2018年に紫綬褒章を受章、2019年に第26回 読売演劇大賞 最優秀作品賞・優秀演出家賞を受賞するなど、近年、その活動が高く評価される劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)。
KERAの数々の戯曲の中から、選りすぐりの名作を、才気溢れる演出家が異なる味わいで新たに創り上げる、シアタークリエ連続上演シリーズ「KERA CROSS」(製作 東宝・キューブ)が今夏スタート。
第一弾として『フローズン・ビーチ』の上演が決定(鈴木裕美演出 7/31~シアタークリエ他)。
『フローズン・ビーチ』は、1998年、KERAが作・演出、劇団「ナイロン100℃」公演として新宿・紀伊國屋ホールにて初演され、女優4人で紡ぐミステリー・コメディであり、世相を鋭く映し出しながら、16年にわたる女性同士の心の機微を描く密室劇の傑作として、第43回岸田國士戯曲賞を受賞した。女性の心理を繊細に描く名手と言われるKERAの、その才能を世に知らしめた、ナイロン100℃初期の代表作として知られている。
その傑作が、人間群像を深く描き切る人気演出家・鈴木裕美の手によって、今、新たに命が吹き込まれる。
キャストには、第24回読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞し、演劇界を牽引する鈴木杏、独特なメイク・ファッションでお茶の間に大ブレイクし、今回、女優として初舞台を踏むブルゾンちえみ、TVドラマ『下町ロケット』の好演も記憶に新しく映画・TV・舞台で活躍中の朝倉あき、ミュージカルでの活躍はもとより舞台・映像問わず強い存在感を放つシルビア・グラブ、と彩り鮮やかでバラエティに富んだメンバーが集まった。
5月13日、製作発表会が都内で行われた。登壇したのは、鈴木杏、ブルゾンちえみ、朝倉あき、シルビア・グラブ、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(作)、鈴木裕美(演出)。
女優陣はブルーの衣装で登場した。
まずは今回は作家である ケラリーノ・サンドロヴィッチが挨拶「たまにやりたい作品です(笑)、夏に4本、発表するらしいですよ」とちょっと笑わせ、「ドキドキ、初めて賞を取った作品です。初演から21年、最後にやったのは2002年。未来のこととして書いていたんですが・・・・・(例えば)唐さんの芝居、学生運動、今眺める面白さがあります。当時の時事ネタが今は笑えなかったり・・・・・自分でもどうなるのか楽しみたいですね」と語る。
そして演出の鈴木裕美、ケラリーノ・サンドロヴィッチとは当然のことながら長い付き合い「劇団健康から観ています、30本以上は観てますね。KERAさんとは長い付き合い」と開口一番。「『フローズン・ビーチ』演出しませんか?と言っていただいて・・・・・『私がやっても面白い』に切り替えます!俳優さんもいろいろな意味で奇妙というか(笑)、絶妙な取り合わせ」と語る。顔ぶれは多士済済。
鈴木杏は萌を演じる。「『フローズン・ビーチ』の世界に入れるなんて!オリジナルキャストさん、尊敬しています。台本読みまして、この気持ちを抱えると泣き出してしまいそう、途方にくれる感覚を共有したい。この『フローズン・ビーチ』でしか会えない4人です。とことん苦しんで、とことん楽しんで新しい『フローズン・ビーチ』の景色を探したいです」と意気込んだ。
ブルゾンちえみは演劇の舞台は初めて、市子を演じる。やや緊張気味で「(お話をいただいた時は)嬉しかったです。初舞台、生まれたての赤ちゃんに高級料理を食べさせて『わかってんのか!!!』ぐらい比べようもない」とコメント。
朝倉あきは双子で一人二役、「胸が張り裂けそうです。お話をいただいた時は嬉しくって・・・・・舞台を続けたいという気持ちがあったので」とコメント。「立ち向かっていけるのか不安でした。読み合わせの時に自分が何をしたいのかわかりました。自分自身をぶつけて何度も恥をかいて・・・・想像を超える作品になる、と確信しています。とにかく面白いと思っていただけるように」と語る。
シルビア・グラブは双子の義理の母で盲目、という役どころ「全員、初めてです・・・・・この歳になると全員初めまして、はなかなかないです」と言い「歌がない!」と笑わせた。そして「挑戦の場があるのは嬉しいし、幸せです、バラバラな4人です」と挨拶した。
この作品から KERA CROSSが始動するわけであるが、それについて ケラリーノ・サンドロヴィッチは「制作は東宝さんとキューブさん。僕が望んでいるのは”知らない人に触られるのはいや”ということ。でも、そういう人は起用されないだろうという思い込みがあります(笑)、僕自身はお任せしています。何もしないのは苦痛ですが、傍観者でいたい。初演は全員劇団員」と語る。そして「(俳優陣に向かって)エールですか?『頑張って!』」と言い、出演者全員、大笑い。そして「楽しいですよ。4人緊張していますが、1ヶ月もすりゃーーね(笑)、楽しみにしています」とコメント。鈴木裕美は「ある種の殺し合いとファンタジーのバランス」と言い「好きな作品なので楽しんでやりたい」と言い「昔、昔、あるところに4人の女がいましたっていうお話はすごく好きです」そして配役の魅力については「みんな、『これでいいね』って思ったと思う、このチーム、このノリ、『これがいいんじゃない〜』的な」と語る。KERAとは長い付き合いの鈴木裕美、期待がかかる。
鈴木杏は「仲がいいですし。誰かに支えられないとへたりそうな役と思っています」と言いブルゾンちえみは「DVD観まして・・・・・・大変だな〜と市子とは(自分とは)遠いな〜と。でも読み合わせした時は正直、楽しいと思いました。市子のエキセントリックさなキャッチボールの投げ方、杏さんが『よいしょ』っていう受け止め方、杏さんが受け取ってくれるので楽しかった!」と手応えを。朝倉あきは「配役が決まってない時はどれも面白い、どの役も面白いなと。この中では唯一、まともな役?面白そうだなと」と言い、シルビア・グラブもまた「どの役も面白い」とコメント。役については「一番楽観的な役柄」と評した。ケラリーノ・サンドロヴィッチは「書いている時は当て書きだったんです。ワークショップで使われたことがあって『これはこれで面白い』と思いました。誰がどの役をやっても成立しちゃう。当時は死にそうになって書いていた。最初の電話のシーンだけでも何日間も・・・・・・」と執筆時の苦労をコメント。鈴木杏は「これから稽古していく中でブルゾンさんと1日芝居して・・・・どっしり構えてくださる!」と言いそれを受けてブルゾンちえみは「いやーーー意外!」とい言いつつ「ありがたいし、楽しい!」とコメント。、朝倉あきは「先輩方、すごいなーーー」と言いシルビア・グラブは「しょっぱなからすごいエネルギー出すんだなーー」と。確かに顔ぶれを見るとパワフル!ケラリーノ・サンドロヴィッチは「なんでも・・・・面白そうな企画ならなんでもお話をいただけるなら・・・・プランはないですよ(笑)、いやなことはやらないまま30なん年やってきました」と、なんとも『らしい』発言。最後に鈴木裕美が「ブルゾンさんは演劇少女だった!」と言い「前向きにやろうぜ!ということで、読み合わせの時にここまでのテンションでできるんですね」とキャスト陣を絶賛。「面白くなりそうなのでご期待ください!一生懸命やります!」と締めてひとまず会見は終了した。
フォトセッションの後は俳優陣だけで囲み取材が執り行われた。
鈴木杏は「どこかの国の少し昔の話、5人の女の話で関係性が変わったりします・・・・この4人だったら楽しくやれる!」とコメント。ブルゾンちえみは「女5人、各々の女性に共感できるのですが、舞台だからこそ楽しめる、リアルでありながら非現実、リアルで非リアル、この舞台の面白いところかな?と。市子さんは普段の自分からしたらいつもと違うキャラクターです」と語り、朝倉あきは「ブルゾンさんの市子、面白かった、ブルゾンさんの面白さと素敵な面がたくさん詰まっています。このお三方の面白さ、稽古に(自分が)どう入っていくか不安はあります」とコメント。シルビア・グラブは「サスペンスなのにちょっと笑える。5人の女性が密室で人間の本質を出していく面白さとキャスティングの面白さがあります」と語る。ブルゾンちえみは有名なネタについて「ネタだからできる、普段の性格とは違うから、演技をすることはそういう通じるものがあるのかな?と。(芝居は)見ることが多いですが、でも、まさか・・・・頑張るしかない」と言い、そこで鈴木杏は「この2ヶ月間を乗り越えて・・・・・・何かあったらブルゾンさんの後ろに隠れます!こころ強いです!」と言いブルゾンちえみはちょっと照れ笑い。最後に「この企画でなければ叶わなかったこの4人です。いろんな場所で観ていただける、ハードルは高いものですが、楽しんでもらえるように!」と締めくくって会見は終了した。公演は7月12日より杜のホールはしもと・ホールでプレビュー公演が行われ、そこから新潟、福島などを回る。千秋楽は高松公演、8月31日。
【公演概要】
<プレビュー公演>
2019年7月12日〜7月14日杜のホールはしもと・ホール
<新潟>
2019年7月25日 長岡市立劇場大ホール
<福島>
2019年7月28日 いわき芸術文化交流館アリオス大ホール
<東京>
2019年7月31日〜8月11日 シアタークリエ
<大阪>
2019年8月16日〜8月18日 サンケイホールブリーゼ
<静岡>
2019年8月21日 静岡市清水文化会館マリナート
<愛知公演>
2019年8月23日 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
<高知公演>
2019年8月28日 須崎市市民文化会館
<高松公演>
2019年8月31日 レクザムホール(香川県民ホール)小劇場
企画・制作:東宝 キューブ
公式HP:http://www.keracross.com
取材・文:Hiromi Koh