s**t kingz、“朗読&ダンスパフォーマンス”新スタイルに挑戦!! 朗読劇『My friend Jekyll (マイフレンドジキル)』人としての欲望と理性のせめぎ合い、そして友情と。

ダンスだけでストーリーを表現する【無言芝居】や、国内外の著名アーティストの振付などで全国にファンを 拡大し続けている、4人組ダンスパフォーマンスグループ s**t kingz(シットキングス)より shoji と Oguri が出演する怪奇小説『ジキルとハイド』をテーマにした朗読&ダンスの新舞台『My friend Jekyll(マイフレンドジキル)』。
『ジキルとハイド』と言えば、過去にブロードウェイミュージカルとしてトニー賞の最優秀ミュージカル脚本賞にノミネートされる他、世界各国各言語で上演される、”二重人格”を題材にした代表的な作品。また、昨年、豪華声優陣による朗読劇も行われた。
今回はそのストーリーの台本・演出を、2019 年第 26 回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞した劇作家・演出家 の瀬戸山美咲が手がけ、ダンサーである 2 人が、物語を朗読する【語り手】と、登場人物達を身体で表現 する【踊り手】に分かれて、物語を進行するという全く新しいスタイルに挑戦し、また、公演によって 【語り手】と【踊り手】が入れ替わる事や、音楽がギターによる生演奏という事もあり、回によって演技やダンスの即興性や、全く違った声色が楽しめる点も見どころ。
これまでダンスのみで言葉を一切発さずにステージで“無言芝居”をしてきた彼らにとって、初めて言葉を発す る“朗読劇”。

朗読は主に「僕」、アタスンからの視点で語られる。「僕は田舎から出てきて大学で法学を学んでいた」という。純朴な若者、と行った感じのアタスン、ジキルと知り合う。「仲良くしよう」「うん」、ジキルはアタスンにとって憧れの存在、「ジキルはなんでもできる」といい、そして「僕は弁護士になった」と語る。
基本的には原作は怪奇小説であるが、その怪奇な部分を残しつつ、アタスンとジキルの友情を主軸として物語は原作の流れに沿って展開する。音楽は生演奏でギター、アコーステックな響き、効果音や照明も駆使する。そして無音の状況もあるが、ここでは朗々と朗読する声が響き、観客は固唾を飲んで聞き入る。【語り手】は基本的に舞台にずっといる。そして【踊り手】はずっと舞台にいるわけではなく出たり入ったりする。【語り手】は終始、椅子に座っていることはなく、本を持ちながら演技をする。基本、手から本は手放さないのであくまでも【語り手】。

朗読劇には昨今、様々なスタイルのものがある。ずっと椅子に座っているパターン、演技をしながら朗読するパターン、衣装を着用して、様々なイリュージョンを駆使し、視覚的に華やかなパターンなど、演出によって全く異なる。演者も舞台俳優の場合もあれば、声のプロである声優が演じる場合もある。しかし、これは【踊り手】はもちろん、【語り手】もダンサーである。語りは相当な訓練を積んだと思われ、よどみなく、声だけでも静かに心に迫るものがある。さらに【語り手】はダンサーだけあって、一つ一つの動きがなんとも言えないスタイリッシュさと流麗さを感じる。歩くだけでも、何かを手に取るだけでも、椅子に座るだけでも、俳優の演技とは異なる空気感をまとって、作品世界を作り上げる。【踊り手】はシンプルかつエモーショナルな動きで【語り手】の言葉を受けて独創的、かつ想像力をかき立てる。さらに【踊り手】と【語り手】の関係性であるが、時には【語り手】の言葉を【踊り手】が後押しするような瞬間もあれば、その逆である時もあり、また【踊り手】と【語り手】が対等になる場合もある。そして生演奏がそれを彩り、観客に登場人物の心情や状況を観客に時には静かに、時には圧倒的な迫力で迫る瞬間もある。そして、この題材、「ジキルとハイド」、善と悪、何が善なのか、何が悪なのか、本文はアタスンの回想とジキルの告白からなる二部構成であるが、この朗読劇のタイトルは『My friend Jekyll (マイフレンドジキル)』、アタスンにとってジキルは最終的には最高の友人、アタスンの視点にすることによってそれが明快さを持って提示。アタスンは様々な事件が起ころうともジキルを信じていたし、尊敬の念は変わらなかった。そして極めて人間的なリアクション、ハイドがジキルの友人では?と思った瞬間に嫉妬もする。人としての心の動き、そしてジキルの、人としての欲望と理性のせめぎ合い。これもまた実に人間臭い。濃密な空間での1時間半の朗読劇、様々なチャレンジが内包されているこの短い時間、さらに回によって【踊り手】と【語り手】を”交換”する。演者が異なれば、また違った味わいになる。何度か回を重ねてさらにブラッシュアップできる可能性のある作品だ。

ゲネプロの前に会見も執り行われた。登壇したのはshoji、Oguri、瀬戸山美咲。
shojiは「普段は4人で無言芝居、セリフが一切ない芝居を作ってきて・・・・・自分たちのダンスに言葉が出会ったらどうなるんだろう?っていう興味から、まず始まって、もともとは僕とOguriは強い興味があったので、今回はステージで話しながらダンスするのはどうだろうかと思ったんですが、それが単に演劇とかミュージカルよりもより自分たちに・・・・・まず言葉だけでしっかりとストーリーを伝え、そこにダンスでよりエンターテイメント性だったり、ワクワクみたいなものを届けられるような、情景が目に浮かぶような、そういう作品にできたら面白いなと。それで朗読というスタイルでチャレンジしてみました」と語る。Oguriも「最初は好き放題喋るって気持ちいいだろうなと思っていたんですが、いざ台本をもらって読んでみると『俺、日本語喋ってんのかな?』と(笑)。自分の口から自分の声じゃないみたいに硬くなってしまってすごい、日本語で人に伝えるって難しいなと痛感しましたが瀬戸山さんにご指導いただいて、発見とかあって、今までちゃんと日本語と向き合ってなかったなとしみじみ思いました(笑)」とコメント。瀬戸山美咲は「最初は朗読はかなり苦戦されていて、滑舌だったり、一人一人、稽古をさせてもらって時間があれば集まって練習して・・・・・お互いのいい刺激になっている、どんどん進化していって、日々、変わっていくのが素晴らしいと思ってみていました。もともと無言の芝居をやっていらしたので、芝居力がすごくあるので、他の役者さんよりすごいスピードで進化したと思います(二人、照れる)。やってみて二人、タイプが違うところが面白くってダンスしても朗読しても二人違ってて、shojiさんは朗読もダンスもパッションの人だなと(笑)、Oguriさんは朗読もダンスもビシッと決めていく感じ。組み合わさって2つの作品ができたなと」とコメント。
見所についてはshojiは「盛りだくさん。ダンスは普段は音に合わせるんですが、今回は朗読に対して踊る、その空気感やテンポ感とかが、回ごとに変わっていく、また音楽が生演奏、みながらその場でアレンジしてくださるので、本当に生きた舞台ですので、そこを楽しんでいただけたら」と語る。また「アタスンとジキルの友情を表現していきたい」と意気込んだ。また「言葉の粒が立っている、立っていない」と演出家に言われたそうで、アクションではなく言葉で伝える、「自分の中でイメージしながら伝えていく」、これが日々ハッと思ったそう。Oguriは「朗読劇は自分の中での気持ちが繋がっていれば、そういうところがあればいいなと思ってたんですが・・・・・『お客様に一言一言言葉を届けるのが大事』と・・・・・もう少し自然体でいられるように」とコメント。また即興的なダンスが多いそうで「今までなかったので、それをどうなっちゃってもいいから役としてちゃんとやる」と語る。「パッションを上手に伝えていけなかったのかな?と・・・・・瀬戸山さんにいろいろと言われて揺れ動く想いみたいなものが、どういう風に人に伝えていくものなのかな?と共有するか、ここから先に感情をどう届けるか、そういうところが(自分でも)成長できたかな?」とshoji。
いずれにしても挑戦的な作品、最後に
「大きいチャレンジではあります。しっかり朗読劇として楽しんでいただいて、さらにダンスでよりそれがよくなったって思えるような作品になれるように!頑張って!観に来てくださったら嬉しいです!」(shoji)
「どんな感じになるのか想像がつかない、『こんな朗読劇、観たことがない』になっているので何も考えずに座ってただ楽しんで欲しいなと」(Oguri)
終始、笑い声の絶えない会見は終了した。

<あらすじ>
19世紀末、ロンドン。弁護士のアタスンは、医学博士で法学博士のヘンリー・ジキルと出会う。
誰もが羨む経歴を持ちながら人格者でもあるジキルに、アタスンは憧れと尊敬の念を抱いていた。
やがて、ふたりは日曜日になると公園を散歩しながらさまざまな話をするようになる。
しかし、ある日、ジキルが公園に現れなかった。
ちょうど、同じ頃、ロンドンの街に奇妙な男の噂が広がる。彼の名前はエドワード・ハイド。
通りすがりの幼い少女を踏みつけるような暴力的な男だ。
ハイドの名を聞いたアタスンは、ジキルから預かっていた遺言書の存在を思い出す。
そこにはジキルの遺産の相続者としてハイドの名前が書かれていた。
アタスンはジキルにハイドとの関係を尋ねるが、ジキルは何も語ろうとはしなかった。
そうしているうちに、地元の名士の男性が道で撲殺されるという事件が起きる。犯人はあのハイドだった――。

【公演概要】
タイトル:shoji・Oguri 朗読劇『My friend Jekyll (マイフレンドジキル)』
日程・場所:2019年6月 8日 ~ 2019年6月 9日 スパイラルホール
台本・演出:瀬戸山美咲
出演:shoji Oguri
公式HP:https://shitkingz.jp/
取材・文:Hiromi Koh