原作: 村上春樹 演出: 蜷川幸雄 舞台「海辺のカフカ」2019 年 2 月パリ公演、大盛況!いよいよ 5月21日、東京凱旋公演開幕!!

ニューヨーク・タイムズ「年間ベストブック 10 冊」(2005 年)や、世界幻想文学大賞(2006 年)に選ばれた村上春樹の傑作長編小説を世界のニナガワが演出し注目を集めた舞台『海辺のカフカ』(2012 年初演)。2015 年には蜷川幸雄生誕 80 周年を記念しロンドン・ニューヨーク・埼玉・シンガポール・ソウルの 5 都市を巡る世界ツアーを行い、大旋風を巻き起こしたが、その本作がフランスからの熱烈なオファーを受け、日仏友好 160 年を記念し開催される日本文化の祭典 「ジャポニスム 2018」*を締めくくる演目として 2019 年 2 月パリの国立コリーヌ劇場で上演された。そして5月には約5年ぶりとなる東京での凱旋公演が始まる。古畑新之、柿澤勇人、高橋努、鳥山昌克、木場勝己といった 前回公演で観客の心を鷲掴みにした座組みに今回新たに寺島しのぶ、岡本健一、木南晴夏ら人気と実力を兼ね備えたキャストが加わり、盤石の布陣で日仏公演に臨み、喝采を浴びた。いよいよ舞台『海辺のカフカ』、東京ラストステージ!!
21日の初日の前にフォトコールが行われた。セットは透明なBOXの中に本棚、中央はテーブルと椅子が入ったBOX。まずは図書館のシーン、司書の大島(岡本健一)とカフカ(古畑新之)、図書館の館長である佐伯(寺島しのぶ)について「いくつか知っておいてもらいたいことがある」と切り出した大島、彼女の恋人との関係やその後の悲痛な別れについてカフカに言って聞かせている。佐伯が19歳の時に作った曲「海辺のカフカ」について言及する時、水槽に入った少女(寺島しのぶ・二役)が現れてその歌を歌う場面、現実と夢、時間の異なる二つの世界が交錯する。透明なBOXに入った本棚に照明が反射し、少女はただ出てくるだけでなく、透明なBOXに入ったまま歌い、BOXごと移動する。幻想的で空想的、透明感のある旋律、思わず見入ってしまう場面だ。

撮影:渡部孝弘

それから、セットが変わる。BOXには樹々が、緑の葉が照明に照らされて柔らかさを放つ。「会わなければならない人」である佐伯(寺島しのぶ)を探して森の中に入って言ったカフカ(古畑新之)、迷宮の森とも呼ばれる中をさまよいながら進み、ついに二人は再会する場面だ。時空が交錯する森、少女(寺島しのぶ・二役)が彷徨う姿が一瞬垣間見れる。冒頭で森のセットが動き出し、その動くセットの中で少女が走り抜ける瞬間、観客は物語の世界に入り込む。再会シーンは熱く、濃密。激しく抱き合ったりするが、激情が迸り、そのまま、語りあい、手を取り合ったりする、短くも要となる場面、楽曲もラスト近くは和楽器の旋律が印象的、短い時間であったが、作品世界の力を感じたフォトコールであった。

撮影:渡部孝弘

それから囲み会見が行われた。登壇したのは寺島しのぶ、岡本健一、古畑新之。パリ公演を終えて、21日から凱旋公演。まずはパリ公演の手応えを岡本健一は「村上春樹さんのファンが非常に多くって原作を理解している」と笑顔。世界的作家である村上春樹、この作品は2005年にフィリップ・ガブリエルにより訳された英語版『Kafka on the Shore』は、「ニューヨーク・タイムズ」紙で年間の「ベストブック10冊」及び世界幻想文学大賞に選出されている。そして「舞台化するということに非常に興味を持たれてて、すごく盛り上がりました。哲学的な言葉のやり取りがあったりするんですけど、本当に笑っていましたね。カーテンコールにはみんな立ち上がって、泣いている人もいたり、声援も・・・・・びっくりしますね」と語る。寺島しのぶは「初日は感動しましたね、カーテンコールで5、6回ぐらい・・・・・あーーよかったな〜って。フランスに行って2日ぐらいで初日が開いて、GPとかできなくって、セットも大掛かりで間に合うのかなって感じだったけど、初日は感動しました」といい「いい劇評も出たので」とコメント。
古畑新之は「初日は緊張しました!(「今日の方が緊張してる?」と岡本健一のツッコミ)手の汗が・・・・・(笑)」パリ育ちということで「街並みがまた見れて、何年か経ってこんなところで育ったんだ・・・・・育った家にも行って、フランス人の友達とか・・・・・」また原作者である村上春樹も観劇したそうで「感激して、楽屋に来ていただいて、(実は)ファンで台本にサインもらいました」と嬉しそうな岡本健一。寺島しのぶは「私はすごくシャイな方で、あんまり目を見てお話した記憶がないんです。パーティとかにもあんまりいらっしゃらないんですが、最後のドリンキングパーティとかも長くいてくださって・・・・・『よかった』と・・・・・ご本人から直接聞いたわけではないんですが、とても気に入っていらした、という話は聞いています」と笑顔。古畑新之は実際に会ったそう。「優しい人だな」と。また「稽古場に蜷川さんの写真があって、それが存在感があって一緒にいた時以上に『見られている』感が・・・・・このままだとすごく怒られてるんだろうなとかを感じながら『まだだめだ』と思いながら稽古して来ました。蜷川さんの舞台が何年間もやってきたって・・・・・やはり人の想像力を超えて・・・・それに負けないくらいに物語の中でしっかりとやれば」としみじみ。寺島しのぶは「この作品自体がどうにでも取れる、解釈ができる話。結論のない話で、結論がないままやらなければならない、やはり蜷川さんが見ていると結論に導かれていくんですが『今、このお芝居をどう見てくれているんだろうか』とか考えることはあります。とにかくあの長編の作品を3時間の舞台にしたっていう・・・・ぞくぞくするくらい美しい舞台、セットに負けないように世界観を表現したい」と語る。古畑新之は「『問題から逃げている』と言われたことがある」とコメント。寺島しのぶは歌唱シーンについて「(あの姿勢は)辛いです。2月に入って、もう股関節がバキバキで(笑)美しく見せなきゃいけない体勢で・・・・・ぎゅっとしてしゃがんでいるのが」と苦労話をコメント。ご主人も観劇したそうで「涙止まらず」とのこと。「(フランスの人たちは)結論がないものを好むんですよ、起承転結っていうよりも『ああなんじゃないか、こうなんじゃないか』っていうことを朝まで喋る(笑)」岡本健一はフランス公演と東京公演の間があいていたことで「稽古しなおしたりっていうのをやると新たな発見がいっぱいありました、目には見えないですが、深まっていくかと。世界で一番タフな15歳になる・・・・・・なぜタフになるかっていうと彼自身が抱えているトラウマ・・・・・そういったものから逃れるのか、新しい自分を見つけるのかっていうことで旅が始まります。その中で出会う人、みんな抱えているものがいっぱいある、それは今の人、世の中の、多分ずっと幸せな感じじゃないと思うんです。悲惨こともいっぱいあって、出会う人によって癒されていくっていうんでしょうか、発見されてそういう物語な感じがするんです。最高にハッピーっていう作品ではありませんが、みなさんの心のなかに何か提示していくような感じじゃないでしょうか」と語る(ここで寺島しのぶと古畑新之が拍手!)。寺島しのぶは「蜷川さんの作品が、この世にはいらっしゃらないですが、作品自体は残っていくし、蜷川さんが作り上げた舞台なのでこの先、時間が繰り返して生で見ることはないかもしれないですし・・・・でも千秋楽まで行きたいなと・・・・・世界的演出家が遺した舞台・・・・」そこで「劇場に来ないと体感できない!映像見ても絶対に伝わらない!劇場に来ないと味わえない!」と岡本健一。最後に古畑新之は「頑張ります!」とシンプルに締めて会見は終了した。

<ストーリー>
主人公の「僕」は、 自分の分身ともいえるカラスに導かれて「世界で最もタフな15歳になる」ことを決意し、 15歳の誕生日に父親と共に過ごした家を出る。 そして四国で身を寄せた甲村図書館で、 司書を務める大島や幼い頃に自分を置いて家を出た母と思われる女性(佐伯)に巡り合い、 父親にかけられた“呪い”に向き合うことになる。 一方、 東京に住む、 猫と会話のできる不思議な老人ナカタさんは、 近所の迷い猫の捜索を引き受けたことがきっかけで、 星野が運転する長距離トラックに乗って四国に向かうことになる。 それぞれの物語は、 いつしか次第にシンクロし……。

【公演概要】
舞台『海辺のカフカ』
原作:村上春樹
脚本:フランク・ギャラティ
演出:蜷川幸雄

出演:
寺島しのぶ、 岡本健一、 古畑新之、 柿澤勇人、 木南晴夏、 高橋努、 鳥山昌克、 木場勝己

新川將人、 妹尾正文、 マメ山田、 塚本幸男、 堀文明、 羽子田洋子、 多岐川装子、 土井ケイト、 周本絵梨香、 手打隆盛、 玲央バルトナー

◆パリ公演【ジャポニスム2018公式企画】(会場:国立コリーヌ劇場)
2019年2月15日(金)~2月23日(土)
主催:国際交流基金/国立コリーヌ劇場
協力:新潮社/ニナガワカンパニー/ANA
企画制作:ホリプロ

◆東京凱旋公演(会場:TBS赤坂ACTシアター)
2019年5月21日〜6月9日
主催:ホリプロ
協力:新潮社/ニナガワカンパニー/ANA
企画制作:ホリプロ

HP:http://hpot.jp/stage/kafka2019

取材:Hiromi Koh

撮影:無記名は編集部撮影。