂げることとなる。その結末は、父であるダリに、そして友と呼んだソフィに何をもたらすのか?
<出演者・演出家:コメント>
[安西慎太郎]
舞台「COCOON」に出演いたします、安西慎太郎です。本日、幕が開くということで、とてもワクワクしております。今までたくさんの方に愛されてきたTRUMPシリーズが更に愛されるよう務めていきたいと思っております。TRUMPチーム一同最後まで全力で挑みます。よろしくお願い致します。
[宮崎秋人]
月の翳りでエミール役、星ひとつでウル役を演じます宮崎秋人です。2作同時上演ということで、なかなか大変な稽古期間ではありましたが、末満さんの作品へ注ぐ思い、お客様の期待の高さを強く感じたから、ここまではこれたのかなと思います。
あとはカンパニーが一丸となって未満さんが作ったこの物語で劇場に足を運んでくださった方、ライブビューイングを観てくださる方の心を動かすのみです。きっとTRUMPシリーズの新しい可能性が見えると思います。
[末満健一]
医者になるには免許がいる。役者には免許がない。飛行機を飛ばすには知識と技術がいる。役者と名乗るものには知識も技術もないやつがいる。そんなピンキリな役者世界の中で「この人たちはまぎれもない役者だ」と思える人たちと創作の時間をともに過ごすことができた。そんな自分は脚本家と言えるのか?演出家と名乗る資格はあるのか?そんなことは一欠片でしかない。それでも僕は、演劇が好きだ。役者が好きだ。そう思うことが許されるよう、自分なりのやり方ですごした時間に尽くしたつもりだ。その結果出来上がったものが今回の作品だ。『COCOON 月の翳り星ひとつ』は、やっていて苦しいのだから観るのも苦しいはず。でもとても遠いところまでこられたと思う。想像すらできていなかったような場所に。ひとりの力などちっぽけで、ここまでこられたのは役者とスタッフと観客のおかげだ。せっかくここまでこられたのだから、このままどこにも帰らずに、進んでみよう。
<キャスト>
【「月の翳り」編】
アンジェリコ:安西慎太郎
ラファエロ:荒木宏文
ディエゴ:碓井将大
エミール:宮崎秋人
ジュリオ:田中 亨
グスタフ:郷本直也
ミケランジェロ:鬼頭真也
ジョルジュ:大久保祥太郎
モロー:池村匡紀
ドナテルロ:細貝 圭
コロマン 他:奥田一平
生徒 他:小原悠輝
マルク 他:菊池祐太
エミール(越繭) 他:小比類巻諒介
若きドナテルロ 他 竹鼻優太
生徒ピエール 他:夛田将秀
シャルダン 他:星 賢太
ティーチャー 他:本多釈人
声の出演
ダリ:染谷俊之
フリーダ:愛加あゆ
ディエゴの父:川原和久
【「星ひとつ」編】
ウル:宮崎秋人
ラファエロ:荒木宏文
アンジェリコ:安西慎太郎
ソフィ:三津谷 亮
臥萬里:木戸邑弥
グスタフ:郷本直也
ミケランジェロ:鬼頭真也
ジョルジュ:大久保祥太郎
モロー:池村匡紀
クラウス:陳内 将
ダリ:染谷俊之
ダリの取り巻き 他:奥田一平
レイン 他:小原悠輝
血盟警察 他:菊池祐太
マルコの影 他:小比類巻諒介
アレン 他:竹鼻優太
養護院の職員 他:夛田将秀
貴族 他:星 賢太
ノーマン 他:本多釈人
声の出演
マルコ:栗山 航
フリーダ:愛加あゆ
【公演概要】
『COCOON 月の翳り星ひとつ』
作・演出 末満健一
公演スケジュール
東京:2019年5月11日(土)~5月26日(日) サンシャイン劇場
大阪:2019年5月30日(木)~6月5日(水)サンケイホールブリーゼ
公式HP:http://cocoon.westage.jp/
撮影:遠山高広