『11人いる!』(じゅういちにんいる!)は、萩尾望都による日本の中篇SF漫画。漫画雑誌『別冊少女コミック』1975年9月号から11月号に連載、1976年、第21回小学館漫画賞少年少女部門を受賞。
名門校・宇宙大学の入学試験最終テスト(最終日程の最後の科目)の会場“外部とのコンタクトが不可能な宇宙船”を舞台に、宇宙のさまざまな国からやって来た11人の受験生が、疑心暗鬼のなかで反目しつつ、信頼関係を築き合いながら友情や恋を培い、非常事態を乗り越えようとするさまを描く。
スタジオライフでは、これが初めての上演ではない。最初は2011年、その次が2013年、そして今年、2019年は音楽劇という形式をとっている。
ストーリーは変わらない。音楽劇なので随所に歌唱が入るのだが、ミュージカルのような入り方ではなく、ハンドマイクを持ってノリノリで歌唱する。ちょっとしたコンサートを見ているような雰囲気にもなるが、エモーショナルな歌詞、楽曲は『ありもの』であるのだが、その場面にフィットし、違和感はない。
本来は10人のはずであるのになぜか1人、多い。「11人いる!」と一人が叫ぶ。驚愕する一同、そこから物語が動き出す。メインキャラクターはタダトス・レーン(タダ)、ストーリーテラー的な役割も果たす。最終テストである実技試験(協調性のテスト)として、筆記試験の成績に基づいて組まれた10人チームのメンバーとなり、漂泊中と仮定して外部との連絡を断たれ、惑星「黒」の衛星になって公転周期53日で回り続ける宇宙船・白(はく)号の乗員として53日間船内にとどまることに。白号に乗り込んでみると、なぜか1人多い11人。大学側に事態を知らせようにも連絡手段は司令室(ブリッジ)に設置された非常用赤ボタンのみであり、押せばチーム全員が不合格になってしまう。試験合格のため、疑念を抱きながらも規定の53日間を過ごすことに決める。
誰が『11人目』なのか、お互いに疑心暗鬼になる。チームワークよく、とはほど遠く、それでも表面的には順調だ。ところが、白号の軌道が惑星「黒」の公転軌道から外れて恒星「青」に近づいていくというアクシデントにより、船内温度が徐々に上昇。さらに船内温度が40℃に達すると、船内に繁茂している野生化した電導ヅタに起因する死亡率93パーセント、空気伝染の伝染病・デル赤斑病が発生する可能性が・・・・・・。さあ、どうする?というのがだいたいの流れだ。
あらゆる惑星から集められた受験生たち。生まれも育ちも違う者が閉塞された空間に閉じ込められるという状況、命に関わる危機、タダはこの伝染病の恐ろしさを身にしみてわかっている。それゆえに苦悩し、ある決断をしようとする。
疑い、警戒、同志でありながら、実は反目し合う状況、しかし、大きな危機を迎え、全員で立ち向かっていく様は、胸が熱くなる。タダが主人公であるが、実は群像劇的な要素が強い。それぞれの考え方、感じ方、生き様が、密室という状況で濃密に見えてくる。極限状態で、人はどうするのか、この空間に集められた彼ら、それは一種の運命、その運命にどう向き合うのか、挿入される歌の歌詞が印象的、今まではストレートプレイであったが、今回は音楽劇。スタジオライフとては新しいチャレンジであるが、皆、歌唱力が高く、いっそミュージカルにしてもいけそうなクオリティ。原作を知っていれば、オチもわかるが、それでも結構ドキドキする展開、原作のパワーであろうか。発表当時の少女漫画ではまれな、本格的なSFという評価。緊張感のある設定と完成度、またキャラクターが皆、魅力的で、その誰もが主人公になりうるぐらいの『キャラ立ち』。繰り返し上演できる作品、次回はどんな『仕掛け』をしてくるのか、劇団の財産とも言える作品だ。公演は6月2日まで。
【公演概要】
Studio Life公演「音楽劇 11人いる!」
2019年5月18日(土)~6月2日(日)
東京都 あうるすぽっと
原作:萩尾望都「11人いる!」(小学館)
脚本・演出:倉田淳
<キャスト>
タダトス・レーン:関戸博一 / 松本慎也
フロルベリチェリ・フロル:松本慎也 / 伊藤清之
マヤ王バセスカ:宮崎卓真 / 曽世海司
ソルダム四世ドリカス:千葉健玖
アマゾン・カーナイス:牛島祥太 / 宮崎卓真
チャコ・カカ:高尾直裕
ドルフ・タスタ:若林健吾
トト・ニ:鈴木宏明
ヴィドメニール・ヌーム:宇佐見輝
ガニガス・ガグトス:船戸慎士
グレン・グロフ:曽世海司 / 藤原啓児